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未来の彼方  作者: 焔伽 蒼
生徒会激突編 前期
19/69

【第16話『昭和初期の旧校舎』】

【全体視点⇒光司視点】



日暮は立ち上がった。

俺の気力を込めた双天手をまともに受けて立ってくる奴なんて始めてだ……。


だが足腰がガクガク震えているし、少しフラフラな姿勢をしている。……効いてはいるようだな。



「あはは……、油断したなー……。さっかまで倒れていた一之瀬君がここまでのパワーを出せるなんてね……っ」



日暮は双天手を受けた腹部を右手で押さえつつ、深呼吸をした。



「僕も負けてられないよねぇ!?」



日暮は前進した。

苦しみからか、俺に対する怒りからかは分からないが、強い笑いを浮かべながら突っ込んでくる。


しかも、奴の構えが変わった!さっきまで掌打の構えだったのに、手刀の構えへと変わっている!

そのまま、俺の首もとに目掛けて手刀を放ってくる。しかも、かなりの気力が纏われている!まともに受ければ首の骨を折られかねないっ!


だが俺もあいつの事を気遣いはしない。九条に怪我をさせたんだ!気遣う理由がない!



「見せてやるよ……八卦無天流の真の技を!」



俺も両手を手刀の構えへと変える。これは八卦無天流の中でも比較的に殺傷性がある技だが……急所際外せば問題はないだろう!



そして双方の攻撃が寸前まで接近した━━━その時だった。



ジャラララッ!と鉄と鉄が絡み合った音がしたと思ったら、急に鎖が飛んできて俺達二人を縛り上げた。


そのおかげで、戦闘は強制中断された。



「!?」



日暮が焦った表情をしている……?

それに、この鎖……固いっ!足掻(あが)いても縛りが(ゆる)むどころか、より強く締め付けてくる…!


俺もだが九条も鎖を見て気付いた。微かだが、この鎖には気力が込められている。そのせいで固く、足掻けば強く締め付ける性質を得たのだろう。


一体誰なんだ……!武器に気力を伝達出来るのなんて九条の流派ぐらいだけかと思っていたんだが。


俺は鎖の先には放った者が必ず居ると確信し、鎖を目で追っていこうとした。


しかし、その意味はなかった。目で追わずとも、その鎖使いは直ぐに顔を現したのだから。


そう、日暮の後方から歩いてくる足音。そこに現れたのはニコニコと笑っていて、どこか不気味さを(ただよ)わせる女性が立っていた。



「あらあら、喧嘩はよくありませんわ」



お嬢様口調で語ってきた女性、茶色に染められたショートヘアにウェーブをかけ、一般の生徒とは違うブレザーを着用していて……何よりも腕には“粛正”の二字が書かれた腕章が付けられていた。


間違いない……この女子も生徒会だ。俺と日暮を縛っている鎖も、女性の両袖から飛び出している。



「また気力使いかよ……どうなってるんだ、生徒会は」



俺の方を見ると、彼女はニコォと黒い笑顔を向けてくる。

寒気すらも感じさせるその笑顔は、日暮の純粋な楽しさからくる笑顔とは違い、どこか作りっぽいと言うか裏のある笑顔だった。



(わたくし)、生徒会会計『泉堂茜(せんどう あかね)』と申します」



俺と日暮の鎖を解いてから、丁寧にお辞儀までしてくる所は日暮とは違い、話し合いが出来るか……?


