第10話 勝負の決着と人形姫の最後
闇が支配する玉座の間。メル・アリアの冷酷な命令が響き渡る。
「お前たち、爆弾を抱えて突撃しろ。私の盾となり、敵を蹴散らせ!死んでもいい、私を守れ!」
無表情の人間人形たちはまるで意思を持たぬ兵器のように、静かに爆弾を両腕で抱え込んだ。
その胸に仕掛けられた起爆装置が赤く点滅し始める。
「カウントダウン開始……3、2、1……」
突如として轟音が洞窟を揺るがす。
地面が震え、炎の柱が一気に空を突き上げた。
爆発の衝撃波は玉座の間を吹き飛ばし、破片となった人形たちが火の粉と化して空中に舞う。
激しい炎と黒煙が渦巻き、洞窟はまるで地獄絵図と化した。
その中で断末魔にも似た、かすかな呻き声が響き渡る。
「――ありがとう、みんな……」
「……もう、自由だ……」
燃え盛る火の海の中、次々と人形たちが崩れ、消えていく。
その壮絶な光景を目の当たりにし、ティリスは両手で顔を覆いながら嗚咽を漏らした。
「こんなこと、許せない……!こんなはずじゃ……」
エミリーも涙を流しながら震える声で呟く。
「彼らはもう、ただの操り人形じゃない…自我を取り戻していたんだ……それなのに……」
炎と煙の中、彼女たちの心には重い悲しみと怒りが刻まれた。
その一方で、メル・アリアは冷ややかにその場を見下ろし、まるで全てが当然のように振る舞った。
「人形は捨て駒なんだから当然よ。私を守るのが役目で、死ぬのも当然。」
炎の中に浮かぶ無数の影が静かに消えゆく。
ティリスはその場で歯を食いしばり、拳を握りしめて呟いた。
「こんなやり方…許せないわ。でも、今は彼らの自由を取り戻すしかない…」
エミリーも頷きながら、静かに言葉を続けた。
「もう、操り糸なんて断ち切ってやる。私たちの手で、彼らを救わなきゃ」
爆発の合図とともに、一部の人形たちが火花を散らしながら自爆特攻を仕掛けた。爆発が洞窟に轟き、炎と煙が舞い上がる。
だが、爆炎の中で、残った人形たちの目に徐々に光が宿りはじめた。
「私たちは…もう操られてなんかいない」
「自分の意思で…生きたい」
激しく燃え上がる火の中で、彼らは互いに背中の魔糸を見つめ合い、次々とその魔糸を引きちぎった。
ティリスが叫ぶ。
「もう誰にも縛られない!自由になれ!」
エミリーも続ける。
「みんな、立ち上がれ!ここで終わらせるんだ!」
「もう、あなたの道具じゃない」
怒りに満ちた人間の人形たちの反乱が爆発し、彼らはメル・アリアに襲いかかる。
「何を…!お前たち、私に逆らうなんて許さない!」
だが、逃げ惑うメル・アリアを、次々と人形たちは包囲し、その体を炎の海へと沈めていった。
爆発と叫び声が響きわたり、やがて静寂が訪れる。
燃え盛る炎の中、最後の人形たちが燃え尽きる前に、涙のように滴る木片の破片が宙に舞った。
メル・アリアは、その激しい反乱の中で命を落とした。
彼女の冷徹な命令も、最後まで変わることはなかった。
「お前たちは、私を守るために死ぬのよ!!!死ぬのも当然ああああああ」
その言葉は、燃え尽きた人形たちの魂に深く刻まれた。
燃え盛る炎が静まったその後、荒れ果てた玉座の間に、静寂が訪れた。
ティリスは涙をぬぐいながら呟いた。
「メル・アリアは…最後まで自分のことしか考えなかった。でも、あの人形たちは…自分の意志で立ち上がったんだ。」
エミリーも小さく頷きながら言う。
「操られていたのに、自由を求めて戦った。彼らの魂は、決して無駄にはならない。」
二人は燃え残った人形の破片を見つめ、深く息を吐いた。
「これで、この戦いも終わりに近づいたのかもしれない。」
生き残ったデフリーとコニちゃんと合流、エミリーとティリスは勇者アレスと戦う護の元へ援軍をするために急いだ。




