【第19話『雪のご奉仕は嫁さんレベル!?』】
【5月21日(木)・7時00分『一之瀬家・居間』】
良い匂いがしてきた……。食欲をそそる匂いが俺の鼻腔をくすぐる。
おかげで目が覚めた。
さっきまで寝ていたのか、視界がうっすらボヤけている。
目脂を手で拭い、布団から這い出ようとして━━━
ドサッ
━━━こけた。……いや、ころがった。わ、忘れてた。俺、ソファーで寝てたんだっけ。
布団から起き上がるような勢いだった為、ソファーと言うアンバランスな上では重心を支えることも叶わず、綺麗に頭から床へ落ちた。
ぶっちゃけ、結構痛かった。意識が跳びそうになった。起きた早々に眠るなんてごめんだぞ。
「……そういえば、雪の姿が見当たらないな」
確かに昨日の夜、雪が俺の手を握りソファーに顔を埋めて寝ていたはず……。
外を見ると曇っていた。今日雨でも降るのか…?できれば降る前には学校に着いておきたいな。
とりあえず雪を探して見るか。
俺はそう思いつつも匂いが気になり、ついでに台所の方へ行って見ることにした。
「お?匂いに釣られたお魚さんが一匹ぃ~!さぁて、本日のメインディッシュは“光司の刺身”で決定かなぁ?」
然り気無く言ってはいるが、実際にやったら団欒の食卓が猟奇殺人現場になるぞ。
雪のやつ、どうりでいないわけだ。朝食を作ってくれてたのか。
「悪いな、昨日に続いて今日まで飯の用意させちゃって……」
「ノープロブレム。一宿一晩の礼……と言うのもあるんだけど、昨日光司君が倒れちゃったじゃん? 少なからず私にも原因があるから、謝罪の意味も含めてね」
笑顔を見せてくれてはいるが、その笑顔はどこか無理していてぎこちないものだった。
そもそも、俺が倒れたのは日暮戦の時に壁に頭をぶつけたのが原因な訳で、雪は何も悪くない。
だけど、雪は頭が良い。それはもう本当に。開業総学年で1位の成績を記録し、マッドサイエンティストこと化学狂師の異名を持つ谷口の発明を手伝ったりもしているほどだ。
何より凄いのは膨大な情報量と、それを忘れることなく記憶している頭脳。もはや、常人の域を脱していると言っても良いほどだ。
その雪だ。俺が倒れた原因も本当は分かっていたのだろう。
分かっていて尚、自分にも責任がある言い方をしていると言うことは、きっとその通りなのだろう。
もちろん、俺には分からない。だからこそ気にするなと言ってやりたい所なんだが……それは言うだけ無駄だ。
雪は天才故か、自身が導き出した結論は絶対に覆さない。
いつだったかな。雪が転校生として開業に入ってきて間も無く、谷口と一度だけ口論になったんだよな。
……いや、あれは口論と言うより論争と言う表現の方が正しいか。
谷口はプライドをかけて、雪は結論の証明にかけて、丸一時間を使用した。その結果、勝ったのは雪だった。
あの時は驚いたもんだよ。谷口を口で負かすのだって初の筈なのに、実際は谷口が納得し、しかも雪を褒め称えたのだ。
衝撃的だった。それ以降かな。俺が雪と喋ってみたいという気持ちになったのは。…まあ、当時は他にも問題があったけど。
「さあさあ朝食にしよっ!そして登校準備だーッ」
「え?雪、お前登校準備出来てるのか?」
俺は素朴な疑問を浮かべる。
「着替えとかどうしたんだ?」
「ふっふっふ。こんなこともあろうかと、学校のロッカーに置着替えしておいたのさ!」
なるほど。置き勉ならぬ置き替えと言うことか。しかも、上手いこと置着替え等と言う語呂合わせまで作っている。更にはアナグラムを使えば、お着替えと言えなくもない。
「はなっから泊まる気だったってことか」
「そーとも言うかな~!」
まあ雪が突拍子もない言動をするのはいつものことだ。
それはそうと、俺の身体は正直だ。腹の虫が鳴いている。さっきから、旨そうな匂いを嗅いでいるんだ。
そろそろ限界だ。それを察してか、悪戯な笑みを浮かべた雪。
「それじゃあ、ご飯にしよっか♪」
雪が居間の机にご飯を持っていってくれる。
出されたメニューは、鮭・卵焼き・サラダ・豆腐わかめ入り味噌汁。和風な感じのおかずだ。しかも、一汁三食(汁物とメイン・サブのおかずに山菜が入ること)を見事に表したセット。
「お前、良いお嫁さんになるよ」
「それはそれは、ありがとうございます♪」
雪は照れた様子もなく礼を返してきた。
「そういえば千晴はどうしたんだ? いつもなら起きているはずなんだけど」
「あぁ、チハチ~(千晴)はサヤヤン(彩香)と一緒に学校へ向かったよ。何でも朝練に付き合うんだってぇ~」
「そうか。分かった」
朝練……?弓道のか。千晴のやつ本格的に弓道部入る気か。
まあ、武術家多しの開業でも拳法部なんてのは無いからなー。
さて、そろそろご飯を頂いて、俺も学校に向かうとしますか。
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【光司視点⇒彩香視点】
【5月21日(木)・7時15分『横浜・商店街通り』】
「彩香さんも、うちに泊まりにくれば良いと思います」
千晴ちゃんが私の顔をしっかり見て告げてきた……のは良いんだけど、私はただ顔を赤くして黙ることしか出来なかった。
「多分ですが的場さんは、お兄ちゃんに好意を抱いている訳ではないと思うんです」
そもそもこんな話になったのは、今朝6時00分頃に千晴ちゃんからメールで『おはようございます。彩香さん、お話しがありますので今日一緒に学校へ行きませんか?』と来て、私は『うん、良いよ(^-^) それじゃ6時30分に外で待ってて。私が向かうから』と言うやり取りをした。
それから合流して(とはいっても歩いて10秒程度の距離しかないけど)千晴ちゃんと一緒に学校へ向かったのだけれど、その途中昨晩に雪ちゃんが一之瀬家に来ていた事を聞いて、少し胸が苦しくなった。
だから作り笑顔で誤魔化そうとしたら、「無理しないで下さい。顔面蒼白って感じですよー」と看破され、以降千晴ちゃんからのお説教タイムが始まってしまった。
「聞いてますかー?」
「え?あ、ごめんね。聞いてるよ。 ……でも雪ちゃんが光司君に対して好意的じゃないとは思えないんだよ」
「どうしてですか?」
私の発言に千晴ちゃんは疑問符を浮かべているみたい。
そうだよね、同じ学校でも学年が違うから雪ちゃんの事をあまり知らないもんね。
深いところまで教えるのは雪ちゃんのプライバシーに関わるから言えないけど、表面的な部分なら良いよね……?
それには千晴ちゃんを信頼しているからと言うのもあった。
「雪ちゃんはね、最初から開業に居た訳じゃないないんだよ」
私は話した。雪ちゃんの昔のことを━━━。
次回へ続く!!
えぇ~と…。まず一言めにですが「ごめんなさい!!!!」。
昨日投稿するような発言を一昨日にしておいて、結局出来ませんでした!すいませんっしたー!
ぶっちゃけ創りながら寝落ちしていました!いや、マジです!
そして今朝起きて、速攻かつ丁寧に仕上げて現在投稿した限りであります!
えと。次回ですが雪のちょっとした過去が分かるので、少々お待ちくださいませ^^汗




