【第37話『断罪と狂犬!』】
【5月22日(金)・9時20分『横浜・開業学園・中庭』】
空から槍5本が降ってくる。
泉堂が桐谷に目掛けて飛ばしたものだ。
しかし桐谷は全てジグザグに動いて、交わしていく。
だが交わされるのを想定していた泉堂は、両手に刀を持って桐谷に接近する。
槍を交わすのに意識を集中していたのもあり、泉堂は桐谷の間合いへ入り込むことに成功する。
「お覚悟下さいませ!」
泉堂は刀を振りかざした。風をも斬る刃は、桐谷は冷や汗を滲ませるが、即座にブリッジの姿勢を取ることで避けることが出来た。
その際に、桐谷の後ろにあった噴水が切断された。
噴水が壊れたせいで、水が乱雑に吹き出ている。
冷たい水飛沫が二人に降り注ぎ、視界が僅かに悪くなる。
その隙を泉堂は見逃さなかった。手裏剣を10枚放ったのだ。
放たれた手裏剣は、水飛沫を弾いて桐谷に向かっていく。
「チッ!調子に乗るなァ!」
ゴォッ!
桐谷が拳を前に突き出すと、目の前の手裏剣と水飛沫を弾いた。
「!」
泉堂は驚きこそするが、直ぐに別の攻撃に移る。今度は鎖釜二本が桐谷を左右から挟み撃ちにする。
「くっ!」
だが鎖釜は虚空を斬った。桐谷は身体をギリギリ地面に付けるぐらいの低さにしゃがんだことによって、鎖釜を交わしていたのだ。
「あらあら。かかりましたわね?」
「なに……?」
ドォッ!
その瞬間、桐谷の横っ腹に鈍い音と衝撃が走る。
「かはっ!」
腹を抑えて地面に倒れる。一体何が起きたのか理解出来ない。
泉堂の攻撃は全部交わした筈だ。両手は鎖釜を使って自由は効かない。だからこそ、横っ腹にぶつかってきた鉄球に疑問を感じていた。
(どういうことだ?確かに奴の両手は塞がっているはず……まさかっ!)
「気付きましたわね。そうですわ。貴方が避けた鎖釜は右手だけで操ってましたのよ?左手は勿論、鎖付きハンマーですわ」
右手のみで二本の鎖釜を操るなんて聞いたことがなかった。それだけに桐谷は、まんまと騙されてしまっていたのだ。
「ご理解頂けましたでしょうか?私の百器宴舞は、あらゆる武器による、あらゆる攻撃を行います。1防ごうとも10の攻撃が、10防ごうとも100の攻撃が、絶え間無く貴方を狙いますわ」
そう説明しながらも、今度は槍を取り出し、大きく振られる。
「めんどくせェ!」
ガシッと槍の柄の部分を掴み取り、攻撃を無効にした。
「このままへし折ってやるよ!」
「防ぎましたわね。
これであなたの右手は暫く自由に動かせませんわ!」
ドササッ!
泉堂は槍を放した。
そして桐谷の間合いにススッとスムーズに入り込んだ。
そして取り出したトンファーで攻撃をしてくる。
(今度はトンファー!?めんどくせェ…!)
泉堂のトンファーの猛攻を、桐谷は上手く上半身を動かしながら紙一重で交わしていく。
「交わしてばかりでは、私には勝てませんわよ!?」
泉堂のトンファーを交わしながら桐谷はタイミングを図っていた。
動作には必ずリズムがある。そのリズム際読めれば、如何なる達人でも持っているリズムからリズムへリピートする隙がある。
桐谷はその隙を狙っていた。獲物を仕留める為に、息を堪える狼のように。
(1…2…3、ここだ!)
桐谷はトンファーの攻撃が止む僅か0.5秒と言う一瞬を見極め、泉堂の右手と胸ぐらを掴んで、そのまま押しながら壁に叩き付けた。
「っ!?」
「リズムが読めちまえばなんてことはねェ!」
そして止めの一撃を入れる為に桐谷は拳を握る。
「沈めよ!」
「この…!」
泉堂も足をトンッと地面に当てると、靴のつま先から仕込み刃がシャコッと出てきた。
そして二人は互いに攻撃を放つ。
『!?』
だが二人の攻撃は当たらなかった。
なぜなら二人の間に天草が割り込み、一本のホウキで拳と刃を同時に止めていたからだ。
「てめェ、何者だ?」
桐谷が睨みを効かせて天草に問う。緩い雰囲気を漂わせていて、一見能天気なアホにしか見えないが、桐谷の本気の一撃と泉堂の殺意を込めた一撃を同時に防いだのだ。それもホウキ一本で。
警戒せざるを得ない。そんな桐谷の様子もお構いなしに、天草はへらへらと笑いながら二人に喋りかける。
「やめぇや。これ以上の争いはシャレにならんで?」
「会長……」
「……(会長?こいつが生徒会長の天草荘司か…)」
「戻るで、茜」
「会長……まだ粛正は終わっていませんわ」
「茜。わかってるやろ。これ以上のご法度は、本格的に上に睨まれる行為やで?
粛正の対象になりとぉなかったら、この場は引くんや」
泉堂は暫く考え込んだが、諦めたかのように仕込み刃を靴の中に戻した。
「……分かりましたわ。どうせ、明日がありますしね」
「オーケーや。狂犬君も拳押さえてくれんかな?」
しかし、桐谷は怒り顔で天草に対して怒鳴る。
「勝手に終わらせてんじゃねェぞ!この偽善者が!」
その言葉には殺気が乗っていた。
桐谷は平和主義者や偽善者等といった、平和を謳った奴が嫌いなのである。
「偽善者とは酷いなー。俺そんなんちゃうよ」
「闘志に満ちた眼をしてやがる奴がよく言うぜ!闘りたいって書いてあるぜ?」
天草はピクッと眉が動くが、桐谷の挑発には乗らなかった。
「やれやれやな。このまま行くと、君…この学園にいられなくなるんやで?」
「なに……?」
その時、校内の中からザワザワと人の声がする。
流石に暴れすぎたのである。
一般生徒はもちろん、教師達も集まり出していた。
「退学にされてしまうで?そんなん嫌やろ? 君の好きな強敵と遊べる機会もなくなるんやで?」
「……、……チッ……」
桐谷は構えを解いた。
そして、「次あった時は決着付けてやる」と言ってから、その場から立ち去った。
「次は案外近いかもやな。楽しみにしてるで、狂犬君。俺らも帰ろう」
「はい」
生徒会の二人もその場から去った。
次回へ続く!!
どもども、焔伽 蒼です!
未だちゃんと決着の着かない生徒会激突編ですが、後にちゃんと話をまとめますので少々お待ち下さい。
本作は結構長いのですが、もしテンポを上げてほしいや、ストーリー構成等で要望がありましたら是非言って下さい。近づけるように努力をしますので!




