エルフ課長! かいしゃへいく
初投稿
端を叩いて叩いて
現実逃避のシロモノです
叩き割った
まえがきあたりで『あ、だめだな』てなったらあれです
そういうものです
どうぞ
とある日。初夏に入ろうかという少し気温の増してきた季節だ
朝起きると、肌の色が異様に白い
それに、手足が短く
結婚を重ね。バツ2でありながら童貞である私の体の一部である"息子"が"娘"に成っていて。
耳が異様にとんがっている。服の上からでもわかるほどの大きさの胸のふくらみまで
これは可笑しい。
と、とりあえず今日は休め…ない
先週一年分の有給休暇を一週間丸ごと使い、趣味の戦艦の模型作りに取り込んでいたからだ
大型キットで一年かけて休みを潤沢に使いながら
去年の八月から組み立ててやっと完成に為る筈だった…のになあ…!
現実逃避から回復すると
胸に包帯でサラシを巻き、イヤーマフで耳を巻き込み隠す
鏡で状況を確認すると、私の顔の一ミリたりとも配合されていない美少女の顔つきであった
マフラーで…いや、無理だ。会社の入り口で止められるだろう…
如何しようかと
悩み苦しんでいる処を普段投資の才能でオレ以上の金額を稼いでいるネオニート。
前妻の連れ子であるオタクなところが似ている息子が
よりにもよって、此奴に見られた!
「…どなた?」
涙目になりながら必死に父親だという事を説いた
「信じるよ…今日は取引は中止してこのニュースを伝えに来たんだ…」
と妙にクールなナイスガイである息子はリビングのリモコンを取ると
ニュース映像に上半身スーツ姿の美しいケンタウロス(・・・・・・)の女性が映っていた
『現在、この非常事態に総理自身も非常事態を宣言しました…
品川駅、西口からレポーターに繋がっております。
山田さーん』
若い男性だったのだろうか幼い小学生くらいの翼の生えた女の子がリポートしている
『はい!現在確認されている情報では!中年男性から小学生までの男性がファンタジーに出てくる様な女性の姿に変身している異常事態が発生しており。
この出来事に男性が病院に駆けつけています!また、交通各網は大荒れで、局員もこの事態に巻き込まれ。
あ!あちらは羊の足の女性…ズボン?男性…?でしょうか。
変化した職員も駆り出されるほど急ピッチで現在国家全体で立て直しを図っています!』
「父さん、ちょっと今日は会社も休めそうにない」
「うん、途中まで送っていくよ」
息子はオレの体をじろり、と見廻すと
「服も買い換えようか、出費は俺から出しておくよ」
昨日の飲み会で持ち合わせ、無いでしょ?
と、妙なところでまた。イケメンである
通勤の駅までの道のりを少し外れ。スーツ店に入ろうとして止められた
曰く
「どこも混乱しているんだ、大型店よりはお勧めできる小さい店があるから」
20分少々歩くとガレージにたどり着いた。
曰く
「馬人なんかが闊歩しているんだ。ハンヴィーみたいな自慢……頑丈な方が良いでしょ?」安売りしていたんだ…品卸品でね…!とドヤ顔を決め込む息子を無視してハンヴィーに乗り込んだ
街を歩く人々は歩道には人が多いが
車通りは少ないな…異様さが目立つ
途中警察の検問に止められながらも10分程車を走らせ、高層マンション立ち並ぶ一角の地下駐車場に車を止める
すると。エレベーターが降りてきて自動的に俺達を迎えた
エレベーターは地下に下がって行き
紅い絨緞に豪奢な一室に迎えられた
「 いらっしゃいませ。ご子息様、お客様 」
比較的小型の170cm程の馬人の執事風の男性が現れた
「 ああ、このヒトの服のコーディネートを頼みたい、ビジネスに普段着、下着。必要なものならなんでも…」
「 ええ、判りました。」
え、え。と理解が進まない内に進む出来事に困惑しながら更に奥へ奥へと見事なエスコートで吸い込まれるようにこの身体や服、知識の常識、説明と練習をあれよあれよという間に済ませ
再びハンヴィーに乗り込むと
「話がある」と真剣な表情で息子は今回の事件の始まりを話し始めた
…
身体の感覚はどの程度の物でしょうか?
