トリ系女子! リン!それ!そらをゆけ!
魚介系女子…人気で驚き
トリ系のダシも必要よ?
今日も港を駆け抜ける一陣の風に乗る
気分
…此処からはさすがに彼女たち海鳥のように身軽に滑空できない
飛ぶなら!高いところか滑走できる広い遠くの海辺の公園
ならばっ!目指すは港や街を見下ろす坂の上!
路面電車が迫る道を、青信号ぎりぎりで駆け抜け
中華街でいつも通り肉まんを買ってしまうと飛び立つとき身体が重い
重くて後悔してしまう!
ので、周りの人たちに迷惑をかけないように走る速度を上げるため酒瓶が所々ソリ建つわき道を近道で通る
途中に足踏みでその場で麻雀を打っているおっちゃんに挨拶し調子は如何?と聞いたところ『国士無双っ!幸運の女神っ!』と叫んだが
私は「元男だっ」とさほど気にしてないけど抗議し脱兎として駆け抜ける
又もや路面電車の道に出たが路線の手前は青信号。
駅のホームまで渡り
ホームから歩道橋に上がり…滑空!と行きたいところだが翼を広げた途端、犬のお巡りさんこと林のおじさんに隣で睨まれているので
翼をたたみ、元気よく駆けだした
とうとうやってきた、心臓破りの坂が!
一歩踏み出すと前に見えるのは
狭い階段状の急角度の崖ともいえる坂
十歩
様々な家の春先の日差しを受けて輝く様々な草木
二百歩!
背中の温度は熱いくらい
今日はいい運動日和になりそうだ
五百!
やぎになったばあちゃん?お姉さんになったばあちゃんからみかんをもらった
とっておこう
千三百!
あと二百段でえ!心臓が何のその!
倒れた
そういえばおかしいと思っていたけど今思い出した
汗をかかないんだった!
近くの家の人から水をもらい休息冷却し呼吸を整える
二時間もすれば治っていた
急いで頂上へ向かうとすっかり夕方だ
頂上の公園に崖の際に立つ
日の暮れた空
港にはキラキラと輝く海に
オモチャサイズのフネや車
全てが黄金色に輝き、染められていた
ワタシも此処を飛べたら…
何度も考えて
翼を広げた
…
…どうやって飛ぶんだっけ?
トリ頭とは昔から言われていたが、加速した気がする
高校受験をしたときはもっとしっかりしていたような…?
後ろから肩に手が伸びた
「ほう、夕方から夜間飛行禁止されているはずだが?ここに無許可、無公認の場所で飛ぼうとする…トリ頭が居るようだなあ?」
「ハヤシのわんちゃ、うぇあ!」
林のワンちゃんは思いっきり頬を引っ張る。後ろにはゴメンと謝るミカンをくれたばあちゃん
「にゃるほろ」
「さーて、坂の下の交番でとおっくりと聞こうか?」
「ちぇっ…」今日も飛べなかった
林のおっちゃんも…訂正!隣で睨んでいるお姉さんも親戚なのに融通してくれても
訂正、ごめんなさい。頬を引っ張らないで
「うう、へんな形になってないかなあ…?」
頬をさすりながら中華街を歩く
「おう、嬢ちゃん!」
「あ!コクシムソーのお姉さん!」
「おう、元おっちゃんだけど」
「何か用?」
「中華まんあげるよ」
「いいの?」
「ああ!今日は儲けたからな!」
「賭け事?」
「うなわけあるかい!自治会の決め事だ!」
ふえー、と感心していると後ろから声がかかる
「リン!」
「ほえ?母さん??」母さんになった父さんが迎えに来てくれたようだ
「電話出てないだろう…」GPSにしといてよかったと嘆いている
「ああ!ごめんなさい!」
「今日は行くところがあるんだ!急ぐぞ!」首を掴まれずるずると引き摺られる気分は子猫…?
「中華まーん…」
「ごめんなさーい!」おねえさんは手を振ってニコニコしてる
中華まんは離れ
今や車の中
「林のお義兄さんから電話がかかって来てな」
「ほえー!ごめんなさい!」
「夜間飛行!」
ほえ?と聞き間違えかと尋ねる
「夜間飛行の許可が出たそうだ」
…
車で来たのは遠くの公園だ
同じ翼を持つ妹二人が揃っていた
母さんも父さんも
家族全員だ
「行ってきなさい。くれぐれも浜の方には出ないように。リンを頼むぞ」
「はーい、まったく世話の焼ける兄貴…」
そう言いながら笑顔なのはなぜ?
「ナオミ、お前が一番お兄ちゃんに近く高く飛べるんだからな?」
エイキ、お前は一番頼りになる海鳥だぜっ…!
「じゃあ!飛ぶね!」
「本当は飛ぶのは行かせたくないのだけれど…」
母さん、心配しなくても大丈夫、風を掴んで本能的にコツは掴んだ
「いってらっしゃい!無事に帰ってくるのよ!」
ブワッ
と向かい風の後に後ろからの追い風
先程の向かい風でエアポケットが出来た
飛べる…っ
足を駆け出し、翼を軽く羽ばたく
飛躍した
浮いたっ!
―ビュウ!!という風切り音に一気に飛び立つ
家族の声も聞こえる
「はえー、さすが兄貴…」と茫然に下から見上げるナオミ
「高すぎる…一気に…」と少し高度下でがっかりしているエイキ
雲の上まで行ってしまうので翼を真下に平行に、少し高度を下げる
母さんとお母さんの姿もバッチリ見える此方を双眼鏡でウォッチしつつ母さんはどこかに連絡している。行動を把握して空港辺りに連絡しているのだろう
地平線を眺める。近くには公園、続く浜辺、灯台、遠くへ視線を移すと山々、反対には向こう岸も見える。海が見えるこの国のこの地形は地中海のような物
『ニホン』で云う処の地中海だろうか
飛び続けて一時間、妹たちも限界のようだ
今日は楽しかった
下がる途中、声をかけ、二人を引っ張り高い高度まで連れて行きゆっくり地上に下ろしてあげた
「二人も上げるとは…ワシ種はパワーが段違いだな」
「うん!今度は高度計とかGPSも欲しいかな?」
「フライト旅行だな…よし、組んでみる」
「ふふ、娘には弱いわね…アナタ?」
イチャついているが仲がいいのは良いことだ…
ふう、今日は散々だと思っていたけど。
「よかったああ!すんごくよかったよ!二人ともっ!」
「まったく」と呆れている妹と
「かっこよかったよ!」と褒めてくれる妹
二人と初飛行
…っこらあああああ!高く飛び過ぎじゃああああああっ!
と鬼の形相で迫ってくる怒り顔の林さんさえ居なければ…丸く収まったんだけどなあ…?
姿が変わってからなんだかんだで飛べなかったリンくん
陸上部所属
運動センスいい方だけど結構稀な飛行センス、姉妹初飛行に眠れず翌日遅刻したそうな




