【第31話『思い出と気持ちの暖かさ』】
本日、的場雪篇最終回です。
【5月21日(木)・20時45分『桜木町みなとみらい・横浜第三コンテナ倉庫』】
雪は自作爆弾を投げた。と思ったが、それは不可能だった。
投げる前に一発の銃声が鳴ったからだ。五十嵐は雪がポケットから何かを取り出す仕草をした時、「動くなと言ったのに動きやがった!舐めやがって…ッ!」と怒りが頂点に達し、ついマカロフを放ってしまったのだ。
雪にとってその時間は長く感じた。自分に目掛けてくる音速級の弾丸。避ける術はない。
色々なことを思い出す。特殊な環境で育った幼少時代。光司との出会い。彩香と言う本当の親友が出来た時のこと。様々な想い出が頭を駆け巡る。
━━━これが走馬灯かぁ……。てことは、僕死ぬんだよね。……やだなぁ……まだ何も恩返し出来てないよ……。どうせ死ぬなら光司くんに私の想い、知ってもらいたかったな~……彩香ちゃんとも、もっと遊びたかったよ……
瞳から雫が地面に落ちようとした━━━その瞬間、雫が何かの圧に当てられたように弾け飛ぶ。
その何かが雪の真横を通り過ぎた。
その瞬間、バキャン!と何かが目の前の虚空で砕け散った。
「これって……」
それは矢だった。凄いことに、その矢は1000キロで飛んでくる銃弾に目掛けて行き、衝突して互いに相殺しあったのだ。
どれだけの技量と、その技量を100%に発揮する武器が必要なのか。常人では不可能だろう。しかし、雪は知っていた。これだけの技を持っている存在を。この技に「相乗射ち」と言う名が付いていることを。
「さ、サヤヤン……?」
そのアダ名を再び呼べるとは思わなかった。何せ走馬灯まで見たのだから。
振り返った遥か後方には、親友である九条彩香の姿があった。
「大丈夫だった、雪ちゃん!?」
「うん……うんっ」
雪の瞳から涙が零れ落ちた。彩香が助けてくれた。凄く嬉しかった。しかも……彩香の隣には、あの人の姿もあって━━━ついに雪は声を上げて泣き出してしまった。
腰が抜けたように、地面に膝をついてみっともなく泣いてしまう。恥ずかしいから涙を止めたいのに、こんな姿見せたくないのに、二人が来てくれた安心感と今まで張り詰めていた緊張感や恐怖感が抜け、ただただ泣くことしか出来なかった。
光司達も思う。
雪が泣いている。それは1年振りに見た光景。普段弱味など見せない雪が泣くのは、それだけ追い詰められていたと言うこと。それこそ普通の人なら自殺するような程に。
だからこそ光司は彩香は“怒って”いた。
光司が雪に近付き、優しく頭をぽんっと置く。
「ぐすっ……光司…くん…?」
「後は任せろ」
変わらない。去年職員室に雪の虐めを仲裁するために魅せたあの時の瞳と。
強く真っ直ぐで、優しい眼をしている。
雪は胸が熱くなっていき、鼓動が高まっていく。
━━━ああ……やっぱり私は光司くんのことが好きだなぁ。
雪の心にも変化が起きていく。そんなことを知らない光司は、五十嵐の方に向き直り歩いていく。
「俺の親友が世話になったようだな。五十嵐」
陽気な言葉に見えるが、その発言をする鋭い眼とドスの効いた声色に、五十嵐は言い様のない恐怖感を覚えた。
だが五十嵐は手に持っているモノを確認すると、絶対的な自身が満ちてきて直ぐに余裕さを取り戻す。
「オイオイ、誰が動いて良いって言ったよ?一之瀬光司!」
マカロフをチラつかせながら脅しをかける五十嵐。これで光司もおとなしくなるだろうと踏んだが、そうはならなかった。
「撃ちたければ撃てよ……どうせ俺には当たらないからよ!」
光司は走った。その行動に五十嵐は驚嘆した。
(何でだ!何で奴らは動ける!)
