第6話 勝負の決着と天国への階段
刹那。
戦場の空気が震えた。
「――終ノ月閃」
黒月の剣士・ミカヅキ・ユウトは、深く腰を落とし、刃を下段に構える。
剣の周囲に、重力のような“闇”が集まり始めた。
それは“空間すら断ち斬る”必殺の大技。
一撃必殺の剣で幾多の強敵を、その一閃で消し飛ばしてきた。
「……お母さん、見ててくれ」
玉座に座る、あの“光の人形”が微笑む。
「がんばって、優斗」
「うぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
ユウトが地を蹴った。
その瞬間、重力がねじれたような衝撃が走る。
彼の体は宙を舞い、黒い刃が空間を裂きながら月の弧を描いた。
……が。
その瞬間。
「屁ぇっっ!!」
「ファイヤー!!」
ドォン!!!
唐突に、炸裂する“屁”の二重奏!!!
デフリーのオークの屁に、コニちゃんのトロールの炎屁が重なり、
それは――かつてないレベルの【音と臭気と衝撃】を伴った大爆発へと進化した。
「ぐっ、前が……!!」
煙と異臭が空間を満たし、月閃は目標を失う。
「しまった……」
その時だった。
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!フリスビー中華鍋!」
バァン!!
デフリーの投げた鉄鍋が飛んできて、ユウトの顔面に直撃。
「ぶごぉっ!!??」
「今やぁあああ!!」
コニちゃんが炎をまとい、鬼神のような炎の塊の突進でユウトにタックルをかます!!
ユウトの身体が空中を舞い、玉座の下に転がった。
そのとき――
「あ……お母さん!!」
ユウトの体当たりの衝撃で、玉座の人形が椅子から落ちる。
床にぶつかり、光の粒子が舞い上がった。
ユウトは、手を伸ばす。
「お母さんっ!!熱い 熱いよ!助けて、お母さん!!おれ、おれ……怖いよ……」
その瞬間、燃え上がった炎が、優しく包み込むように人形を包む。
炎で燃える人形が静かに語る。
「大丈夫よ、優斗……ずっとそばにいるわ……」
「お母さん……おれ……今度こそ、幸せになりたかった……」
炎に包まれるユウトの声が、かすかに震える。
――そして。
「天国で、幸せな家族に生まれ変わって……優斗……」
「熱くて焼け死ぬのは、可哀そう」
コニちゃんが、最後に――
聖なるトロールの炎で、二人の魂をそっと浄化する。
あたりに、暖かい風が吹いた。
光の粒が舞い上がり、二人の魂が天へと昇っていく。
「おかあさん……」
「……またね、優斗」
彼の姿は、もう、なかった。
ユウトの刀《朧月》が、
ゆっくりと地面に落ちる音だけが、
静かな戦場に響いていた。




