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随筆

怖い話エッセイ

作者:

 

 テンプレというものは、あればやはり便利だな、と思う。

 あまりに頼りすぎてしまった場合、文章を書く技術が向上しないという欠点があるものの、それを使うことによって、うまく物語の形がまとまってくれる。

 おそらくは、依存しない程度の適度な使用が好ましい、といったところなのだろう。

 いわゆる実話の体をとったホラーものの場合にも、そういった事情というのはある。その時、作者は適宜にテンプレを利用しているように思う。

 では果たして、自分はいかなる類いのテンプレを好んで使っているのだろうか?

 そんなことが少し気になったので、思いあたるところをざっと書いてみたい。

 まずは、どんなテンプレがあるのかというところから、始めてみようと思う。

 場所に関して。これには、廃墟、神社、墓場、井戸、異質な村、川原、山奥、封印された空間、などといったものがあると思う。

 次に人物。いわゆる視える人、いつもは穏やかだが事情を知ったとたん突如鬼の形相で孫にせまる祖父母、見事なまでに霊的現象に通じている住職あるいは神主、それとは真逆にオカルトに対して純粋なほど不感ないし無知な主人公、などなど。

 小道具。これには、お札、しめ繩、鏡、髪の毛、爪、お面、人形、箱、使途一切不明の小物などなど、いかにもいわくありげな物が挙げられる。

 さらに個々の仕掛けに関して。閉めたはずの襖や扉がなぜか開いているか、逆に開けておいたはずのものが閉じている、不可解にかつ良いタイミングで意識を失う、様子を見にいった友人が戻らぬうちに事が起こる、無知な主人公が禁忌に触れる、平凡な大人の激変する態度から主人公が事の深刻さを理解する、巫女らしき人物が意味深な助言をする、かゆいところに手が届くように住職やら神主やら霊感のある知人やらが霊的事件に対処する、などなど。

 そして、これら以外にも話を盛り上げるための独特な言い回し、言葉というものがあったりする。例えば、まがまがしい、祟られる、霊感、そっちの人、獣道、立入禁止、特殊な擬音、奇妙な漢字、それとなく伏せられた地名など、一定の文脈の中で効果を表す言葉だ。

 他にもいろいろあるとは思うが、ざっと挙げてみた。いずれについても、機会があったら是非使ってみようと思っているものばかりだ。

 だが実をいうと、これらの中には、自分としてはあまり許容できないものも含まれている。

 ただ、それは頭ごなしにまるっきりだめだというわけではなくて、こういった話の流れで、そしてこの場面でそれっていうのは、ちょっと萎えるかもしれないな。といった具合に、いくつかの条件がおり重なった場合において生じてくる事象のようだ。

 具体的にどうなのかというと、それは個別の話になってしまう。だが、それらに共通して懸念のようなものが現れてくることがあって、それが起きるのはおそらく、ご都合主義のにおいを嗅ぎ付けた時なのだと思う。

 これは他の人の文章を読んでいる時にというよりも、むしろ自分の文章を読み返した際、痛切に感じてくるものだ。

 もっとふさわしい展開があることに心のどこかで気付いてはいても、それを文章にすることができず、身悶えしたりする。

 あくまで怖い話を書くことが目的なわけであって、そのためには、少なからず現実感を担保しなければならないという条件が付く。この時、その条件から大きく外れるような話の展開というのは、なんというか、全体のまとまりを著しく損なってしまうのだ。

 だが、その一方で、怖い話には遊びが入っていても良いと思う。

 例えば先に挙げたように、なぜか霊の世界に通じている住職やら神主やらの存在とか、あるいは困った時のお札、盛り塩、お経だのみだとか、肝心な部分で意識を無くしてしまっているだとか、およそ現実的な思考では疑問を抱いてしまうような事柄に関してだ。

 怖い話の魅力はなんぞやと問うならば、結局のところ、そういった曖昧な現象のうちにこそ、多くの要因が含まれていると思うのだ。

 ただ、実際自分で書いてみてわかったことだが、そのあたりのサジ加減については、なかなかに難しいところではあると思う。




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