第7話 人形の姫と接近戦へ 作戦名:魔糸切断/インファイトスタイル作戦
玉座の間。
そこは、かつてホブゴブリンの王が治めた洞窟最奥の空間。
石造りの柱に囲まれ、天井には苔が生え、幾つもの魔法の光石が紫の淡い光を放っている。
湿った空気。
異様に静かな空間には、今や魔力の糸で操られた“人間人形”たちが立ち並び、
異様な光景を形成していた。
中央、玉座の前には、人形姫メル・アリアが立っている。
両腕を広げ、まるで操り師のように無数の糸を空中に浮かべていた。
対する魔族側の前衛には、
ハイリザードのエミリー
槍は雷属性を帯びた魔槍。
素早い踏み込みと連続突きが得意で、主に“広範囲牽制”と“突破役”を担う。
彼女の尻尾がゆらりと揺れた。
「ティリス、私は右から行く。人形を切り裂いて道を開けるわ」
アビスエルフのティリス
漆黒のマントをひるがえし、ティリスは静かに短剣を抜く。
それは魔力増幅短剣。
切れ味と魔力の伝導性を両立させた、対魔法戦に特化した一本だ。
彼女は腰のポーチから、幻影粉末を取り出して一言。
「左から回り込む。魔糸は脆い、でも…心がこもってたら、躊躇しそうになるかもね」
その目は鋭く、人間人形の奥に立つメル・アリアを見据えていた。
戦場には、ざっと見て二十体以上の“人間人形”。
そのすべてが、亡者のような無表情で立ちすくみ、魔糸で宙から吊られている。
ひとたび命じられれば、狂ったように襲いかかってくる。
さらにメル・アリアは、上空の岩壁に糸を張り巡らせ、空間全体を罠に変えている。
下手に動けば、絡めとられ、捕らえられ、操られる危険がある、そんな重圧。
それでもエミリーとティリスは互いにうなずき、静かに構えた。
「いくよ、ティリス」「ああ、やるしかない」
そして、息を合わせて、二人は左右から挟み込むように、メル・アリアの操る魔糸を断ち切る決死の作戦を決行した。