不良神、和む
遅くなってしまってすみませんでした。
そして、内容も少ないです(´._.`)
その頃、ヴァシュルたちは━━━━
「あ゛あ゛〜、見つからねーっ!」
「ヴァシュル、煩いよ」
「つってもなー、サナフィアス」
「口を動かす暇があるのでしたら、頭を動かしてくださいな」
「へいへい」
不満を漏らすヴァシュルに、周りは生真面目な顔をして注意する。こんなことならヴィヴィアンと共に国に戻ればよかったと少し後悔した。
しかし━━━━━
(これも、大事な仕事だしなぁ。はぁ⋯⋯)
挫けそうになっていたヴァシュルの耳に、レオーネのたおやかな声が響いた。
「⋯⋯やはり、見つかりませんわ。気配がまるでしない」
「我の、勘違いだったか?」
「いや、まだそう決めつけるのは早いと思うぜ?」
「セリアスの言う通りです。もう少し、探ってみましょう」
覇神たちはそう言い合うと、目を閉じ、再び意識を集中させた。その様子を見ながら、王子たちは各々で話し合う。
「にしても、アガサがこの国にいるとして一体何をしているのだろうか」
「人界の見物とか?」
「ヴァシュルじゃあるまいし、誇り高い覇神が物見遊山なんてするわけないよ」
「あら、それはどうでしょう?」
アガサ捜索をしている割には結構自由に話している。まぁ、搜索とは言うものの、いまはまだ表立って歩くべきではないと判断されたゆえ覇神たちの力で国中を幾つもの映像で映してもらい、その風景から探しているだけなのだが。
だが、さすがに六時間もの間ずっと意識を集中させるのは辛く、キツいものだった。気を紛らわせるのに私語を少々してもバチは当たるまい。
「⋯⋯少し、気になっていることがあるのだが」
静かな声音でそう言葉を発したのはハルセだった。
皆の注目を集めるなか、ハルセは軽く眉間に皺を寄せながら言った。
「アガサはなぜ、人界にいるのだろうか」
「は?この間も似たようなこと言ってたな。でもそれは神魔王とかいうのが出てきたからじゃないかって、仮の予想だが結論が出ただろ?」
「⋯⋯考えてみよ。アガサが神魔王を理由に降りてきたというのならば、なぜ我らと合流せぬのか。もし、神魔王が理由ではなかったとしたら、いまどこで何をしているのか。同胞である我らに居場所を知られぬよう気配を消してまで何をしようとしているのか。考え出したらキリがでぬ」
「確かに、ハルセの言う通りかもしれない。敵ならばまだしも、同胞である私たちにまで姿を隠しているというのも不自然な話だ」
「アガサは、わたくしたちと違って、人間を嫌っておりましたし⋯⋯」
「あ゛ーもう!話しててもしょうがないだろ!それに、どんどん悪い方にしか考えられなくなるし。それならさっさとアガサを探し出して本人に直接聞けばいいだけだろって前も言ったろ」
鬱々と話す覇神たちに痺れを切らしたヴァシュルが鬱屈した空気を振り払うように叫んだ。一瞬、頬を叩かれたような顔をした覇神たちは、ふわりと顔を綻ばせた。
「はーっ、まっさかまたヴァシュルに言われるとはねえ。あの鼻水垂れたガキがこんなに大人になって、お兄ちゃん嬉しい♡」
「全っ然、褒めてないだろ!それにおれは鼻垂れじゃなかったぞ!」
「もう、ヴァシュル。いい歳してケンカしないの」
「うむ。セリアスの程度に合わせることなどないのだぞ」
「いや、合わせてるんじゃなくて同じレベルなんだと思うんだけど⋯⋯」
それまでの空気が払拭され、和やかな空気が流れる。まだ何も解決していないしアガサも見つけられずにはいたが、焦ることもないし悪いようにもならないと、この時誰もがそう思っていた。
そして、レラーキュリ王国では━━━━
「ヴィー兄様!これ、とっても美味しいですよ!」
「ヴィーおにいさま!レミのもたべて!」
「モテモテだな、ヴィー。犯罪だぞ」
「ちょっ、なんで!?って、わー!」
次から次へとヴィヴィアンの皿の上に積み上げられていく料理。あふれすぎていまにも崩れそうになっていた。
「ゲオルグ、レミ。あまりヴィヴィアンを困らせてやるな。ヴァシュルの大事な友なのだから」
「うえぇぇっ!!そ、そんな、恐れ多い⋯⋯」
「「はぁーい」」
「いちいちまごつくな、情けねぇ」
「でも⋯⋯」
「でも⋯⋯じゃねぇ。お前は乙女男子か」
あわあわと情けない姿の主を見て、眉間にシワを寄せながらトーヤは溜め息をついた。その様子を、シルヴェウスが微笑ましいものを見る顔で見ていた。