さっきの雪の行動や、今の光司の行動のことを言っているのだろう。
(普通、銃口を向けられたらビビるだろ!動けない所か命乞いするのが一般の反応だろう!)
やがて焦りは怒りへと変わっていく。
「舐めやがって…ッ!」
その瞬間、ドォゥン!と銃弾が放たれた。しかし、光司は回避しようともせず走る。
核心があるからだ。この銃弾は当たらない。なぜなら━━━
シュォッ
風を切るような音がする。彩香が放った矢は、再び銃弾に衝突し相殺される。
「なっ……!?」
「相乗射ち…。皆は私が守る!」
これが光司の絶対に当たらない核心だった。
どんな銃弾も、彩香なら全部撃ち落としてくれるだろうと言う信頼があるからこそ、真っ直ぐに回避動作をすることもなく足を進めることが出来た。
「馬鹿な!銃弾を撃ち落とすなんて、そんなっ!」
「昼は手加減してやったが、今は手加減無しだ」
五十嵐の懐に入り込んだ光司は、重心を両足に集中させ、地面に足を固定させた状態で両手に気力を集中━━━
「八卦無天流『双天手』!」
五十嵐の胸に触れた光司の両手から気力と衝撃が放たれた、その勢いに五十嵐は悲鳴をあげながら飛ばされていく。
ガシャァン!!
「ぐはっ!」
五十嵐はコンテナにぶつかり、衝撃のあまりにコンテナがへっこむ。
そのまま五十嵐は口から血を吹いて倒れた。
「……」
雪が唖然としている。何かを言わなきゃと考えるが、言葉が見付からない。
「無事で良かったっ」
「ひゃぅっ」
雪がやっと出した言葉がそんな可愛らしいものだった。それは光司が雪を優しく抱き締めたからだ。
きっとそれには深い意味なんてない。友達としての意味しかないだろう。だけど、それでも、雪は光司に対する気持ちが確かなものになっていた。
(暖かい……これが光司くんの温もり……心も身体も太陽のようにポカポカしている……私、やっぱり光司くんのことが好きだな~。もう我慢出来そうにないなぁ)
「……ねぇ、光司くん?」
「ん?」
「ありがとう♪」
ちゅっ♪光司の頬に優しい感触が伝わってくる。それは雪の唇だった。
「━━━! なっ! なっ!?」
光司は頬に雪がキスしていたことに気付き、頬がカァァっと紅潮していく。確かに嬉しいことなのだが、雪からそんな事をしてもらうことがあるなんて思わなかった。
「えへ♪しちゃったっ」
「し、しちゃったって!何のつもりで━━━!」
「ふふ♪さあ?何だろうね~」
雪はルンッとした足踏みで走り出す。
(今度からは“私”も積極的に行かせてもらうからね♪)
「お、おい!雪っ!」
ゴゴゴゴゴゴ!
「ハッ!?殺気!」
光司は振り向く。そこには九条が……いや、漆黒嬢様がいらっしゃった。
「き、キスしたよね!わ、わわ、私だってしたことないのに!」
「ちょっ、まっ!何を言ってるんだ!?う、うわぁぁぁあ!」
次回へ続く!!
どもども、焔伽 蒼です!
かっこよく決め切れなかった光司に慰みの拍手を。_____ありがとうございます。
そんなわけで的場雪篇どうでしたでしょうか?個人的には感動とシリアスで縛って来たつもりですが、すこしでも雪に感情移入して頂ければ光栄です。
ここで一つ解説をします。ここ何話かで使い分けてきた雪の一人称。僕と私ですね。これには意味があって、僕と言うときは友達としての態度で、私と使うときは一人の女の子としての態度になります。雪はここを使い分けて今後、接して行くみたいです。
次回からは生徒会激突編 後期です。戦いが多くなってきて+ギャグコメも増えて来ます♪では次回からも宜しくお願いします!
あと未来の彼方~FILE BOOK~ 未来の彼方~CHARA BOOK~
も定期的に更新しているので宜しくお願いします!