「…はい、足の裏がかゆいです、私の場合は蹄の裏、ですが生理的な感覚もごく自然に馴染んでいるようです」
二人きりのラジオの流れる車内で息子は今回の事件の経
緯を語り始めた
「最初は偶然だった」
「始めにとある論文が発表された」
「一人の宇宙数理物理学者、その数学者がこの世界の間、隣には違う世界、全く異なりながらも。近しい地球が存在すると発見した。とね」
「当初、誰からもバカにされた。しかし、個人で研究を進めてゆくうちに
彼の姿をマークしていた警官が…
ああ、彼は以前から誘拐未遂の出来事を起こしていたんだが、これも理由の一つだ。彼は行方不明になり。彼の住居に見知らぬ女性が住み始めた」
「調査の結果彼は異なる世界の自身を上書きしていた」
「それからさ、金に糸目をつけない連中の良いように研究結果を利用され、装置の。謂わば再利用…」
「そういう連中だ。派閥の中で入れ替わりが激しく起こった」
「全世界の人間を対象にするとまさか思いも寄ら無かったけれど。組織の中で、連絡が来てたたき起こされた。
そしてこの出来事を確認した」
「派閥の中でも保守派、過激派。推進派と分かれていた」
「今回の大統領候補戦初の(孤児院)出身の(特殊身体障害を持つ)な若手の(女性)大統領、つまり。推進派の一人が
実権を握ったわけだ。その一週間後、全世界合同で開発
された【アップデート】と云われる新人類化計画の一つ
それは先進国の後期高齢化現象の深刻な状況に自暴自棄した身勝手な老人等の遊びさ」
「 この現象を起こすのは簡単だ、擦りガラス一枚隔てた
薄っぺらい世界、【鏡のように僕たちを真反対に映す】
それ程、同じように動いている。彼女たちも、僕たちも 」
「副作用としてそれが子供にまで及ぶとは予想外だけれど」
「新生児の男の子は今の通常の女性と。上書きされた女性。どちらか選びたい放題なわけさ…」
「ボク?僕は貴方の二度目の婚約者の母に助けられた…
被検体だよ」
「種類は【サキュバス種】さ」
「お、おおお、俺は…?」
「大丈夫、父さんは童貞だよ」
「今は処女でもあるけど…ねえ」
ペロリと口の周りを舐める。其れだけの動作に妖艶さを感じた
「じょーだん!そーいうのはたいてい
…ソッチの世界に行くから。ボクは山岳羊の一種!」
ほら、と腰のベルトを外し。
…娘はおしりの横に生えている毛皮を見せた
うん、なんとも無い
「そーそーなんでしゅかっ!」
噛んだ、思いっきり…!
「今日は病院も混み合っているだろうから、ここに来たんだ」
「病院に行っていたらどうなったんだ?」
「ん?変わらない。女性のしぐさと。身体の用法を学ぶだけ。」
それって…という言葉を飲み込んで
「そーいうこと。国は面倒見る積りらしいよ。半信半疑だった連中もまさか、とさ。この国のお偉いさんがたも予想だにしていなかっただろうけどね」
「とりあえず、今日は休んでも大丈夫だよ。男性陣はみんな、そうだろうしね」
夜、月は赤く浮かんでいた。今日起きた事、これから起きる出来事。凶事を示すかのように
家に着くと茫然自失のままベッドに横になった。
今まで築いてきた物。価値、すべてが替わってしまった
…横になると耳痛い
耳、結構敏感なんだな…
茫然としていると眠って居たようで、起きるとまだ夜。
この体は夜目が利くのか、暗い寝室の枕もとの時計の指す時間は2時
その時
僅かな音を立てて寝室のドアが開き
入ってきた娘と目が合った
「…父さん」
「うん?なんだ」
「明日は大丈夫だから…」
「起きるよ」
でも、という娘を手で静止して
「今日は私も眠れないからね…」
少しして二人でリビングで食卓の椅子に座りながらマグカップを片手にココアを飲んでいた
「あ、ココア飲むの久しぶりかも…」
「あはは、母さんは苦手だったからな…」
父さん。
と、両手を膝の上に整え、オレ、いや、私の方を見ながら
