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水の国の物語  作者: たくぼあき


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8/8

双子の姫君


 戦争続きで開発が進まず風の国には太古からの空間のがのこり水の国では姿を消した巨大生物が普通に野生下で生息して遭遇する事も多い。


だが水の国ではこういった巨大な竜と遭遇することは滅多にない。


人々は自然を愛してその魅力を満喫しようとするがすっかりその危険な部分を忘れているのだ。


5人の風の精の少年たちが、連携して竜の攻撃を防いだという話はあっという間にニュースになったが、水の国の国王陛下自らが、青龍という名前の剣を与えて「素晴らしい勇気だ。心から感謝する」と直々に少年達を労うとその活躍の話はあっという間に聞こえなくなってしまった。





ローレヌはおっとりと思う。

「あの緑色の瞳の男の子たちには何か秘密があるのではないかしら?」


 ライズはライズではっきりと思う。

「あのローレヌという姫君は一体なぜ火炎など出せたのだろう」


絡みあう2人の疑問。

もっとも、ライズのこの疑問はすぐに解けた。

彼の小姓の1人が

「ローレヌ姫は、国王陛下の一人娘ソフィーニ王女様の御息女です。ソフィーニ様は火の国の王族の方と結婚されて双子の姫君をご出産されたんです。ローレヌ様はその片割れにあたる方でお父上が火の精でいらっしゃるんですよ」

という情報を持ってきたからだ。

「火の精?だから火炎が出せたわけか。それに双子?」

「この国の地理学の講義に出た時に火の国との国境の話が出て教授の雑談として双子の姫君のお話もでたので学んだのです。ローレヌ様はあのとおりの水の精のお姿をされていらっしゃるけれどもう1人の姫君は、火の精霊のお姿でお生まれで、そのこともあって火の国に引き取られてお育ちだそうですよ。若様も一度講義にご出席になられては?」

 

 ライズは首をすくめて拒絶の仕草をする。 

 

 ライズは、色々と器用な少年だが難しい学問はどうにも不得手だ。


 自分は真ん中にいるが難しい事はそれぞれ得意なもの達が取りはからってくれたら良いとさえ思っている。



だが、ローレヌの事はなぜか心に引っかかってならなかった。

 火の国の王族の血を引いているからローレヌはあんなに勇ましく炎が操れるのか。

 そして、楽しそうにしていてもどこか物悲しそうな表情を見せることもある。

 初めて会った時、ローレヌは自分をみて何故か落胆したかのような表情を隠そうとしていたように思う。その理由が無性に知りたいライズだった。

 


 このようにライズ王子達一行は、水の国の王宮に預けられてキチジの支援の元、祖国の味方勢力とも連絡が取れ、まずは安定した破綻のない生活を送る事が出来ていた。


 皆留学生ということにして本当の身分は隠して学生生活をしている。


 水の国は世界中の国や地域から留学生を受け入れているから風の国から戦火をさせて避難した豪商の子弟という体で疑われた事は一度もなかった。


そうやって過ごして数年。

少年達は、すっかり成長して大人になりつつある。

 

 ローレヌ姫は外国の話を聞くことが大好きでよくライズに話しかけて彼の祖国についてあれこれ尋ねてきた。

 様々なことを問われてライズが思い出すのはまだ風の国にいた頃、一度だけ国王派と前王妃の母アマリエ派との間に条件付きに一時的な講和が結ばれそうになったことがあったことだ。


 ライズは、戦禍を避けて国外脱出している民間人ということになっているのでその当事者である事を隠しながらローレヌに祖国の実情をなんとか説明する。

 

味方の離脱が進み劣勢となった国王派が国王の娘オリナ姫をアマリエ陣営に人質として差し出して講和がなされるという話が出たことがある。

 その時ライズは10歳、オリナ姫は8歳だった。


オリナ姫の父は、ライズの父の弟

、オリナ姫の母は、ライズの母の妹。

父方からいっても母方からいっても従姉妹にあたる本当のきょうだいに近いこの姫とライズは少しの期間だけ関わりをもつ。

 