俺が「なあ……」といいかけた所で泉堂……さん?は、日暮の方へ歩み寄る。



「ひぅっ!」ビクゥ



……ひぅ?気のせいかな…もしくは夢…?日暮から変な声が聞こえた気がしたが。泉堂さんが日暮の方へ歩き出したとたん、身体を震わせて小さくなってしまっている。


いや、気のせいではないな。まだ背中が痛んでいる。さっき吹っ飛ばされた時に、背中を強打したからな……。夢ですらない。



「日暮さん、確かに私達(生徒会)は一之瀬光司とその仲間に目を付けましたが、まだ様子見の段階の筈……挨拶等と言うから、警告でもしに行くのかと思えば、決闘ですって?しかも、挙げ句の果てには本気を出し、その結果これだけの校内破損被害を出すなんて……」



……。ああ……日暮がついに壁に追い込まれ、背中を丸くして小さくなってしまっている……。

さっきまでの戦いを遊びのように楽しんでいた日暮はどこへ行ってしまったんだろう。


言うならば空き地で調子こいてボール遊びをしていたら、向かいの家宅に投げ込んでしまい窓を割って、そこのおっかないオッサンに怒られてしゅんとしてしまう子供のようだ。



「損害賠償とかどこから出ると思います?我が学園の財布、つまり会計である私が処理しないといけませんのよ?そこのところご理解頂けます?」


「……はい……」



な、なんて小さく弱々しい返事!?



「分かっているのでしたら、何か言うことがあるでしょう?」


「すいませんでした……」



(みじ)めを通り越して哀れみすら感じる。最早、さっきまでの日暮に対する怒りもすっかり無くなってしまった。よく見たら九条も頬をちょっと切ったぐらいだし……。


素直に謝った日暮、それに対して泉堂さんは笑顔で言った。



「許しませんわ。許して欲しいのでしたら犬の泣き真似でもしてごらんなさい」



な、なんと言う鬼……いや、女王!女王様だ!



「……わん」



落ち込んだ様子で小さく犬の泣き真似(?)をする日暮……、ヤバい…なんか涙が出てきた。


日暮……もう見てられないよ。

あぁ、九条なんかハンカチを取り出して、渡すべきかどうか迷うほど同情しちゃってる。


で、でも、なんで日暮は泉堂さんにあそこまで素直…いやビビっているんだ?



それにさっきの鎖…どこから出した?そしてどこに閉まった?いつの間にかに無くなっているぞ。

あんな長くて重いものを、あの華奢な身体で扱っているのも不思議だし……泉堂茜、謎に包まれた女性だ。

すると泉堂さんはこちらを視野に入れるなり、ペコリと頭を下げてきた。



「皆様、この度は生徒会のメンバーが、多大なご迷惑をお掛けしましたこと申し訳無く思います。ですので、ここに謝罪を表明します。すいませんでした」



な、なんて、完璧過ぎるほどの丁寧な謝罪……!心打たれる思いとなりつつも、彼女は繋げて言葉をいい放つ。



「それでは私達はおいとまさせて頂きますが……2年生“一之瀬光司”さん、同じく2年生“九条彩香”さん」


『はい……?』


「中々お強そうで何よりですわ。しかし、あまり目立った事をしていますと、私達も“粛正”の二字に従い、今度は別な形でお伺いする事になると言う事をお忘れなきようお願い致しますわ」


『……』


「分かって頂いているのでしたら構いませんわ。それではごきげんよう。……あ、それと私達は全員、気力使い(ウィアユーザー)なのであしからず」



泉堂さんと日暮は廊下の奥へ消えていった。

最後の泉堂さんの笑顔には、僅かながらに殺気が込められていた。俺や九条もつい警戒心を高めてしまったが、何とかこの場は平和的に終わることが出来た。



「大変なことになっちゃったね……」


「あぁ……(生徒会…いや、粛正委員会…厄介なのに目をつけられたな……)」


生徒会は五人……あれだけの人材が他にも三人居るとなると、俺だけじゃ相手に出来ない。


しかも全員が気力使い(ウィアユーザー)だと!?

一斉に襲われたら勝ち目が無いぞ……!