「込み入ってお話があります…!」
「なんだい?」
「…お父さん、何時も私は滅多に姿を現さなかった…」
ああ、引きこもりだと疑った時期もあったね
「父さんは母さんの私に対する呆れた様子の話も聞かずに…離婚の原因になってしまった」
いや、度々、教育に関して喧嘩をしていたし。最後には、母さんとは仲が悪かった。
「…ごめんなさい!」
「…そもそも、君たちが反対派だったとしても。ここまで、他の国まで影響が及ぶ組織とは。規模が違う。私の娘は立派に戦ったことだろう。誇りに思うことすらあれど恥じることはない。」
とうとう、泣き崩れてしまった。私はひし、と抱き寄せ
受け止める。
体格差はあるが。これでもこの子の母親だ、確りせねば
日が上り始め、起きるとブランケットが掛けられていた。
伸びをするとぶるっと震える。
「朝方は少し、冷えるな。」
粗方の用事は済ませ。身だしなみの整えも終わった
「父さん、ご飯出来たよ」
エプロン姿の可愛らしい娘がお玉を持って料理を拵えて待っていた
ハムエッグにオレンジジュース。パンのトーストとテンプレの様な食事だったが娘が作った食事なのもあって更に美味しく頂けた
「美味しかった。また作ってくれるとうれしいよ」
「今日は遅くなると思う」
うん、と少し寂しそうにうな垂れる娘を見て
座っていた椅子に立ち上がると
「えっと、羊のツノは駄目だったんだよな…よしよし」
頭の横に生えた角は避けて髪を梳くように撫でてあげた
おとーさーん!と小さい体に抱き付いて来たが優しく撫でてあげた
「ちょっと遅刻しそうだな。」
「車で送ろうか?」
「ああ、駅まで頼むよ」
会社までの通勤は過酷なものとなった…!
徒歩15分位で着く最寄りの駅なのだが体の小ささも含めて早めに出ようと思い十分近く遅くなったが車で送られたため何とかたどり着いた
そこからが大変でいつも昇る階段が山のように見え、登山と化した
エレベータやエスカレーターは馬人などの非常に扱いずらい体のヒトの為に使われている。
階段の最中、昇ることも降りることも怖くなった私を馬人のお姉さんが背中に載せてくれなかったら五分近くかかっていただろう
定期を取り出し、いざ、改札!と意気込んだはいいが子供身長なので
「んしょ。」IC部分にタッチするだけで手いっぱいだった
階段を恐る恐る手すりにつかまりながら降りて電車を待つだけだ。
急行の通過列車や特急電車が怖くて
少し足がすくんだと言うのは余談である
十分後
目的の電車に乗り込み
車内はいつも以上に張り詰めた雰囲気だった
女性もそうだが、上書きされた男性も少し辛そうにしていた
その中椅子に座る私の前の吊革の前に立つ少しポーとしている
少しおっとりしている馬人さんはどなただろう。
かなり美人でゆるふわ系だが。親切に下りる階段まで手伝ってくれた。
部下、なのだろうか?
電車を降りる際も手を取って。そのまま会社の前まで来た
「うーん、ここからは。一人で行けるよね?」
「は、はい。ところであなたはどなたなのですか?」
「わたし?わたしは…」
「社長!」
しゃっ、しゃっ。と連呼して言葉にならない私は相当動揺していた
「社長、今日は会社の前で朝礼を行います」
秘書の女性はいつも通りだ
うん、わかった。とユルイ感じで返すこの人は本来
この会社を一代で築いた叩き上げの社長として有名である。
毎回上層会議に出席するたびに無言、かと思えば正確な指摘のやり手の社長。
そして会議で話し始めると私だけが睨まれていたのだが
「ありがとー!サキちゃん!」
性格まで変わるのだろうか…秘書の女性に抱き付き。ほんわかした笑顔までつけて、二重人格か何かを疑わざるを得ない
満面の笑顔で秘書の女性もまんざらではないようだ
「うーん。そうでもないよー。えるふかちょーくんには
まえまえからめをつけていたしねー」
心の奥でも見通す力でもあるのだろうか?