 人質として差し出された実の姪である幼いオリナを心優しいアマリエは、それこそ実の娘のように可愛がって世話をする。

 バル国王の第一王女の称号を持つオリナは大人の事情で自分の家族から引き離されてしまったのに、ヤンチャなライズと顔立ちはよく似ていたが中身はまるで正反対の素直でおとなしく周囲の大人のいう事をよく聞く子どもだった。


ライズとオリナと少し年上のラリの三人は、戦いのなか、大人ばかりに囲まれた子どもとして、遊び仲間のようにすごすことになる。

 

 もちろんライズは、王座奪還を目指す王継承権を持つ王子、オリナは一時的な講和の為に敵方に差し出された人質、ラリは王子の従者。という立場の違いはよく分かっていながらも。


そして幼い2人がちょうど似合いの年頃だったことから成長したあかつきには2人が結婚して王家を再び一つにしてはどうか、という提案が自然に発生したのも厭戦気分から無理からぬ事かもしれなかった。

 

この幼い2人が結ばれることで戦乱がおさまるのならば、と。

 もっとも、いとこ婚は風の国では一般的に禁止されているために、全ての風の精が信仰する風神の大神殿の神官に特別な神託の許可を得てのことになるけれど。


 成長したライズとオリナが対等な王と女王になり、2人の間に子どもが出来ればこの不毛な戦いは平和に終結するのではないかという儚い願いも込められていたかもしれない。

一つの王統にすれば平和に近づきよいのでは?という打開策の話まで出たほどだ。


だが、この幼い2人の結婚の話は双方の反対が強くあって不成立に終わる。

 

 ライズとオリナは夫婦となるには血が近すぎるしアマリエの夫を殺害された恨みとバルにも自分の息子がいるのに娘婿とはいえライズ王子に王統が戻ったのではクーデターの意味がない。

 バル国王は、実の息子に王位を譲る事をまず第一に考えていた。

 

 大切な一人娘であるはずのオリナを差し出して一時的な講和に持ち込んでも真の平和が訪れるはずはなかった。

 兵力的に優位なはずのバルの軍勢は戦上手なムラサメ将軍の攻撃に押されて講和を申し込んでおきながら

 国王軍は、人質を差し出して一時的とはいえ休戦状態となったアマリエ派の陣営を急襲したのである。

 


「風の国の王は、娘の命を軽んじて人質を見捨てる形で戦いを仕掛けた事もあるんだ。下手をすればオリナ姫は殺されるところだった」

とライズは説明した。


心優しいアマリエがその決断をくだすことはなく人質としての価値がないことからオリナ姫は親元に戻される事になり身柄を返還された。

そのあたりから両者の対立は益々激しく互いの不信は募っていく。

 

 国王は実の兄を殺害し実の娘まで見捨てようとする残忍な人物、人質を解放した元王妃アマリエは慈悲深く素晴らしい、国民としては残忍な王より慈悲深い統治者を望むものだ。


などなど自国について説明しながら遊び相手として親しくなったいとこの姫と離れることになりライズは寂しさを感じた事などを思い出した。


「とにかく、俺の祖国は皆が平和を求めているはずなのにその方策を誰も見つけられないんだ」

 

 風の国は、現在同じ種族が違う旗の下に二手に分かれて戦争をしているのだ。


「元王妃様は、冷静で気丈なお方だから国王の軍に決して屈したりしない」


「ライズは、どちらの陣営の味方になりたいの?」

 

 ローレヌには素朴な質問を向けられた。

「もちろん母上に決まっている!」

と即答できたらどんなに良いだろうか。


だが今は正体を隠さなければならない世を忍ぶ仮の姿。

不用意な発言は控えなければならない。


「元々この争いは一つの王家の争いだ。はやく戦いか鎮まり平和の時代がきて水の国のように発展の時代が到来することだけを俺は望む。遠くから願うだけなのが歯痒いのだが」

—あの俺の叔父にあたる男が俺の父上を理不尽な理由で殺害したことは決して許せない—

 彼が物心ついてから何度も何度も言い聞かせられたその話。叔父を憎むその思いは決して消えない。

「1日もはやく祖国にお帰りになりたいでしょうね。ライズ」

と、ローレヌが真心のこもる声で言えば

「当然だよ」

 俺は本来なら皆を率いて戦っていなければならなかったのに、という本心を押し隠しながらローレヌに不器用に微笑んで見せるライズだった。



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