第4話 黒月の剣士の分析と最後の作戦
俺のゲームでの名は ミカヅキ・ユウト
通称「黒月の剣士」。
武器は、呪われし黒刀《朧月》
主な技は《月閃》と《影閃》
どちらも“高速突進からの一閃”が特徴だ。
威力・速度・奇襲性は高いが、問題はリーチと持続性。
「……俺の攻撃範囲は、精々“半径2メートル”」
「さらに、“連発は利かない”。一撃一撃が重いぶん、スタミナを食う……」
つまり、遠距離攻撃に弱い。長期戦は不利。
そして今まさに、目の前で繰り広げられているのは、
そんな俺を遠目からジワジワと疲弊させる作戦だ。
※※※
「うおおおおおおおお!!!」
また来た、あの炎トロールインフェルノのコニちゃんが遠距離から火の玉を投げてくる。
それを支援するように、背後からオークロードのデフリーが支援魔法と回復。
「なるほどな……逃げ回りながら、俺の体力を削っていく気か」
だが、何かが引っかかる。
“さっきから、あいつら……同じ通路を何度も通ってる”
偶然ではない。
しかも、出口のほうへは絶対に逃げない
逆に、ダンジョンの奥へと進みながら、確実に俺を導いている。
「まさか……」
頭の中で、点と点がつながった。
あいつら、俺の動きと攻撃範囲を知ってやがる。
それを踏まえたうえで、あえて
一本道の通路=“俺の技がもっとも有利に働く場所”へ、俺を誘導している。
「お前ら……逃げてるんじゃねぇ。俺のために“獲物”を連れてきてるのか」
玉座近くの一本道通路。あそこなら、敵の巨体は回避できない。
「やってやろうじゃねぇか」
ユウトは刀の柄を握った。
目に殺意の月光が宿る。
一方その頃:コニちゃんとデフリー
「なぁ、ほんまにやるの? あのクソ技……」
コニちゃんが顔をしかめながら言う。
「やるんや。護が言ってたろ。ユウトが斬りやすい場所に誘導するのが俺たちの役目やって」
「でもアレ、俺の股から炎と屁を合わせて出す、伝説の恥技でしょう……恥ずかしい」
「勇気を出せ!コニちゃん!世界を救うのは君の屁や!!」
「くっ……なんて 羞恥な作戦なの……!!」
2人はこっそりと最後の“合体技”の準備を始める。
そう、あの一本道へ導くための、決死の誘導作戦
名付けて【終焉の爆炎尻撃】
護の残した指示。
そしてユウトの“黒刀”が輝くその時まで。すべては、舞台の布石。
逃ゲル=マラソン大会はホブゴブリンの洞窟を3周も回ったあとに、ついに玉座の方へウィニングランする。デフリーとコニちゃんと黒月の剣士ユウトであった。