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番外編 IFスキル神が起こしうるイベントのアイデア

 作中ではスキル神はイベントを起こさないですがイベントを起こすならどんなの?

 というifです。


 イベント名:『ことわり福音ロゴス・ゴスペル

【コンセプト】

 邪神が人類の「感情」や「倫理観」を揺さぶる物語を好むのに対し、スキル神は人類の「知性」と「探究心」が試される物語を好みます。このイベントは、人類に完成された技術(=奇跡)を与えるのではなく、その根源となる宇宙の「法則ルール」そのものを断片的に授け、人類が自らの力でそれを解読し、発展させていけるかを試す、究極の知的試練です。


【イベントの始まり方】

 やはり始まりは静かです。ある日、黒田が執務室で一人、世界の情勢に頭を悩ませていると、スキル神が姿を現します。そして、黒田に選択を迫るのではなく、ただ一方的にこう告げます。


『黒田よ。汝らが紡ぐ秩序の物語、興味深く見ておる。じゃが、あまりにも歩みが遅いのう』

『くれてやろう。ワシの庭に咲く、無数の花々の中から、ほんの一輪だけな。それは、お主たちにとっては猛毒かもしれんし、万能薬になるやもしれん。それをどうするかは、お主たちの知性次第じゃ』


 そう言うと、スキル神は黒田の額にそっと指を触れます。

 その瞬間、黒田の脳内に、人間の脳が処理できる情報量を遥かに超えた、膨大な「データパッケージ」が直接焼き付けられます。それは、映像でも音声でもなく、純粋な数式、幾何学模様、そして人類がまだ知らない概念で構成された宇宙の設計図の一部です。

 黒田は、その情報量の奔流に耐えきれず、その場で意識を失います。


【イベントがもたらす物語】

 ここから、人類の最も長く、最も困難な戦いが始まります。


 解読不能な神託オラクル:

 意識を取り戻した黒田は、自らの記憶の中に刻み込まれた、理解不能な「知識」に愕然とします。それは、現代最高の物理学者や数学者に見せても、「これは我々の宇宙の法則ではない」「この数式は矛盾している」としか言えない、あまりにも高次元な情報です。


 プロジェクト・ロゴス発足:

 黒田は、これがスキル神からの試練であると確信。IAROの総力を挙げ、全世界から最高の頭脳――数学者、物理学者、言語学者、哲学者、果ては芸術家や音楽家まで――を結集させた、超国家的プロジェクト「プロジェクト・ロゴス」を発足させます。彼らの目的はただ一つ、神が与えたこの「福音」を解読すること。


 英雄たちの新たな役割:

 この知的挑戦において、神崎勇気やジョシュア・レヴィンは新たな役割を見出します。


 神崎勇気: 彼の【スキルコピー】の本質は「概念の理解と再構築」。彼は、その超人的な認識能力を使い、神の数式という「異世界の概念」を、人類が理解できる形のアナロジー(比喩)やイメージへと「翻訳」する、重要なインターフェースとなります。


 ジョシュア・レヴィン: 彼の【絶対領域】は、物理的な攻撃だけでなく、あらゆる情報のノイズをも遮断します。彼は、解読作業を行う研究者たちの思考を、邪神による精神汚染や外部からの情報的ノイズから守る、完璧な「静寂の空間サイレント・ルーム」を作り出す守護者となります。


 邪神の妨害:

 当然、この「面白そうな知の探求」を邪神が見逃すはずがありません。彼は、研究者たちの前に偽の解読データを見せたり、彼らの夢の中に現れて「そんなものを解いても無意味だ」と囁いたりして、知的な妨害工作を仕掛けてきます。これは、物理的な戦いではなく、研究者たちの「探究心」そのものが試される戦いとなります。


 啓示レベレーションと発展:

 何年、あるいは黒田の世代では終わらず、次の世代にまで引き継がれるかもしれない、長い長い研究の果てに。人類はついに、その「福音」のほんの断片を解読することに成功します。

 例えば、それは「時空の泡構造に関する基礎理論」かもしれません。

 その理論を応用することで、人類は初めて、限定的ながらも安定したワープ航法技術や、無尽蔵のゼロポイント・エネルギーを取り出す技術を、自らの手で確立するのです。


【スキル神の真の狙い】

 スキル神が与えたのは「完成品の魚」ではなく、「究極の釣り竿の設計図」でした。

 彼が見たかったのは、人類がその難解すぎる設計図を前に、絶望せずに協力し、何世代にもわたって諦めずに挑み続け、そしてついに自らの力で魚を釣り上げるという、壮大な「知の探求の物語」なのです。


 一時的な勝利や奇跡ではなく、人類という種そのものが、知的生命体として次のステージへと「成長」する、その地道で泥臭い過程こそが、彼にとっての最高のエンターテインてメント。そして、それこそが邪神の「安易な奇跡」の物語に対する、最も有効なカウンターになると、彼は考えているのかもしれません。






