【第42話『生徒総会のイベント』】
【5月23日(土)・9時00分『開業学園・体育館』】
土曜日、見渡す限り青空の晴天。普通なら誰かと遊んだり、まだ寝ていたりと、最高の休日を満喫するところなのだろうが、あいにく今日は生徒総会となり登校しなければならなかった。
生徒は皆開業の体育館に集まっている。生徒の総数は200人近くいて、この体育館はそれぞれの生徒が壇上を見易くする為に特殊な構造になっている。
プロレスリングや相撲会場等を思い出してほしい。
壇上(舞台)を中心に囲むように席が設置されていて、後方の人も見れるように階段式に後ろへ下がれば下がるほど、高くなっていく作りのはずだ。
うち(開業)の体育館は、そんな施設の設計を元に作られている為、席は円周状に壇上を囲み、高さは五段分と設定されている。
収容最高人数は500人は入ると言われているほど大きい。
その体育館入口付近に、俺達は立ち往生していた。
入口が正面しか解放されていないから、生徒達が直ぐに中に入れず詰まっている状態なのだ。
「熱い……」
俺はポツリと呟く。まだ真夏日ではないとはいえ、5月も終わろうとしている時期だ。太陽光からはジリジリ感がで出している。
それに加えてこの人口密度……。額から汗が流れる。早く冷房の効いた体育館に入りたい。
冷房付き体育館、夏になると全てのドアを閉めきり、四つのエアコンが作動して暑く蒸しった中を冷やしてくれる。冬は暖房にも切り替わるし、開業学園の利点の1つだろう。
設置したのは生徒会会計の泉堂さんらしいけど。
(あの人も金持ち何だよな……天王洲さん程ではないけど)
そこで気付いた。天王洲さんが居ないことに。
側には九条・慶太・雪がいる。千晴も1年の席に向かったから、居ないのは天王洲さんだけとなる。
とりあえず、横にいる慶太に聞いてみるか。こいつ、天王洲さんとは特に仲が良いからな。
「慶太、天王洲さんはどうしたんだ?いつも一緒に登校してるじゃん」
「ああ、どうやら寝坊みたいよ?昨日夜中まで父親の晩酌に付き合わされたとかで寝過ごしたみたいだな」
「そうか……。それはご愁傷様だな」
その時、列が動き出した。見てみると風紀と書かれた緑色の腕章をつけた男女の生徒が誘導を行っている。
「風紀委員会が出てきちゃたかー、それは統率もされるよねぇ」
雪が苦笑して言う。
風紀委員会か。生徒会の泉堂が統率する治安維持部隊。
目をつけられると、常に監視され少しでも学園に害ある行為をすると、泉堂を通じて生徒会の粛正対処となる。
だからこそ、風紀委員会が出てくると、今の状況のように一般生徒は自粛するようになる。
「……まあ、やんちゃごときで退学なんて誰もなりたくないもんな」
「私はあの人達苦手かも……」
珍しく九条が否定の発言をする。
苦手……その言葉の意味は分かる気がする。今のやり方は確かに治安維持には意味あるものかもしれないが、それは生徒の行動を余りにも制限し過ぎる。まるで恐怖政治だ。
確かに然るべき指導と言うのはあるべきだが、風紀委員会と生徒会(粛正委員会)は厳しすぎる。
これでは生徒達もストレスが溜まるんじゃないか?
