西洋木蔦
『友情』
――――親友だと、思ってた。
何時もいつだって一緒で、小学校や中学、ここまで来れば当然のように高校まで同じものを選んだ。
周囲の子達にだって「二人は何時も一緒に居るよね」と言われ「とっても仲良いんだ」と、少し羨ましがられた。それが私は嬉しかったし、彼女だって嬉しそうに見えた。
…あぁ、私達は“同じ気持ち”なんだって心底安心した。
だからその…友情っていうものを疑うなんて、想像すら出来なかったのである。
……だからこそ。
「――――憎い、」
可愛さあまって憎さ百倍、という言葉が、この感情にとても近いのかもしれない。
大切で当たり前になってしまうほど変わらなかったそれが、こんな簡単に崩れるなんて思いもしなかった。
…何時も通りだったのに。
何時も通りの筈だったのに。
彼女はまるで私のことが見えていないかのように通り過ぎて、無視して、一日中私以外の誰かと一緒に過ごした。
…何で?
訳分からないよ。
目の前の机には花が刺さった花瓶が置かれている。菊系で纏められているそれは鮮やかに美しく咲いていて、そんな事実が私の苛立ちを加速させた。
裏切られて煮えたぎった感情が今にも爆発しそうになって―――――あれ、私ってこんなに攻撃的な性格だったっけ?
……まぁ、いいや。
悪質な感情を孕んだまま、帰路を辿る彼女の後を追う。
静かに、足音を立てないように。
彼女に気づかれないように。
途中で――――気づいた。
彼女が辿っている道は何時もの帰り道ではなくて、途中の花屋で買った鉢植えを抱えたまま、彼女はどこかを目指して歩く。
着いたのは、整然と石が並ぶ少し開けたところだった。ここは…あぁ、そうだ。ここは――――――――――――――墓場だ。
その石の中の一つの前に彼女はしゃがみ込んで、墓石にかかった砂を手で払うと、小さく微笑んだ。
「こんにちは。今日も来たよ……静」
鉢植えを石の傍において、まるで彼女は目の前に誰かが居るかのように夢中で話し始めた。
今日有ったこと、勉強が何処まで進んだか、誰が誰と付き合ったなんてどうでもいい事まで。
…うん、聞こえてる。
私はちゃんとあなたの話を聞いているよ。今日だって直ぐ近くに居たんだから。
―――――――だからそんな、泣きそうな顔をしないで。
「アイビーってさ、確か静の好きな植物だったよね。花言葉は友情だって聞いたけどさ、わたし調べたんだよ。……アイビーの花言葉は“友情”“誠実”“不滅”“永遠の愛”――――――だったらさ、こうやって死んじゃっても、わたしの傍を離れないでよ……」
―――――約束、だね。
『死んでも離れない』