【第8話『気とサッカー試合 前編』】
開業高校のグラウンドは特別大きい。
横浜は都会の為、住宅街の多い市街地となっているので、基本的には広いグラウンドを入手する事は出来ない。
しかし、開業学園はまだ土地に余裕があった昭和初期からあるため、グラウンドのみならず学園全体の面積がでかい。
グラウンドもおおよそ380mあり、横浜一の大きさだ。
ちゃんとした公式試合すらも、半分ずつに活用すれば、一つのグラウンドで二種同時試合が出来る程である。
今までよく土地を護り通せたと思うよ。鐘もだけど。苦情とかどう対応してたんだ?
そう言っておきながらも、このグラウンドに関しては俺達も特をしている。
何せ俺や慶太が試合で本気を出せるからな。狭いと被害が出るから加減が必要だが、これだけ広いと思う存分にやれる!
俺を中心に他のメンバーが着いてくる。慶太にはキーパーを任せている。普通なら俺がキーパーで、慶太が前衛に配置するのが適材適所だと思う。
しかし、それをしないのには理由がある。
俺も前衛に出たいからだ!しかも、ちゃんとじゃんけんと言う正式勝負で順番を決めたんだ。誰も文句はないはずだ。
ただ疑問な点がある。桐谷だ。てっきり前衛に出てくると思っていたが、まさかキーパーのポジションとは……。
「光司!シュート決めてくれ!」
同じチームの吉田がパスを俺に回す。
さっきまで桐谷がどう出るのか様子を見ていた俺だが、パスが来た以上は仕方がない。
そろそろ試合に参加しよう!
俺は吉田からボールを受けとると、敵チームの奴等をジグザグに抜いていく。
そして桐谷の姿が見えてくる。
しかし、桐谷は構える素振りを見せない。ただ真っ直ぐに俺の方を、いや眼を見てくる。
寒気のようなものを感じる視線だ。だけど、何を考えてるかわからないが、これを取れるか!
俺はボールを蹴る。距離は8mぐらいはあるが、それでいい。これは変則球だ!
俺の放ったボールは、ゴール2m手間で右に反れる。入ったと思ったその時、桐谷はニヤリと笑い、そのボールを止めた。
「な……っ!」
俺は口を開けたまま閉じれなかった。
ただシュートを止められたのならいい。問題は今の動きだ。
人間と言うのはある一点に集中して視線を当てれば当てるほど、その一点に変則な動きが加わった時、どんなプロでも反応が遅れるものだ。
しかし、今の桐谷はボールが変則した瞬間に、その動きに合わせて身体を動かしたのだ。
そして最小限の動作でボールを掴み取った。
「光司のシュートを止めた!?」
「うそぉ……、これは驚きだね。光司君、変則シュートを初手で止められたの初めてじゃないかな」
慶太と雪が感想を述べる。コートの方を見ると九条や天王洲さんもいた。二人とも驚いた表情をしている。
そんな様子を見た桐谷は、またしてもニヤリと笑い無言でボールを俺の方へ転がしてくる。
そして、人差し指でチョイチョイと逆撫でしてきて━━━ほう?
「もう一発打ってこいってか?」ピキッ
(あ、一之瀬君が怒ってる……)
フッ……桐谷啓吾。貴様を俺を怒らせてしまった!俺はなぁ、敵の情けや挑発ってのが大っ嫌いなんだ!
「おお……、光司が怒ってる。こんなに離れた俺の所まで気が飛んできやがるよ……」
俺はこの挑発に乗る!そして後悔させてやるっ!
俺は三歩バックステップする。そして助走をつけて、脚に気を込める。そのまま一気にボールを蹴り放った。
ボールは気により通常とは異なる加速を付けていく。グラウンドの砂をかき起こし、風すらも切っていくボールを桐谷は今まで見下した笑いとは違った、悦びに満ちた笑いを作り正面からボールを受け止めた。
その圧力に桐谷は地面を押しずらされるが、ゴールネットにつく寸前のところで踏みとどまる。
ま、まさか、今のを止めるとは……。その場にいた誰もが驚く。今のシュートを止めるのは、最早ただのプロでは無理だ。
目には目を、歯には歯を、そして気には気をだ。
気、八卦無天流では練気功と言われている。これは気に流動的な運動を起こし、それを凝縮して身体の部位に纏う事で、並外れた爆発的な力を発揮させるものだ。
つまり、常人ではさっきのシュートを受け止めた時点で、激しく後方へ吹き飛ばされ、弱い者などは両手粉砕だって有り得るんだ。
それを桐谷は少しずらされた程度で踏み留まった……。
武術の心得がある者、特に気を扱える者にとって今の現象は驚嘆の他ない。
そして考えられる答えは1つ━━━
「桐谷、お前も気を扱えるのか?」
そう俺は問い掛けると、桐谷は笑い始めて口を開いた。
「クク、以外にもテメェラと戦れるって聞いて来てみたらよォ。とんだ腰抜けかァ?」
「なに?」
俺はそんな挑発的な態度に内心カチンと来ていた。俺は殺気にも似た気を出して桐谷を睨む。
「なんだ、出来んじゃねェか!最初っから本気で来いってんだ!」
いま桐谷が言った本気と言うのは、気を使ってを意味していた。気を使っての本気ともなると、周りに被害が出かねないからやんなかったけど……、そこまで望むならやってやろうじゃないか!
気が高ぶる。空気すらも振動するほどの気。また、桐谷も気を練る、見た感じ気は両手に集中しているな。
「やっと本気か。なら、ここからは━━━」
桐谷が動いた。ボールを手に持ったまま、野球のような動作で投げ放った。
ギュォッ!と風を撥ね飛ばしながら直線状にに進んでいく。
ただの投げがこの威力……俺のチームは誰もボールを止められない。
「慶太!来るぞ!」
「ああ!全くなんつー腕力だよ!」
ドォウンッと言う砲弾のような音をしたが、慶太はそのボールを見事に受け止めていた。
痛そうな表情をしているがやはり、気が加わると並みではないなこの男は。
桐谷は楽しんでいる。
「ここからが本番だぜェ?」
次回へ続く!!
どもども、こんばんわ。
今回の話は前後編の形式です。そして次回で決着です。
今回から気と言う単語が出てきました。今後もかなり使われる設定でもあります。
しかし、桐谷は何の武術をやっているのでしょうね?
さて今回ですが、後書きはもう終わります。
ちなみにサッカーは1on1なので、先に一点入れたほうが勝ちとなります。活動報告にてキャラ紹介コーナー展開中ですので、よろしかったらどうぞ♪