「ただ、最初から…」
「社長、ご指示通り男性職員女性職員、清掃員。差別なく社で働く者を集合しました」
「うん、ありがと」
ゆるふわヘアのくせっ毛ボブの女性が前線指揮官…見たことないが
…のように前髪を纒て上げるとソレだけなのに姿が変わっていた
社長は台の上に昇る
「総員注目してもらいたい! …私は…馬杭社、代表取締役 馬頭 慎二 !」
「諸君も存知の通り、このような出来事が起こった!」
「私も姿は変わった!しかし!以前と変わらず!このようにコミュニュケーションを行っている!」
社長は四つの足の蹄鉄を踏み鳴らした
「肌が白くなり、目の退化した者!生まれつき目の不自由な者!変わりは無い!」
専務!と呼ばれ壇上に上がった白い尾びれの生えた彼女は普通の足がありお尻のあたりに大きな尾びれがある。目が見えないが、それすら気にならない美しい人魚のようだ
「どうも、高雄 信彦です二男の父親、サラリーマン…」
「改めてっ、二女のママ!バリッバリのオフィスレデーでーすっ!」
場は数人口笛を揚げ歓声を上げている者、何やら興奮し唾を呑み喉を鳴らすもの。
こんなご時世でもまくい社は変態ぞろいだな。
『社風的に…』と今更ながら思い出した
「…次」
秘書の女性が壇上から強制的に降ろす
「中年特有のノリは改善して行こう…」社長も呆れて苦
笑している
「空を飛び立つ翼を持った部長!大城 忍!」
「ふむ、翼が大きいので社内では迷惑をかけるが、宜しく頼む。えっ、言え?言わなければ…なければ…」
秘書の女性から耳打ちされ大鷲の翼を持つ見た目黒髪の大和撫子女子は
「しっ、しのぶ、散髪に行こうとしたら散髪屋が娘さんと始めた綺麗な美容室になってたんだよっ…」
「黒髪を切りそろえ大和撫子っ!」ポーズをキメて青ざめて又もや自虐ネタだった…
その場はハァハァ…と息を荒げる者、それでも一向に構わん!
と堂々と心地のいい笑いと拍手をする猛者、冷めきった表情の奥に何を隠しているかわからないが何やらスマホで熱心に撮影している者
等カオスな状況だ
直ぐさまマイクを社長秘書が奪い
「ではッ!社長贔屓ッ!?むしろこちらが我らが社のチームリーダーっ!」
秘書であるアツイ彼女のマイクパフォーマンスは夏場から年末にかけてよく見られる
誰かが
待ってましたッ!エルフ課長!と呼び声かかり
私が壇上に上がると総勢百人弱の中で一気に歓声が広がる。
「どうも…私がごしょうかいにあずかりました」
マイクの位置が高い、目で抗議してもみんな興奮してるのが怖い
マイクが…と言いかけ
ニコニコ笑顔の秘書さんが
「おなまえは?」
あの
「おなまえは?」
諦めよう。フリだ
「 小桜 結 です 」
「ここまでどうやってきたのかな?」
むすこ…と言いかけるとみんなして睨んできたので言い直し、改めキャラを作ろう猫を被るともいう!
「わたしのむすめのくるまでおくってもらって」
静まった
何で無言
と、隣のヒトを頬をひっぱたいてる。お前ら…
「えきのかいだんにのぼっているとちゅうはよかったんだけどおりるのもあがるのも、こわくなって」
「おうまの、おウマのおねーさんにかいだんのトチューでこわくなっていたところを!たすけてもらったのっ!」
おずおずと隣を見ると、社長?
鼻から…いや、何も言うまい…
ここまで来たら社会的地位など!あざとく生き残ってやるわ!ええい!ままよ!
「かいさつにいったら、あいしー?のぶぶんにたっちっ!するのもたいへんだったよ!」
見たっ!俺は見たんだ!
社員が叫ぶ
一人必死に小さいスーツ姿のエルフ社長が改札で奮闘しているところをっ!
助けなさい…
「おうまさんの、んーん、ちかくのえきも『ばとーおねーちゃん』にたすけてもらってなんとかたどりついたよ!」
「ありがとー!ばとーさん!」
社長並びにみんな
頼むから
頼むから外でそんな大声で叫ばないで
社員が私一人にゾンビ状態で
上員役四天王とか言って無双してないで
あ、社長、頬ずりは良いですけど私の髪が口に…
まあ
こんな馬鹿どもだからこそある意味理想の職場なのだ
それから事態の収拾に
『みんなだいっきらいっ!』
を使用するのにそれ程時間はかからなかった
こちらまで見ていただき、ありがとうございました