 聖域都市ニューヨーク

 この「聖域化」は、おそらく人類単独の力では不可能でしょう。それは、スキル神による最後の、そして最大の「置き土産」として実現されるのかもしれません。


【聖域化のプロセス】

 きっかけ (The Trigger): 邪神(空木零)が、再びニューヨークの生存者たちのトラウマを弄ぶような、悪趣味な精神干渉を仕掛けてきます。あるいは、ニューヨークで生まれた『混沌の子供たち』に直接干渉しようとするなど、人類の「希望」そのものを汚染しようと試みます。


 スキル神の最後の助言: この動きを察知したスキル神が、黒田の前に現れます。しかし、力を直接与えるのではありません。彼は、かつてソーニャ・ペトロヴァが消滅したタイムズスクエアの中心に、小さな光の種子――『秩序のコア・オブ・オーダー』を残します。そして、こう告げるのです。『これはただの種じゃ。これを芽吹かせ、大樹へと育てられるかは、汝ら自身の力にかかっておる』と。


 英雄の自己犠牲: 『秩序の核』を起動させ、街全体を覆うフィールドへと拡張するには、膨大なエネルギーと、それを制御する強靭な意志が必要です。その役目を担えるのは、ただ一人。アメリカの英雄ジョシュア・レヴィンです。彼のスキル【絶対領域】は、あらゆるベクトルを制御する絶対的な防御壁。彼は自らの意志で、その能力を個人的な防御から、都市全体を守るための広域結界へと昇華させることを決意します。


 人類の叡智の融合: ジョシュアが結界の「心臓」となり、IAROと黒田のチームが、そのエネルギーを安定させ、維持するための物理的な巨大装置をニューヨークの地下深くに建設します。神の奇跡と人間の科学が融合し、ついに聖域は完成します。


【聖域化がもたらす物語の変化】

 聖域の完成は、世界の構造を根底から変えます。


 聖域の性質:神域拒絶結界

 このフィールドは、【秩序の呪印】のように全てのスキルを無効化するものではありません。その効果はただ一つ、「神」という超越的な存在の直接的な観測、干渉、スキル行使を完全に拒絶することです。


 邪神は、聖域の内側で起きていることを観測できなくなり、直接スキルを使うことも、人々の精神に囁きかけることもできなくなります。彼にとって、最も面白いテレビ番組のチャンネルが一つ、突然映らなくなったようなものです。


 内部では、人間のアルターはこれまで通りスキルを使えます。聖域は、あくまで「神の気まぐれ」から人間の営みを守るための壁なのです。


 世界の新たな分断

 聖域都市ニューヨーク: 人類憲章連合の事実上の首都となり、IARO本部や主要国の政府機能の一部が移転します。邪神の干渉を恐れる世界中の科学者、文化人、そして善のアルターたちが集う、人類の最後の希望の砦となります。


 外の世界: ニューヨークの外は、依然として邪神の観測下にあり、いつ彼の気まぐれな悪戯が始まるか分からない無法地帯です。カオス同盟も健在であり、聖域の外では代理戦争がより一層激化します。


 キャラクターたちの新たな役割

 ジョシュア・レヴィン: 彼は、もはや一人の人間として自由に街を歩くことはできません。彼は、ニューヨークという都市と一体化した「生ける結界」となり、常にその維持に精神を集中させなければならなくなります。街を守る絶対的な守護神であると同時に、自らは美しい牢獄に囚われた存在となるのです。その自己犠牲と孤独が、彼の新たな物語となります。


 神崎勇気: 彼の役割は、より明確になります。絶対的な「盾」であるジョシュアに対し、彼は聖域の外の混沌と戦うための、人類唯一の「槍」としての存在意義を確立します。聖域から出撃し、カオス同盟の脅威を排除し、聖域の外の人々を救う。二人の英雄の対照的な役割が、物語の大きな軸となるでしょう。


 空木零(邪神): 最高のオモチャを取り上げられた彼は、当然激怒します。彼は、聖域を直接攻撃できない代わりに、ありとあらゆる手段で聖域の外の世界をこれまでにないほど過酷な地獄へと変え、聖域にいる人間たちを外へとおびき出そうとするでしょう。あるいは、聖域の中にスパイを送り込むなど、より陰湿で間接的な攻撃を仕掛けてくるようになります。


 このように、ニューヨークの「聖域化」は、物語に「安全地帯」と「無法地帯」という明確な境界線を生み出し、キャラクターたちの役割を深化させ、邪神の新たな攻撃パターンを引き出す、非常に面白く、そして戦略的な展開だと言えるでしょう。それは、神のゲーム盤の上で、人間が初めて自らの意志で勝ち取った「陣地」なのです。

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