【第38話『開業学園三代校長「山田平八郎」』】
【5月22日(金)・10時10分『横浜・開業学園・中庭』】
カァーン……コォーン……
ここで昭和初期を思い出させるような、鐘によるチャイムが学園内に響き渡る。
そんな音を聞いて、ほのぼのしている男がいた。
ここは開業学園の1階にある校長室。部屋の中も昭和仕様になっていて、なぜか床は畳で土足厳禁、日光防止のカーテンの代わりに障子、その外には風鈴、家具等は全て木製(それもけやき作り)で、そのどれもが特注で高級感溢れる昭和と言うよりは和風といった感じだ。
そんな風景と畳の渋い香りを堪能しつつ、粗茶の味を楽しみにながら鐘の音を聴いて和んでいる校長の「山田平八郎」は、フォッフォッフォと笑う。
ちなみに年齢は80歳、開業第三代校長の平八郎は昭和堅気の人間だ。
開業創設して早くに亡くなった初代校長と、開業を昭和から平成まで護り通した二代校長の意志を受け継ぎ、今もこうして昭和を世に残すために開業を護っている━━━と見せ掛けて昭和の面影を売りに、名誉や富を我が物にしようとしている腹黒校長は卑しい目で笑う。
ただ昭和と和風は純粋に好きなようだ。
「今日の鐘の音も哀愁漂うわい。ええのぉ~、昭和ええのぉ~」
山田平八郎(80歳)は、業務をほったらかして、外に出ていく。
「今日もええ天気じゃ。どれ、外回りでもしながら、校舎を眺めてみるかのう」
平八郎はのほほんとした顔で、中庭へと向かう。そして無惨な光景を見た。
ダダダ・ダーン♪
と豪快かつ爽快な曲調、ベートーベンが流れたような衝撃を受ける。
噴水は壊され、木々が斬り倒されていて、ガーデンや地面はズタズタ、その側の校舎の三階の窓━━━と言うか生徒会室の窓ガラスも割れていた。
「こ、これはぁあぁあ!!?な、何事じゃぁあぁあ!!?」
平八郎は雷に打たれたかのような衝撃と、ムンクの叫びのような表情をした。
そして胸に痛みが走り、両手で押さえてしゃがみこむ。
「ぐぉぉぉぉ!じ、持病のしゃくがぁぁぁ!」
ザッ!
その時、どこから現れたのか、一瞬にして黒いマントを被った人間が平八郎の側に出現した。
「大丈夫ですか!?」
黒いローブも付けていたので、男か女かわからないが、平八郎のことを凄く心配している様だった。
「おぉぉ…しのぶ……わ…わしの学園が……ごふっ」
なんか真面目に吐血している平八郎。
「へ、平八郎さまぁあ!だ、大丈夫です!まだ傷は浅いです!」
そして、この忍者のような人間“忍”も真面目に心配している。
「と、とにかく病院へ!」
「ダメじゃぁあぁあ!!」
ビクッ「えぇっ!?」
「わしの…わしの学園を放置して、外になぞ出られんわいっ!ゴバッ!」
「平八郎さまぁぁあ!せ、せせせめて保健室にぃぃ!」
「保健室……じゃと!?」
平八郎は立派な白い武将髭をさすり、白く太い眉毛がピクッと動く。
「行こう!」
「え?」
スクッと立ち上がって、白く長い髪をなびかす平八郎はいつの間にかに凛々しい顔付きとなっていた。
「保健室と言えば来栖先生!来栖先生と言えば豊満なぼでぃじゃろうがぁぁあ!」
「え? あ、はい!そうでしたね!すいませんっ」
「逝くぞぉぉ!」
「意味合いが恐ろしいですが、着いていきます!どこまでも!」
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【5月22日(金)・12時00分『横浜・開業学園・2-C』】
ここは校舎本館の三階にある教室、2-C。担任は谷口治。このクラスには一之瀬光司を始め、梶間慶太・九条彩香・的場雪・天王洲渚がいる。
今は昼休み。
皆は午後の授業がないのにも関わらず昼食を食べていく事にしていた。
そんな物好きな事をしているのは、天王洲渚の提案によるものだった。
自作した弁当を食べて貰いたいと。
あの短時間でどうやって作ったのか誰もが疑問を抱いたが、その弁当箱を開けてからの豪華絢爛さや、たちまちに腹の虫を興奮させるほどの香りが小さな疑問を吹き飛ばしていた。
「わぁ♪渚のお弁当うまそうー」
「あぅ……僕のアイデンティティーが奪われていくぅ~」
彩香と雪が感想を述べる。彩香は家庭の味のプロで、雪は和料理のプロ、そこに渚までプロ級と言う珍しい光景がある。
それには光司や慶太も驚かざるは得ない。
「さあさあ、食べて下さい」
渚が弁当を進める。その瞬間━━━
\なにぃい!/
突如、教室内に何人ものの声が響き渡った。
光司達は声の方へ振り向くと、暗めの男子を中心に他の男子達が集まっていた。
何やら深刻な話をしている様だ。
皆は聞く耳を立てる。
「悪徳金融会社からの取り立て!?なんたってそんなことに…」
「し…しょうがなかったんだ……父さんの会社が倒産したから……」
「オヤジギャグ?」
「いや、だからってそんな金融会社から借りなくても……」
「そ、それで…?どうするんだよ、佐藤」
佐藤。その言葉を聞いて光司と慶太が近付く。
佐藤と言う男は、二人の友達だった。そんな友達のピンチに黙っていることが出来なかったようである。
「佐藤、その金をいつまでに払えと言われてるんだ?」
光司が心配そうに質問する。佐藤は辛そうな顔をした。
「次の電話までに、お金を振り込んでなきゃ、家行くからなって……」
今度は慶太が質問する。
「次の電話っていつ?」
「今日の昼……」
すっかり気を落とした様子で答える佐藤。
『今じゃん!?』
光司と慶太は同時にツッコんだ。
どうしたものかと考えていると、ガララッ!と教室のドアが開けられて、谷口が入ってきた。
「なんだ、お前ら。まだ帰ってなかったのか?」
次回へ続く!!
急な近況報告
最近パソコンの様子がおかしいです。ウイルスにやられた可能性があると業者に言われました。
近い内に修理を出しますので、その間予告無しに配信が止まるかもしれません。もちろん、復活はします!修理中に携帯にため置きしますから!
5日以上止まったら、修理中だと思ってください。ご迷惑おかけします。




