表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

花言葉。

西洋木蔦

作者: 軋本 椛



『友情』





 ――――親友だと、思ってた。


 何時もいつだって一緒で、小学校や中学、ここまで来れば当然のように高校まで同じものを選んだ。

 周囲の子達にだって「二人は何時も一緒に居るよね」と言われ「とっても仲良いんだ」と、少し羨ましがられた。それが私は嬉しかったし、彼女だって嬉しそうに見えた。

 …あぁ、私達は“同じ気持ち”なんだって心底安心した。

 だからその…友情っていうものを疑うなんて、想像すら出来なかったのである。

 ……だからこそ。


「――――憎い、」


 可愛さあまって憎さ百倍、という言葉が、この感情にとても近いのかもしれない。

 大切で当たり前になってしまうほど変わらなかったそれが、こんな簡単に崩れるなんて思いもしなかった。

 …何時も通りだったのに。

 何時も通りの筈だったのに。

 彼女はまるで私のことが見えていないかのように通り過ぎて、無視して、一日中私以外の誰かと一緒に過ごした。

 …何で?

 訳分からないよ。

 目の前の机には花が刺さった花瓶が置かれている。菊系で纏められているそれは鮮やかに美しく咲いていて、そんな事実が私の苛立ちを加速させた。

 裏切られて煮えたぎった感情が今にも爆発しそうになって―――――あれ、私ってこんなに攻撃的な性格だったっけ?

 ……まぁ、いいや。


 悪質な感情を孕んだまま、帰路を辿る彼女の後を追う。


 静かに、足音を立てないように。

 彼女に気づかれないように。

 途中で――――気づいた。

 彼女が辿っている道は何時もの帰り道ではなくて、途中の花屋で買った鉢植えを抱えたまま、彼女はどこかを目指して歩く。

 着いたのは、整然と石が並ぶ少し開けたところだった。ここは…あぁ、そうだ。ここは――――――――――――――墓場だ。

 その石の中の一つの前に彼女はしゃがみ込んで、墓石にかかった砂を手で払うと、小さく微笑んだ。


「こんにちは。今日も来たよ……静」


 鉢植えを石の傍において、まるで彼女は目の前に誰かが居るかのように夢中で話し始めた。

 今日有ったこと、勉強が何処まで進んだか、誰が誰と付き合ったなんてどうでもいい事まで。

 …うん、聞こえてる。

 私はちゃんとあなたの話を聞いているよ。今日だって直ぐ近くに居たんだから。

 ―――――――だからそんな、泣きそうな顔をしないで。


「アイビーってさ、確か静の好きな植物だったよね。花言葉は友情だって聞いたけどさ、わたし調べたんだよ。……アイビーの花言葉は“友情”“誠実”“不滅”“永遠の愛”――――――だったらさ、こうやって死んじゃっても、わたしの傍を離れないでよ……」


 ―――――約束、だね。






『死んでも離れない』





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