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未来の彼方  作者: 焔伽 蒼
的場雪篇
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【第21話『藪(やぶ)から蛇』】

【5月21日(木)・11時55分『横浜開業学園・2-C』】



カリカリカリとシャーペンや鉛筆で、ノートを書き殴る音が教室内に満ちている。


いつもなら誰かしらが雑音を立て、先生の授業を阻害しているところなんだが、今日はただただ黙って授業に集中している。



「……」



教室には先生の講義の声だけが響き、そしてカチコチと言う時計の針を打つ音がやけに強調されている━━━気がする。


何だろう……この緊張感に満ちたクラスは。


何だろう……このクラスの連中の静かながらも激しい殺気を含んだ様子は。


慶太や天王洲さんが若干引いてるぞ……って、あれ?なんか、九条まで俺を睨んでいる?


もし、この殺気が俺に向けているようなら後悔することになるだろう。


この八卦無天流を極めた俺の技が炸裂する。



その時、カァァンコォォンと心臓に響き渡るような鐘の音が学園に響き渡る。


12時00分。つまり昼休みの時間だ。さあ来るなら来い!



ガタタタッ!



そして椅子を引きずるような音が一斉になる。


クラスのほぼ全員が鐘の音と同時に立ち上がった音のようだ。


そして、その全ての視線が俺に向けられて……って、こわっ!


皆目が赤く光ってる!?ものすごい獣の目だ!ライオンに睨まれたウサギもこんな気持ちになるのだろうか?

早くもさっきまでの威勢が失われて行く。



「やっと終わった……」


「さあ始めましょう」


「死の晩餐をな」


「雪ちゃんと光司君の関係……洗いざらい吐いてもらうわ!」


「一之瀬君!そ、その、ゆゆ、雪ちゃんと付き合ってるってホントなの!?」



口々に俺と雪の一緒に登校してきた事件を蒸し返すクラスのやつら。


しかも、九条までもが疑いの目を向けてくる始末。


しかし、今日の俺はいつにましてもクールだ。慌ただしい野獣(2-Cの連中)に取り囲まれようとも、俺にはまだ最終兵器(リーサルウェポン)があるからだ!


取り囲んだ何人かが俺に近付こうとする。そこで俺は懐(ふところ」)に手を伸ばした!



「これを見よ!!」



俺は声を大にして、懐から取り出した物にクラスの連中の視線を向けさせる!


すると動揺の声が各所で開かれる。



「そ、それは……まさか!?」


「うそよ!だって…だってそれは!」



皆の食い付きを確認して俺はシメタと思う!


そして食い付いている餌である“学食10周年豪遊券”を更にちらつかせる。



「フッ、皆わかってるじゃないか。この券の凄さを。そう、何を隠そう!これは学食が開業学園に設備されて10周年記念を迎えた去年の時にもらった1枚限りの引換券だ!」


「なぜ、それを光司がっ!?」


「そうよ!だって、それは10周年の日に10番目に注文をした人にしか渡されない限定お一人様用の待遇券の筈だよ!」


「いや……待って。もしかすると━━━!」



俺はニヤリと頬を(ゆが)ませる。



「そうさ!10番目に豚カツ定食を注文したのが俺さ!」


『な、なんだってー!』



皆が騒ぐ。よし!ここまで来れば、あと一押しと言った感じだ!



「この引換券……学食のメニューなら値段問わずに好きな物を10回分無料(タダ)になる優れものな訳だが━━━」



俺はその引換券を細くクルクルと丸め、内ポケットから取り出したシャーペンの芯入れに押し込む。



「━━━俺はこうする!」



ぶぉっと引換券の入ったシャーペンを廊下の外に投げ出す。

同時に俺を包囲していた獣達は一斉に廊下へ飛び出す。



「…ククッ…計画通り」



俺は夜○月すらも引く程の醜悪な笑みを浮かべる。



「クックック、バカな奴等め。さっきのシャーペンに押し込んだ引換券はフェイク!本物は俺の財布の中に大事にしまわれているのさ!」



俺は「さて……」と呟き、窓の方へ歩いていく。

慶太や天王洲さんが苦笑しているのが見えたけど、今はそれどころではない。


さっきのシャーペンを確認されれば、直ぐにフェイクだとバレるだろう。


そんな状態で、もし掴まったりしたら間違いなく()られる!そうなる前に俺はこの窮地から脱出しなければならない!



「て言うことでさらば!」



言うが早いか、俺は窓辺に足を置き、水を下へ流す為のパイプに捕まり、スルスルと下まで降りていく。


雪が心配そうに静止をしてきたが、俺は悪いと思いながらも遂に下まで降りきった。



「さて、ここまでくれば皆も追ってはこれないだろう。階段を使ってたら、時間かかるしな」


「それで、雪ちゃんと付き合ってるって言う話……聞かせてもらえるかな…?」



ビクッと俺は体を強張(こわば)らせる。


こ、この声……間違いない。



「く、九条さん……?どうしてこちらに?」



俺は奮える声で、真横から弓を右手に握る物騒な姿の九条に問い掛ける。


九条は軽く笑いながらも、左手が矢を入れている筒に延びているのを確認していっそう警戒する。



「一之瀬君の考えている事ぐらい分かるよ…どうせあのシャーペン、偽物なんでしょ? それに、はっきりと貴方の口から聞きたいの。雪ちゃんと付き合ってるの?それとも付き合ってない?」



どこか不安そうな表情も見て取れるが、俺は答えられなかった。


なぜなら、九条の後方から多数の男女が走って来ていたからだ!


くそ!もう見付かったのか!?しかも皆の殺気が凄い!怒ってらっしゃる!


一刻も早く逃げねば!



「わ、悪い!その話はまた後で!」


「!」



俺は慌てて逃げ出そうとする。九条を背に向けて、まさに足を踏み込もうとした瞬間だった。


カッと何かが俺の足付近の地面に突き刺さった。



「……(汗)」



ぶわっと嫌な汗が一気に流れ出る。

これは矢だ……、俺が逃げるための踏み込みをしもうとした地面に矢が突き刺さったのだ。


同時に寒気がする……俺は恐る恐る後ろを振り向くと……九条が顔を下に向けて、今までに感じたことの無いほどの殺気を放ちまくっている。


な、なんか紫色のオーラが見えるよ!?クラスの皆、脅えちゃって近付いてこないよ!?


そこで九条が口を開いた。



「……付き合ってるんだね……逃げるって事は、付き合ってるのがバレたくないからなんだね……」



顔を上げた九条の瞳には光がなく、どんよりとした暗く重い瞳が俺の目を捕らえていた。



次回へ続く!!


どもども、焔伽(ほとぎ) (あおい)です!


感想を下さった方々に感謝をしつつ、後書きを書かせていただきます。


地味に彩香にはある種の属性が備わっています。もう、分かっている方もいるかと思いますが多分ソレかと思います(笑)


次回は明日もしくは明後日に投稿します!

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