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【光司視点⇒全体視点】



泉堂と日暮は今旧校舎にいた。


旧校舎とは開業学園創設時から1938年~1989年までの約50年間使用していた本校舎であったが、日中戦争・第二次世界大戦等と言う様々な戦争を潜り抜いた実績を持つわけだが、平成元年(1990年)になるとPTAの意向により老廃化した建物の建て直しを要求された。


だが、校長は「嫌じゃ、歴史は宝、宝は後世に伝えるもの、故に取り壊しは認めぬ」の一点張りで結局、新たに校舎を建てようと言うPTA側が折れる形で創られたのが、現在の生徒が使う新校舎となるわけだ。


ただし、基本的に旧校舎は出入り禁止をされていて、実は扉が一個もないのである。生徒が面白半分で入り込んだり、エスケープスポットにまでなっていた為、平成4年10月24日を持って扉は硬く固定され完全封鎖された。


唯一、関係者や点検業者が入る為に出入りは一つだけある。

それは新校舎、現在では本校舎の二階中央位置にある渡り廊下を使えばいいのである。


しかし、この渡り廊下の旧校舎へ入るドアには電子的セキュリティが施されており、特性のIDカードがなければ開かないのである。


なぜ一高校にここまで完全封鎖された旧校舎があるのか、それは生徒の中でも有名であり、様々な仮説が作られていたりする。いわゆる学園七不思議のようなものだ。



そんな旧校舎に生徒でも関係者として入ることが許されているのがいる。それが生徒会━━━いや、粛正委員会だ。


さっきまで戦っていた三階の廊下から、階段を降りて二階の中心部分にある渡り廊下を渡り、泉堂がIDカードを切り開閉する。



もう日も完全に暮れている為、電気が点かない旧校舎は闇に包まれ、いかにも幽霊等が出そうな雰囲気を醸し出している。


二人は幽霊なんて気にしない。暗闇に包まれる長い廊下を歩き、木造作りの床がミシミシと音を鳴らし、周りの窓などはガムテープ等で補強されている様は、戦争時代の壮絶さを物語っていた。


そんな廊下を突き進むと、そこには初等科学級は一階へと指示する看板が見えてきて、その側に階段があった。


この旧校舎は元々、12歳までの男女が使う初等科専門のものだったが、1947年に学校体系(学校教育法)が代わり、中等高等も導入することになった。


なので初等科学級・中等科学級・高等科学級の三学級が存在しているのである。


全二階建ての旧校舎の内、一階が初等科・教職員専用となり、二階が中等科・高等科の専用となっていた。


その階段を泉堂と日暮は降りて、一階にある「職員室」へと向かう。



「ちゃあんと、会長に謝罪するんですよ?良いですわね?」


「僕は悪くないのに……」ボソッ


「何かおっしゃいまして?」


「なんでもないです、すいません!」



相変わらず日暮は、泉堂に頭が上がらなかった。


そもそもなぜ日暮は泉堂を恐怖しているのかと言うと、日暮が生徒会に入った頃、同時期に入った泉堂の強さを感じ取り対戦を申し込みコテンパンにやられたのが原因である。


まぁ、それはそうだろう。

泉堂は真剣に戦う時も“笑顔”なのだ。


あの歪みのない笑顔に武器。そしてその武器を手足のように扱い、躊躇なく敵に攻撃するその性格(キャラ)

それらが日暮にとっては心傷(トラウマ)になっているのである。


それはさておき、二人は教室の中に入ると。



「お、来た来た。待ってたんよ、日暮」


「会長……、と皆」



生徒会の残りメンバー「天草荘司」「荘園時雨」「五十嵐飛鳥」がいて、いま到着した「泉堂茜」「日暮垣内」を含めると全生徒会メンバーが集まった。



次回へ続く!!


どもども、焔伽(ほとぎ) (あおい)です!


なんとか今日更新できました。今回で日暮戦は終わりましたが、まだ決着は着いていません。またどこかでぶつかる可能性はありますね。


そして次回からはコメディに戻ります。少しコメディした後に、またバトルになります。

今後も宜しくです!


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