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不良神、不貞腐れる

自分の自由な感覚でしか投稿してません。申し訳ございません。




「え、えぇと、黒い髪を頭の上でひとつに纏めていて、珍しい銀色の目をしていました。あと、途中直角に曲がった紅い刃の大太刀をもっていて、まるで戦場に降り立った鬼神のごとくって感じの超絶美青年でした」


「ふむ⋯⋯⋯⋯」



ヴィヴィアンの話す男を聞いていたヴァシュルたちは、その表情を険しいものに変えていた。なんとなく居心地が悪くて縮こまっていると、それを見兼ねたアシュレイが億劫そうにこう続けた。



『その男ならば、魔物どもを殲滅したあと()()()()姿()()()()()()()わ。その男がどういった考えで動いていたかなど、預かり知らぬことじゃ』


「そう、ですか⋯⋯」


『そんな事よりも、暢気に雑談なぞしてて良いのかえ?』


「⋯⋯というと?」



訝しげな表情を浮かべるヴァシュルたちに、アシュレイがヴィヴィアンの首に甘えるように手を回しながらつまらなそうに覇神たちを睥睨しながら爆弾発言をした。



『妾の影響から抜けた例の邪神が、どうやら再び蘇ったようじゃぞ?この森は入ったものの感覚が鈍るゆえわかりにくいが、いま森の外では荒れ狂う邪神が暴れておるようじゃがのぅ』


「っ、それは早く言ってもらいたかった!」



アシュレイの言葉にヴァシュルたちの顔が引き締まった。


そしてヴァシュルは、ヴィヴィアンにトーヤとアシュレイを伴って城に戻るように促した。



「こっから先は俺たちの領分だ。絶対になんとかするから、お前たちは安全なところにいてほしい。特にトーヤ。親父から聞いたが、親父の言葉を一蹴してここに来たんだろ?あまり無茶をしないでくれ、ヴィーまで危ない目に遭うだろ」


「ヴァシュル殿下⋯⋯」


「ヴィーは頼まれもしねぇのに勝手に着いてきたんだがな」


「ちょっ、トーヤ!」


「そりゃそうだろ。相棒(パートナー)が大事じゃないやつなんていないさ」



からりと笑いながらそんなことを言うヴァシュルに、アリスを含めた周りが感心したような目を向ける。なんとなく言いくるめられたような気がして癪になったトーヤは、ぼそりと鬱憤晴らしと別の目的のために敢えてこう呟いた。



「⋯⋯会ったばかりの時にその大事な相棒(パートナー)とやらであるはずの覇神を自慢するような見せびらかすようなことを言ってた奴と同一人物だとは思えねえ言葉だな、おい」


「げ、ちょっ、トーヤ!」


「⋯⋯ほぉ?」



トーヤの言葉に慌てふためくヴァシュルに、アリスを含めた周りから冷めた視線が突き刺さった。


一気に冷や汗が止まらなくなって固まるヴァシュルに、アリスが黒い笑みを浮かべながらその肩に手を置いた。



「ヴァシュル?その話は後でゆっっっっくりと聞くとして。早く行かないと、この国の民たちが危険だろう?行くよ」


「ハイ、リョウカイデアリマス⋯⋯」



機械的な返答をするヴァシュルを引きずりながら、アリスがトーヤに教えてくれてありがとうと優しい笑みを向けながら言った。トーヤは知っている、アリスはハルセ以上に怒らせてはいけない相手だということを。


それを知っているからこそ、勘のいいアリスの意識をヴィヴィアンたちから(というより自分から)外すためにヴァシュルに生贄になってもらったのだ。


勘のいいアリスに疑われるわけにはいかない。少しでもその鋭い嗅覚に触れてしまえば、一気に探られてバレる可能性が高いのはアリスなのだ。


そう、黙ってたことがバレて一番怖いのはとにかくアリスなのだ。



(たとえ主であるヴィーを邪教集団(変なもの)から守るためとはいえ、あいつは俺のその考えを理解した上で怒るからな)



一度ヴァシュルに言いはしたと言っても聞く耳を持たないだろう。それくらいトーヤにだってわかっていた。


だからこそ、誰よりも気づかれてはいけない。疑惑の目を向けられる訳にもいかないのだ。アリスだけには。
















それから、王子たちは覇神とともに邪神を倒し、今度こそ、真の解決へと至ったのだった。王子たちは負傷していたのだが、レオーナによって大半を癒してもらった為、目立つ傷は見当たらなかった。



