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夏生詩集3

スカイツリー

作者: 夏生

迎春晴天の朝

呆けた心を半年抱えて

私たちはあなたのもとに

花を手向けにきた


あなたがはばかりなく

可愛がってくれた私の息子を

連れてあなたの待つ場所までの

長い距離を一歩一歩踏みしめて


幼い日にあなたに連れられて

祖母の待つ場所まで一歩一歩

踏みしめたように

あの頃は

儀式めいた行為で参らなければ

ならない場所で

それだけのものだった


あなたも待つ場所となった今

呆けた心はまだ夢を見ているようで

誰かがこれは嘘ですよ、と

明かしにくるだろうと待っていた


あなたの待つ場所に

花を手向け終わりふと見た先に

薄い青色のスカイツリーを見つけた

あまり好きではなかったくせに

何度も薄い青色のスカイツリーを

指差した


どんなことがあっても利点を

見つけ出すことが上手だった

あなたは確かにここにいた

かなしそうでも寂しそうでもなく

しっかり利点を見つけて教えてくれた


あなたはなくなったのではなくて

生きる場所が変わっただけなのかもしれない

死は生きる場所の引っ越しにすぎないの

かもしれない

呆けた心は無理なく明るさを飲み込んだ







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― 新着の感想 ―
[良い点] 作品中の「あなた」は、亡くなったお母様でしょうか。 お母様はきっと素敵な女性だったのでしょうね。 夏生さんの作品の中に深い優しさを感じるのは、受け継がれた愛情の証だと思います。 人は…
[一言] この文章全体に広がる「透明感」を感じました。 とても好きな雰囲気です。
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