1話
雪がふっています。
まるいあたまに、まるいからだ。バケツのぼうしに、ニンジンのはな。
そして枝のうでがあって、先っぽに手ぶくろをはめています。
通りすがりの雪だるまは、王様のお触れを目にしました。
「冬が続くなら、最高じゃないか」
聞いていたトナカイは不安そうに、白いため息をつきました。
「なんてことを言うんだね。みんな寒くて困っているというのに」
ふるえるトナカイを見て、雪だるまはおどろきました。
「ちょうどいい温度だよ。今日なんて少しばかり、汗をかいている」
トナカイは呆れています。
「きみは雪だからね。そりゃあいいだろうさ、寒くても。でもみんなは違うんだよ。食べ物はないし、水は凍ってしまっている。それもこれも、冬の女王様のせいさ」
「なんで冬の女王様のせいなのさ」
雪だるまは不思議がりました。
トナカイは当たり前のように答えました。
「だって、冬の女王様が塔から出てこないから、いつまでも冬が終わらないんだろう」
雪だるまは、あたまをかしげます。
「冬が終わらないのではなく、春がこないんじゃないのかい」
トナカイは少し考えましたが、やはり「悪いのは冬の女王様だよ」と言い張りました。
「冬の女王様が塔から出ていけば、冬は終わるのだから、やっぱり冬の女王様が悪いんじゃないか」
トナカイの言い方に、雪だるまは少しかっとなりました。
「春がこないうちに冬が去ったら、季節はどうなるんだい。秋はちょっと前にきたばかりだろう。夏なんて、春がこないうちにきてしまったら、ボクなんかすぐにバテてしまうよ」
「わかったよ。そこまで言うなら冬の女王様のところへ行って、たしかめてみようよ。それではっきりするだろうよ」
雪だるまは「いいよ」とうなずきました。
*****
塔には、たくさんの人たちが詰めかけていました。みんな王様のお触れを見てきたのでしょう。「冬の女王、はやく出ていけ」と言っています。冬が長くなっていて、かんかんに怒っているようです。
これでは塔に近づけません。
トナカイは、ひらめきました。
「空をとぶ『ソリ』を持ったおじいさんがいるから、それを借りよう。かれは気前がいいよ」
「すごいね」
「うん。仕事もとっくに終わっている頃だから、きっと貸してくれるよ」
*****
雪だるまとトナカイは、空とぶソリで塔の上まで行きました。塔の中に入ると、冬の女王様がため息をついていました。
「どうしたらよいのでしょう」
「冬の女王様」
雪だるまが声をかけると、冬の女王様ははっとして振り向きました。
「まあ、どうしたこと。塔の中へ、どうやってお入りになって?」
トナカイは誇らしげに答えます。