「各国の王子たち、並びに覇神たちよ。此度の助力、心から感謝する」



謁見の間にて、シルヴェウスは目の前に並ぶ王子たちや覇神に対し、心から礼を述べた。シルヴェウスの言葉に、王子たちはとんでもないと首を振った。



「いいえ」


「当然のことをしたまでですわ」


「アミィの言う通りです」



そして王子たちに続き、覇神たちも口を開いた。



「元々は我らの責。我らの認識の違いが此度の騒ぎに繋がったのだ」


「ハルセの言う通りです。わたくしたちがあの時にきちんと正しい対処をしていれば、今回の事は起きなかった。わたくしたちこそ、お詫びしますわ」


「恥ずかしいぜ。過去のオレらの間抜けっぷりが露見したってことだしな。反省してるわ。すまなかった」



覇神たちの詫びに、シルヴェウスは首を振った。そして、王子たちよりも離れて立つヴィヴィアンとトーヤ、そしてアシュレイにの前に自ら近づいた。



「アシュレイ殿。此度の件、本当に⋯⋯」


「詫びなぞ要らぬ。妾は貴様にそんなものを求めておらぬ。妾のことは放っておいてくりゃれ。それよりも、礼ならば妾の主にするのじゃ」


「ええっ、おれ?おれはなんにも⋯⋯」


「寝ぼけたこと言ってんじゃねえぞ、ヴィー。お前がこいつの心を救ったんだ。まぁ、今回ばかりはお前の手柄だ。捻じ曲がった真実を正したんだからよ。少しは自信を持て」


「トーヤ⋯⋯」


「トーヤの言う通りだ。過去の過ちにも気づくことができたのは君のおかげだ。この国の王として、心から礼を言う」


「も、もったいないお言葉で⋯⋯」



頭を下げるシルヴェウスに、ヴィヴィアンはあたふたと手を振った。そんなヴィヴィアンをトーヤが呆れたように見、アシュレイは面白そうに見ていた。


ふと、トーヤは視線を感じて顔を上げた。目を細め、その視線の主を探ると、なんとそれは、いまトーヤが一番目をつけられたくないアリスのものだった。


若干顔を引き攣らせつつ、トーヤは不自然に思われないように顔をヴィヴィアンへと戻した。それとなく感じるアリスの目線に、トーヤは背中に冷や汗が伝うのを感じた。


その後、邪神を倒したという事実を大々的に発表し、国中から歓喜の声が上がった。これでもう、邪神の影に悩まされることは無くなったのだ。


しかし、その騒ぎの一方で、トーヤはムスッと顔を顰めていた。それは、事の経緯を公表するにあたって、ヴィヴィアンが申し出たことに起因していた。



━━━数時間前



「国王陛下、折り入ってお話があるのですが」


「なんだ?できることならばなんでも叶えよう」



緊張した面持ちでそう切り出すヴィヴィアンに、シルヴェウスは気負うことなくそう告げた。そんなシルヴェウスに、ヴィヴィアンは驚きの発言をした。



「あの、できればおれのことは伏せてほしいんです」


「なぜだ?お前たちも今回の功労者なのだ。それを⋯⋯」


「おれはこの国の王である陛下の命に背いて勝手に動きました。それはたとえ違う国の民であったとしても、赦されることじゃありません。そんなおれに、陛下から誉れをいただく権利はありません」


「そんなことは」


「いいえ、今回はたまたま運良く解決しただけです。もしかしたら、状況を悪化させることも有り得た。それは、国として問題になる事柄です。だからこそ、おれは称される権利はない。あっちゃいけないんです。それは、おれがおれを赦せない」


「ヴィヴィアン⋯⋯」



いつもほけほけとしているヴィヴィアンとは思えないほど、その言葉は強いものだった。顔には強靭な意思も見て取れる。それを見て、アシュレイは不敵な笑みを浮かべながらヴィヴィアンの腕に絡みついて言った。



「妾も人間たちの話題にのぼるのは不愉快じゃのう。(ヴィー)もこう言っておるし、妾も表舞台に立たされるのは御免じゃ」


「アシュレイ殿⋯⋯」



困惑したような顔をするシルヴェウスに対し、トーヤは不貞腐れたように言った。



「本人がそう言ってんだ。それでいいんじゃねえの。俺としちゃあ、ヴィーの功績が公に認められねえってのは腹が立つがな。それでもこいつ自身が決めたことだ。仕方ねえわな」



と、少し不機嫌そうだったが、結局はヴィヴィアンの意志を尊重した。


そうして、結局アシュレイやヴィヴィアンのことは伏せられての公表となったのだ。


トーヤはムスッとしていたが、ヴィヴィアンとしては満足のいく結果になったのだった。

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