2話
「空とぶソリに乗ってきました。冬の女王様おしえてください。なぜ冬を終わらせないの。寒くて、みんな困っています」
冬の女王様は悲しそうに答えました。
「みなさんがお辛いのはわかりますが、わたしはこの塔を出ることができません。季節は、春、夏、秋、冬がそろってはじめて四季おりおりの『季節』となるのです。春のおとずれを待たずして、わたしや人々が勝手に冬を終わらそうとすれば、これまで何年も続けてきた季節の形が壊れてしまい、冬は永遠に終わらなくなってしまう。次の季節の女王様と交替することによってのみ、冬は春に廻ることができるのです」
聞いているあいだも、トナカイはぶるぶる、ふるえていました。
「では春の女王様がこなければ、ずっと冬のまま?」
「ええ」
冬の女王様とトナカイは悲しみにうち沈んでしまいました。
雪だるまは、自分はこのままでもいいと思っていました。
しかし、ふたりが悲しそうです。トナカイなど、今にも氷りついてしまいそうです。
どんなに冬が好きでも、みんなと楽しく遊べないのであれば、そんな冬はつまらないと、雪だるまは思いました。
秋のもみじを眺めおわって、冬がはじまったころには、みんなが雪の景色によろこび、雪だるまとも仲よく遊んでくれていました。
ところが近頃はみんな、だんだんと寒さがうっとうしくなり、雪だるまとも遊んでくれなくなってしまったのです。
雪だるまは、枝の手をあげました。
「じゃあ、ボクが春の女王様をつれてくるよ」
聞いたトナカイも言いました。
「ならボクも一緒にいこう」
「まあ、あなた方が?」
冬の女王様のほほにさっと赤みがさしました。うれしかったのでしょう。
雪だるまは聞きます。
「春の女王様はどこにいるの?」
よろこびもつかのま、冬の女王様は、雪だるまの姿を見てためらいました。
「あなたには、少し暖かすぎるかもしれません」
「かまわないよ。春の女王様をつれてくるよ」
「ここよりもずっと南の方に、春の女王様はいらっしゃいます。大きな桜の木を目じるしにするとよいでしょう」
*****
冬の女王様からおしえてもらった方角へ、雪だるまとトナカイは空とぶソリで向かいました。
やがて、遠くからでもわかるほど、とても大きな桜の木が見えてきました。
このあたりは少し温度がたかく、雪だるまは、溶けはじめた体の水をふきながら、桜の木に問いかけました。
「桜の木さん。春の女王様はどこにいるの?」
桜の木は、雪だるまを見て驚きました。
「まあ、雪だるまさん。こんなところまでよくきたわ。ざんねんだけど、春の女王様は今いないのよ」
「どこへ行ったの?」
「春の女王様は春やすみがほしいと言って、出かけたままよ」
聞いたトナカイは、顔が青くなり、ひどく落ち込みます。
「そんなことをしたら春がこなくなってしまうよ。みんな寒そうに凍えているし、お腹を空かせているんだ。はやく帰ってきてもらわないと」