【第50話『太極拳“禁”の一手』】
光司の一撃が日暮を打ち抜く。地面に倒れ伏せる日暮。意識はあるが、直ぐに起き上がれる雰囲気ではない。
いわゆるさっきの“無天抜き”とは、手刀と言う貫通性の高い型に変える事がこの技の秘訣であった。
あの瞬間、指先を日暮の腹に押し当てて、独特な回転運動を足から身体を伝い、手刀の指先までその回転を持って来て、その蓄わえられた回転力を手刀から一気に放出。
そうすることで、0距離からでも強力な衝撃を発する事が出来るのである。気力と技の融合だ。
勿論これをモロに喰らった日暮は、相当なダメージである。それでも意識を保っていられると言うのは、衝撃が放たれる直前、気の高まりを感じ取った日暮は身体をズラすことで、力を少しだけ受け流していたからだ。
「……っつぅ~!効いたよ、一之瀬光司!」
日暮が走り出す。先程の一撃が効いていない訳ではない。多少は力を流すことに成功したとは言え、体内を通り過ぎた気力が深刻なダメージを与えていた。あまり長くは戦えそうにない……。
それだけのダメージがあるのを分かっている光司は、未だ気力を振り絞り向かってくる日暮に警戒して構えた。
そして日暮は光司の、間合いに入ったと同時に両手からによる三方向の掌打を繰り出した。
あまりの速さに、手が三つに見えるほどだった。
それでも、光司は全て渦型と言われる攻撃が手刀に触れると同時に半回転させて力と方向を流す防御の型でいなしていた。
……だが、それらは囮だった。
今までよりも異常な気力が集中された、手刀が一直線に放たれてきた。
「これは……!?」
「ごめんね、禁止技使わせてもらうよ!太極拳“禁”が一手“刺突抜き”!」
光司は知っていた。太極拳の禁……!それは相手を確実に殺す為の殺人技!その内の一手“刺突抜き”とは、気力で鋭利になった手刀で相手の身体を貫き、急所である心臓等を穿つ冷酷な技のはず。
直撃はまずい!防御をするにも、日暮はすでに間合いに入っている。間に合わないと判断した光司は、決意をする。
(仕方ない……“アレ”をやる!)
光司は左手を前に突きだし、右手を後ろに下げた。
そして向かいくる相手の攻撃軌道上を見抜き、その上に右手による回転を加えた手刀を打ち放った。
「!?(手刀に対して手刀を出してきた!?━━━いや、あの回転は!)」
「八卦無天流“無天抜き・弐ノ型・旋渦”!」
互いの手刀はぶつかり合った。気力の衝突で風が吹き荒れる。
だがこの勝負は光司が打ち勝つ事になった。
気力により貫通力を高めた手刀は言わば刀、それに対して足から送ってきた回転力を衝撃として放つのではなく、手刀を回転させたことによる威力は最早ドリル並みだ。しかも、回転運動は相手の気力をも分散させるので互いに打ち合えば、勝つのはどちらか明白であった。
手刀を打ち破った光司の手刀は、日暮の腹に命中した。ほとんど打ち合いで、気力も威力も削られていたが、先程のダメージもあった日暮の身体は、この最後の一撃に耐えることはできなかった。
「がッッ!」
空を飛ぶように後方へ跳ばされ、日暮は地面に落ちた。そのまま意識を失い立ち上がってくる気配はない。
光司は見事に日暮の攻撃ごと、技で打ち勝ったのだ。
まさに“攻撃こそ最大の防御”、を体現した打ち合いだった。
光司は安堵の溜め息をついて、勝利宣言をした。
「勝った……!日暮垣内、いい勝負だったよ」
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その勝負を見守っていた彩香は安心したように喜び、泉堂も残念そうにかつ日暮を認めたように優しく笑っていた。
「一之瀬君、勝ったんだね……良かった」
「あらあら、日暮さんも敗けてしまいましたか。でも、よく戦いましたわ」
彩香は光司の元へ、泉堂は日暮の元へ行くと、日暮のエンブレムを光司へ渡して肩で支えたまま、学園へと帰っていった。
二人を見送った光司と彩香は、互いに相互確認をする。
戦いの続きをやろうとしているのか、二人は真剣な目付きだった。
次回へ続く!!
ついに!つーいーに!50話行けました!良かったです!晴れて長編って感じがしてきました!
長かったです。ここに来るまで、訳3ヶ月も掛かりました。これが早いのか、遅いのかは分かりませんが、個人的にはめでたいです!本当ならアンケートやらなんやら企画を出したいところではありますが、僕は自惚れていませんよ?そういった企画やるならば、もっと読者さん増やしてからにしようと思います!
まあ、それは置いときまして、代わりと言っては何ですが、現在旧校舎の見取り図を更新しようかと考えています。はい。
ネタとしては先になりますので、話に合わせて投稿しますが。同時にファンタジーものの下準備は順調です。創り始めても、何話か溜まったらの投稿にします。ミラカタ優先ですので!
それでは長々と付き合っていただき、まことにありがとうございます!これからも、よろしくお願いします。ではでは~