「分かるな、その気持ち……」
「うん……」
俺と九条は頷く。
気付けば体育館の中まで列は進んでいた。消灯しているので暗いが、その中央の壇上にライトが当たっている。
何よりも涼しい。冷たい風が身体に触れ、汗を引かせてくれる。これにアイスでもあれば最高だと思う。
俺達は自由席となった2年エリアの前の方に着席する。
それから、しばらくすると壇上に生徒会の五人が上がってくる。
慶太が不機嫌そうにケッと口打ちをする。
「生徒会……えらそうにしやがって!光司や九条に攻撃をしてきた、ただの正義を糧にした横暴者の集まりじゃねぇか」
「まぁまぁ」
憤る慶太を諌めながら、壇上の方を見下ろす。代表で出てきたのは生徒会長の天草だった。
天草はマイクを使って話す。
「やぁやぁ!今日は祝日なんに集まってもろうておおきになー!でも堪忍や、総会は開業に通う生徒の義務みたいなもんやからね」
その瞬間、会場は騒ぎ出した。
女子はキャーキャー叫び、中には天草様ーと呼ぶ者までいた。
男子は男子で、LOVE☆AKANEと叫ぶ者まで現れる。
去年は驚いたが、今年はさほど驚きもしない。生徒会云々以前に、天草は美男子として、泉堂は美少女として生徒達から圧倒的な人気を誇っている。
希に茜様の下僕になりたいと言う患者まで出る始末だ。
「ほな、話しに戻りたいから静粛になっ」
天草の笑顔に、生徒達は一気に静かになった。女子の何名かは、目がハートになっている者までいる。
こ、これが、IKEMEN☆SUMAIRUかっ!
「今日は話すんではないで!屋外でのイベントをやる!」
体育館に動揺が走る。それはそうだ。基本体育館内での話し合いが生徒総会だ。
それを無視して、あげく外でだと!?くそぅ、テンション上がってきたー!
「あれあれ?光司くん案外楽しそうだねぇ??」
「そりゃつまらない話し合いに比べたらな、生徒会の企画と言えどテンションは上がるよ。雪もそうだろ?」
「んー。どうかなー」
「やることはたった1つや!その名も「エンブレム争奪戦」や━━━!」
\オオオオオオ!!/
体育館内が盛り上がる。生徒達が一気にやる気になったようだ。
「俄然やる気になってきたよ!」
どうやら雪もやる気になったようだ。
そこで天井から機械音を立てながら、モニターが降りてきた。
それは広い体育館内でもはっきりと見える巨大なモニター。
しかもハイビジョン。その大きさたるや、実に300インチぐらいある。そのモニターに映像が映る。
映し出されたのは、どこかの広場のようだ。
「どこでしょう?」
「あそこって……確か━━━って、天王洲さん!?」
「あ、おはようございます」
驚いた!マジで驚いた!気配しなかったから余計に驚いたよ。
気を一切練らない一般人は、逆に感知するのが難しいんだよな……。
「ギリギリセーフだね、天王洲さん」
「はい。遅刻しないで良かったです」
優しい笑顔を見せるよな、天王洲さんって。
「皆も気が付いていると思う。ここは横浜みなとみらいの山下公園や! ここを舞台にエンブレム争奪戦をやってもらうで!ルールは簡単!
このエンブレムを体のどこかに貼って、それを取られた者は失格!最後までエンブレムを守りきった者が勝利のサバイバル戦!
山下公園は泉堂財閥が借りきってくれとるから心配はあらへん!とにかくどんな手を使っても最後まで残ってれば勝利や!
しかも優勝者には泉堂財閥から賞金10万円が贈呈!」
『賞金10万円!?』
「頑張るな、泉堂財閥!」
「賞金出したらまずいと思うのですけど……」
慶太と天王洲さんがそれぞれに反応するが、俺と九条は黙ってしまった。
『……(間違っている気もするけど、10万円もあれば生活の助けになる……)』
互いに家庭環境が特殊が故の反応だった。
「どんな手を使っても……か。面白ェ!」
「あそこにいるの……桐谷か。笑ってやがる」
てことは桐谷も参加するって事だよな。
(これで彼らも参加するやろ。粛清・行事・任務の全てをこなせる一石三鳥のイベントや)
「さあ参加者は舞台に出たってやー!」
そんな生徒会長の言葉と同時に、壇上には人が殺到した。
次回へ続く!!
どもども、焔伽 蒼です!
ここで生徒会激突編が終わり、新たに生徒会決着編が始まります。次回以降は戦い・戦い・戦いばかりになって行きます。どうぞお付き合い下さい。
報告です。本日からリレー小説「俺はリア充になりたい!」を開始します。内容は学園で、メタネタやパロディもやや含まれます。どうぞ、ご覧下さい。




