【第6話『謎の隕石』】
今回はシリアス回です。
コメディが一切ないですが、その分謎めいた感じに創られています。
そして、地味にタイトルからして微妙なネタバレです(汗)
━━━夢…なのか…? いや、そうに違いない。俺はいま夢を見ているんだ。だってそれはそうだろ……?
空からいきなり光り物が落ちてくるなんて……。
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そう、今から数分前━━━。俺と九条は日も暮れ、星々が空一面に明かりを見せる頃、歩いて舞岡の細道を通っていた。
電灯があまりなく、あっても薄暗い程度のものでほぼ暗い夜道となっている。
俺と九条は互いに黙ったまま、静寂の中を歩き続ける。
(参ったな……何か話題を振るべきなんだろうけど、正直言葉が出てこない!)
九条も同じなのか、黙って俺の後ろを歩いている。
このままでは気まずい。
何か話題はないかと空を仰ぐ。
「……え……?」
思わず体が止まり、後ろを歩いていた九条が背中にぶつかる。
「ど、どうしたの……一之瀬く━━━」
そこで九条も気付いたのだろう。天の異変に……。
俺達が見たのは、満天の星空の中に更なる輝きを放つ流れ星。
閃光のような金色の光を放つ物体がコォォと高音を立てながら墜ちてきていたのだ!
その光は舞岡公園の奥地の方へ消えていく。それから間もなく、カッと金色の光が墜ちたと思われる周辺が大きな光に包まれた……。
「隕石が…墜ちた……!」
夢でも見ているのか……?
いや、そうに違いない。なぜなら今の隕石は少し変だからだ。
まず落下音が違う。それと大気圏を突破した際に生じる発火の後がない。煙のような炎線を描くのだが、今の隕石にはそれがなかった。
ただ光がとてつもない速度で墜ちたような感じだ。
墜ちた後の爆発音や衝撃による振動も一切感じないとなると、これはもう夢しかないんだ。
きっとそうだと言い聞かせようとしていた……だが、九条が凄く焦った表情をしている。
「い、今の方角…舞岡公園の方だよね…」
「……今のって?」
「……え? だから、隕石のような光り物のことだけど」
きょとんとした表情で、俺を見つめ返す九条。おい…九条もいまの光る物体を見たってことか…?
え?なに、てことは夢じゃないの?
にしては非現実的な現象のような……でも、夢じゃないって事は、本当に隕石のような物体が墜落したのか…!?
俺と九条はお互いに見つめ会った。
━━━そして足を舞岡公園へ運ばせた。
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俺達は走った。
舞岡公園内ともなると、街灯とかが完全にない為、夜は真っ暗で月明かりしかない。
もちろん俺や九条は地理を把握しているから、暗闇かつ広い舞岡公園でも迷うこと等ない。
何せ小中学では散々、遠足や畑栽培といった地域学習で来てたからな。
━━━そして、さっきの光り物が墜ちたと思われる場所に着いた。
高台にある小さな草原広場、日のある時間帯は老人等がハイキングに来たりして昼食等をしている有名スポットだ。
そこに小さなクレーターが出来ていて、その下に光り輝く小さな石が埋もれていた。
「やっぱり堕ちてた…夢じゃないのか」
俺はその光る石を見ながら、夢じゃないと再確認する。
なぜなら、この光りが届く周辺は微妙に熱く、ここまで走った息切れが苦しい。
夢では味わえない感覚だ。九条もその石を見て、何か不安に満ちた表情を浮かべている。
「何だろ…やっぱり隕石か何かかな」
「隕石って堕ちた後も光り続けるのか…?」
「そんなの聞いたことないよ…。それに墜ちたこのクレーターも変だよ。焼け跡が一切ないだなんて……」
「じゃあなんだよ、コレ…」
良く見ると、確かに焼け跡はない。普通は大気圏を突破する際、摩擦熱で燃え盛り火球となるわけで、墜ちた際は大爆音・衝撃波の他に焼け跡となるクレーターが出来るのだが、このクレーターには焼け跡がない。
ただ物体が超速度で墜ちて、掘られた程度のものだ。
そもそもこれは隕石なのか? 以前に図書室で宇宙の書籍を読んだ時に分かった事があるのだが、隕石には大きく分けて“鉄隕石”“石鉄隕石”“石質隕石”の三種類がある。
しかし、この光る石を見る限り、そのどれとも該当しない。石と言うよりはクリスタルに近いな……なんか透き通っているし。
「もうちょっと近くで見てみるか……」
「ちょ、ちょっと、危ないよっ」
ジジッ…
その瞬間だった。頭にノイズが響く。周りが暗くなっていき、視界が奪われていく。
━━━俺はコレを知っている。
俺には生まれ持って未来を見る予知夢と言う特異性質がある。
しかしコレを制御出来てる訳ではない。ランダムなタイミングとランダムな未来を見せるからだ。
そして今回のコレ……時たまに今みたいなノイズ音と共に視界が奪われた時、起きながらにして発作的に未来の映像が見える時がある。
でも、なんでこのタイミングで!あの光に近付いた瞬間だ……なぜ━━━!
