【第14話『気力使いの戦い』】
飛んでくる気力の弾丸。その余波のせいで、辺りの窓ガラスが割れていく。
俺は仕方なしに今までとは違い、ジャンプして大きく避けた。
何とか気弾を交わすことに成功したわけだが、……まさか、気力を飛ばしてくるとは。
気力と言うのは、本来身体向上の為の戦技。それを武器そのものにしてくる技なんて、八卦無天流でも無いぞ……。
いや…今はそんなことより…。
辺りを見回した。周囲の窓ガラスは見事に割れていた。
この状況をどうするかな。停学、下手したら退学も有り得そうで怖い。
さっきの音もだが、これじゃあ人目につく…。
ここはやっぱり、早々に片をつけた後、この惨状も片付けるしかないか。
日暮は俺の様子を見て何かに気付いたように笑う。
「どうしたの?余計な心配はする必要ないよ。今は僕との戦いに集中してもらうよ!」
!? あの構え…さっきの技の!
日暮はまた両手を前に突きだして、何かを掴む仕種をする。
恐らく気力を掴んでいるのだろう。だけどこの場合、掴むと言うよりは気を凝縮して溜めてると言った方が正解かもしれない。
そしてさっきと同じように、両手を一旦後ろに下げ、右足に力を入れ、その両手を掌低のように押し出す。
そこから再び放たれた気弾は、ガラスの破片を巻き込みながら凶弾となって襲い掛かってくる。
「今度はさっきまでと違って気力だけじゃないから気を付けてね」
他人事のように言いやがって。横にジャンプした程度じゃ、余波の風によって引っ張られてくるガラスの破片が襲ってくる。
仕方ない、多少痛いがドアを体当たりで突き破って側の教室ん中に飛び込むか!
そしてドアを突き破る為に足に力を込めて踏み込もうとした━━━
「一之瀬君、大丈夫!? 何か一之瀬君の気を感じたんだけど……っ!」
「!?」
「僕の勝ちだね」
バカな……!なぜ九条が居る!戦いに集中していて気配に気付けなかった!
今の勝利宣言……日暮は気付いていたのか!
いや、それよりも九条が気弾に当たってしまう!
俺が避ければ、なぜか気弾に気付いていない九条に……残る手は━━━!くそ!ここまで見越しての攻撃だったのか…っ!
俺は避けるのを踏み留まり、九条を庇うために気弾の前に立つ。
一か八かだ!せめてガラスだけでも何とかしないと!
「一之瀬く━━━!?(何かが飛んで……え?)」
俺は気を右手へと集中させていく。凝縮した気を掴むような感じで留めていく。
す、すげぇ神経使うな!だけど、同じ人間である日暮にも出来たんだ!俺だって出来る筈だ…っ!
(あの気の集束……まさか僕のを見ただけで?)
このぐらいか!?俺は大体の予測で気を集中させた右手を掌底の容量で突きだす。
すると気弾とは行かなかったが突風のような圧が飛んでいき、気弾の後方から迫りくる余波を相殺させることが出来た。
ガラスの破片は乗る波を失い、重力の法則に従って廊下に落ちる。
やった!これで最悪な事態だけは防げる。九条にも危害が及ぶことは━━━
その瞬間、相殺仕切れなかった本命の気弾が俺の腹に当たる。
そのまま勢いに流されるまま、廊下の突き当たりの壁まで吹き飛ばされ、激しく衝突した。
「がはっ」
俺はそこで腹と背中の激しい痛みに悶絶し、意識を失った。
【光司視点⇒彩香視点】
「え……?」
私は時間が停止したかのように、身体を動かす事が出来なかった。
一之瀬君を探そうと本校舎に来た私は、突然三階の窓が端から順番に割れていくのを目撃して、先生を呼びに行こうとした時、一之瀬君の気を感じたので、心配になって急いで校舎に入った。
いつもより弓と矢が重く感じながらも階段をかけ上がり、やっと三階について一之瀬君の無事な姿を確認して落ち着いてしまった。
それがいけなかったのかもしれない。一之瀬君の気を探っていたから、もう一人の存在に気付けず、最後の安心感から気を張るのを解いてしまい、目の前まで迫っていた攻撃に気付くのが遅れてしまったから。
そして、一之瀬君が私に気付いて、庇うように見えない攻撃を食らってしまい奥まで飛ばされてしまう。
動かない身体に対して思考ははっきりしているせいか、そんな分析が出来ていた。
だけど、私は今すぐに一之瀬君の元へ行きたい!
さっきから反応がない……このままじゃ死んでしまうんじゃと不安な気持ちが出てくる。
そんなの嫌だよ……もう大切な人が死ぬのところなんて見たくない・・・!
そう思った瞬間、身体の硬直が解けて動かせるようになった。私は名前を呼んで、すぐに一之瀬君の元へ走った。
「一之瀬君!しっかりして!大丈夫!?」
「・・・・・・」
……うそ……。
なんで返事しないの?なんで目を開けてくれないの?
私は胸が張り裂けそうな痛みに捕らわれる。
目の前に倒れている一之瀬君を見ていると、その痛みはどんどん増していき、他にも心が熱くなっていくのが分かる。
どうしてこんなことになったの? あの人はだれ? あの人がやったの? 一之瀬君をこんなにした人……許さない…許さない…!
私は目から涙を溢しながらも、廊下の先に居る男性を睨む。
「許さないっ!」
私は気付くと弓を背中のカバンから取り出し、矢すらも装填していた。
「何をするつもりかな?友達の敵討ちなら止めといた方が良いよ。君のようなちょっと弓道かじった程度じゃ……あれ?ひょっとして君、九条彩香?」
「私は貴方の事を知らない!」
いつでも矢を放てる状態で、その男性に向かって叫んだ。
男性はハッとしたような顔をして、ポケットから何かを取り出した。
(あれって腕章……?)
遠くてよく見えなかったけど、腕章だと言うことだけは分かった。
男性は腕章を右腕に付けだす。
「自己紹介が遅れたね。僕は日暮垣内。生徒会だよ」
生徒会?うそ……何で生徒会が一之瀬君に危害を━━━。
生徒を代表するような人がなぜと疑問を感じた……だからこそ、私は怒りの感情が沸いてくる!
「あれ?何か怒ってる?それはおかしな話だよ。だって僕らは合意の上で勝負して、彼は僕に負けた━━━」
「うるさい!一之瀬君は負けてない!『鏃』!」
私はこれ以上、一之瀬君が侮辱されることが我慢出来なく、筒から取り出した特殊な矢を射る。
その矢は回転しながら50㎞近い速度で飛んでいく。
「……!」
さっきまで笑っていた日暮さんが、血相を変えたのが分かった。
矢はギリギリで交わされたけど、頬をかすったみたいで血がにじみ出ていた。
(速い!気力を纏わない矢で、ここまでの速度を出すなんて……!流石は女性にして唯一の“四武生”になった女性だけはあるね・・・)
日暮さんは切った頬をさすって笑っている。
戦いを楽しんでいるの……?嫌な感じを懐きながら、私は新たに矢を装填した。
次回へ続く!!
どもども、焔伽 蒼です!
日暮戦ですが、もうちょい続きますね。今後はこういった何話かに分けて行われる戦闘が増えて行きます。
あとはそれぞれのキャラにも過去編を作ろうかと思っています。
とりあえず次回は彩香vs日暮です。タイトル名ではありません(笑)




