【第44話『初戦!光司vs彩香』】
【5月23日(土)・12時00分『横浜みなとみらい・山下公園』】
風が吹く。
嫌な風だ。だがそれは、友人同士が戦うと言う、過酷な試練の前には相応しい風行きだった。
「まさか九条と戦う日が来るとはな……」
俺はフ……と遠い目で笑う。九条は少し寂しそうな表情をしていた。
「仕方無いよ……、それが私達の運命なのだから!」
九条は涙目だ。
俺も苦しく、辛い……それでも前を向く。
「運命……か。悲しき運命だ」
「私達は闘うしかないの!だから……だから!」
「言うなぁ!それ以上は言うな……決心が……揺らぐ……!」
俺は唇を噛み締めて拳を握る。
「そう……だね……、ごめんね」
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【開業学園・体育館】
そんな二人の感動なやり取りをモニター越しで見ていた、雪は思った。
「……(なに?この三文芝居……)」
雪は分かっていた。このやり取りが二人による悪ふざけの演技だという事が。
「ていうか、二人ともノリノリだね……」
「な、泣けます~。
二人がそんな運命のもとに生きてたなんて~ぐすっ」
「泣いてる!?」
素直に騙されていた渚を見て、雪は驚愕した。
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【横浜・山下公園】
「……とまあ、冗談は置いといてそろそろ始めるか?」
「うん、そうだね……。 前のように勝った方が諦めるでいいんだよね?」
「ああ」
勝った方が諦める勝負か……、子供の頃公園の遊具で遊ぶ時に一台しかないという事で、よく順番で揉めたんだよな。
そんな時に、九条のお母さん……朔夜さんが「ケンカはダメです、じゃんけんして勝った方が、負けた人を労って譲ってあげましょう」って、優しくいってくれたんだよな。
今は亡くなってしまったけど、俺や九条はあれ以来言ってくれた事を守り、勝った方が諦めると言う特殊ルールを作ったっけ……。
「まぁ、何はともあれ……」
「お互い諦められない理由があるからこそ……!」
俺と九条は口を揃えて言う。
『勝負ッ!!』
俺達の間には、急な風が吹き荒れる。それは互いに気力を放っているからだ。
九条も本当に本気で来るみたいだな!
そして、先に動いたのは九条だった。
背中に背負っている矢籠から、矢を5本取り出した。勿論非殺傷用に先っぽは丸い木板で作られていた。
「当たっても死なない木張の矢でも、当たり所によっては骨ぐらいは折れるから気を付けてね。【五手射ち】!」
五本の矢を弓に装填し、同時に放った。普通なら弓や弦を傷める上に、矢はバラバラに飛び、距離も大して飛ばない射ち方の筈だが……流石は女性唯一の四武生だ。
弓と弦にダメージを与えず射る技術、気力による方向操作と距離飛躍。どちらも常人を逸した技だ。
「怖いことを言ってくれるよ!」
俺はグチりながら、向かい来る矢を交わしていく。
この程度なら交わすのも難しくない。
だが、どうする……?
俺の八卦無天流は、近接戦用の武術!遠距離重視の弓矢は分が悪い…!
しかも、相手があの九条彩香ともなれば尚更だ。
九条彩香。それは遥か昔に遡るが、この“九条家”と言うのも俺や千晴の“一之瀬家”と同じで武術を極めた流派の一族でもある。
この日本には古来より“天涯九家”と言われる、それぞれ九つの武術を極めた名家が存在する。
その多くは消息不明だ。
現存されているのも、一之瀬家が伝える“八卦無天流”と、九条家が伝える“飛翔羽翼流”だけで、他は確認されていない。
そして、九条家の飛翔羽翼流は、古来から弓矢を使う一族。
その独特の射ち裁きと、独自に改良された弓矢と気力の合わさった攻撃は、まさに自由自在!
遠距離において九条に勝てるのは、そうはいないだろう。
だからこそ、まず九条の間合いに入らないと勝ち目がない!
それに見たところ、まだ九条は飛翔羽翼流の技は使っていない。
「だったら!」
ススス……
目の前に両手で、円を描く。あれを試してみるか。
「……?(あの動作は……)」
「遠距離攻撃は俺にも出来るぞ!【八卦無天流“飛牙・蒼天撃”】!」
両手を前に勢いよく突き出すと、その衝撃波がまるで牙のように飛んでいく。
日暮戦の時に盗んだ技を、更に八卦無天流風に改良した新技だ!
威力も速さも、あの時の3倍はある。
「その技は知ってるよ!【七手射ち】!」
七本の矢は、衝撃波に向かって飛んで来る。
(衝撃波なら、物質をぶつければ相殺出来る!)
「甘い!」
「!?」
その瞬間、七本の矢は確かに衝撃波にぶつかるが、見事に矢を粉砕し衝撃波は相殺しきれず、まだ飛んでいく。
「うそ!(以前より気力の出力が上がってる!?)」
九条は右にジャンプして、衝撃波を交わした。
しかし体勢を立て直す前に、俺はすでに九条の間合いに入っていた。
九条が衝撃波を相殺するために矢を放った瞬間、俺は八卦無天流独自の高速歩法【瞬蹴】を使い、間合いに入っていた。
「もらった!」
「……っ!」
次回へ続く!!
どもども、焔伽 蒼です!
今回は次回予告をします。
次回は前後編ストーリー(今度はホントに前後です)になります。
メインは彩香と光司ですね。時期も6年前に戻ります。ちなみに過去編ですが、的場雪篇のように九条彩香篇ということではないです。それは別の機会にやります。
少しですが、フラグが解消されます。
そして、この前後編は個人的に一気読みをして欲しいので、同時配信するつもりです。今しばらく、お待ち下さい。