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どこだ、ここは……。汚んだ大気、砂塵で茶色く染まった世界……そして、俺の目の前に広がる“廃れた開業学園”。
何でこんな未来を……。何があったんだ。どうして誰もいないんだ?
俺は違和感を覚えながらも、足を校舎へと進めた。
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「こーちゃん…っ!ねぇ、こーちゃんったら!」
そんな声が耳に響く。俺はハッと目を覚ます。
辺りを見回すと、舞岡公園の光景が広がっていた。
「く…九条…?」
「どうしちゃったの?いきなり止まっちゃって?心配したんだよっ」
「止まった……どのぐらい…?」
「えっと…3分くらいだけど」
「3分…(長いな……)」
九条にごめんと謝ってから考える。
未来予知している間は、身体中の機能が停止したかのように止まってしまうみたいだ。もちろん自覚はない。
にしても今の予知はなんだったんだ…?
あきらかに異様な光景で、とても予知夢には思えない。あそこまで廃れた開業学園には何があったんだ……。
俺は光る石…クリスタルのことも気になりだす。あれに近付いた瞬間に、予知夢が発動したんだ。何か特別なものかもしれない。
「あの石を持って帰ろう」
「でも危険じゃ……」
「大丈夫だよ。もし何かあったら、直ぐに捨てるから」
九条は乗り気ではなかったが、俺はどうしてもクリスタルが気になり、持って帰ることにした。
手に取った瞬間、さっきまで金色に輝いていたクリスタルが、光りを納めていく。
「光が…消えていく……?」
「つくづく変な石だなぁ…」
もはや只の石でないことは確実だ。
取り敢えず俺は、その石をポケットに入れ、九条と一緒に家に帰った。
・・・・・そういえば、さっき九条「こーちゃん」って、呼んでなかったっけ?
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その頃、舞岡公園の隕石(?)が堕ちた場所には、一人の女性がいた。
「チッ!あの二人がトロトロしてるせいで、源石をどこぞの誰とも分からない一般人に持って行かれちゃったじゃないか!」
甲高い女性の声が響く。暗くて姿は見えないが、彼女が源石と言われるものが墜ちたクレーターの前で忌々しげに呟いていた。
(━━にしても本当に“金色”なんだな。あんな色を放つ源石なんてみたこともないっての!)
彼女は空を見ると、ククッと悪みに笑い告げた。
「誰が取ったは知らないけど、それも刻が来れば分かるだろう。今は預けて置くよ、どこかの誰かさん」
━━━そして女性は音もなくその場を去った。
次回へ続く!!
こんばんわ!いつも遅い時間にすいません。
焔伽 蒼です!今回の話は主に未来(物語的)のフラグを立てた感じになっています。
隕石を源石と呼んだ女性や、その源石などにつきましては、だいぶ後になって明かされていきます。
今はもう少し学園話に付き合ってください!
それとちょっとした報告なのですが、活動報告にてキャラの設定紹介を紹介するので、よろしかったらそちらもご覧下さい。
ただキャラ画はないです。すいません。ホントはめっちゃ欲しいのですが、画力の問題でで断念しました・・・。ぐふっ(血)