第6話 超進化のスープと俺たちの最終進化
あの戦いの日々は、すべてこの瞬間のためにあった。
5体の強大な魔物を打ち倒し、命がけで素材を集めた俺たちは、
ついに古代魔女マーリンのほこらへと帰還した。
小高い丘にポツンと建つ、木造の不気味な小屋。
すすけた扉には、怪しい呪符とハーブがぶらさがっている。
ギィ……と扉を開けると、
奥の炉の前で、しわしわの老婆がひとり、鍋をかき回していた。
「……さあ、君たち、材料を集めてきたまえ。生還できた者から、まず味見だよ」
と言われS級、 魔物の食材を集めた日々。
静かに、だけど確実に、俺たちの心に火を灯した声。
「魔女マーリン……俺たち、戻ってきたぜ」
「……あんたたち何しにきたんだね?」
「えっ!? 忘れてる!? 嘘やろ!?素材5つやで5つ!!」
と、コニちゃんが絶叫。
「ボケてる!完全にボケてる!!」
「……ふふ、冗談だよ。冗談♪ 美魔女の冗談♪ 」
マーリンはくしゃっと笑って壺を指さす。
「さぁ、具材をよこしな」
俺たちは一つずつ、大事にしまっていた食材を差し出す。
・バルグルムの「執念の瞳」
・スパルディオ虫の「硬殻神経核」
・クルバクの「放電羽」
・ルガンの「逆鱗」
・ゴルマーダの「震脚蹄」
「ふぅぅん……これは、久しぶりの素材やねぇ」
マーリンは目を細め、壺の蓋を開ける。
グツグツ……ドロ……ボコォ……
不気味な音とともに、魔女の壺は光と影をはらみ、
空間ごと脈動をはじめる。
「さぁ飲みな!超進化のスープじゃよ!」
俺たちは、魔女の差し出した黒曜石の杯を受け取った。
◆超進化、全身が光輝き、最後の進化が、いま始まる。◆
●護 → ゴブリンロード(最終進化形態)
鍛え抜いた剣を手に、騎士から王へと昇華。
・身長が1.5倍に。目に威厳。
・黒きマントが揺れ、背には黄金の紋章。
・「オレがこの部族を導く」
→スキル《威圧陣》…味方全体の防御力UP
→スキル《千槍剣舞》…連撃型広範囲スキル
●ティリス → アビスエルフ(最終進化形態)
闇と光を両立する、深淵の狙撃手。
・髪は金から墨のような黒へ。瞳は金色。
・羽衣のようなローブをまとい、背に闇の羽根。
→スキル《幻陽の矢》…必中の追尾貫通魔弓
→スキル《影籠》…敵視遮断&自動回避バフ
●デフリー →オークロード(最終進化形態)
食と癒しを極めた、王級の“大食漢賢者”。
・腹は出たまま、しかし威厳ある風格。
・全身に刻まれた料理ルーンが浮かび上がる。
・お玉が杖に進化し、料理と回復魔法の両立が可能に。
→スキル《再調理術》
…冷えた料理をアツアツにできる。
→スキル《祝福のシチュー》
…HP全体回復+攻撃力UP+状態異常無効の“超回復+パブ付与スープ”
→パッシブスキル《胃袋の神域》
…すべての食材からバフ効果を引き出せる。
食べた敵のスキルも模倣可能(物騒)
●エミリー → ハイリザード(最終進化形態)
智を持つ竜の民。魔導と自然の融合。
・鱗が淡い紫に変化。細身に伸び、尾に魔法紋。
・胸元に宝玉が浮かび、魔素が放出されている。
→スキル《龍脈共鳴》…魔力の自然回復+増幅
→スキル《烈炎樹の息吹》…範囲内全体回復&状態異常解除
●コニちゃん → トロールインフェルノ(最終進化形態)
灼熱の怒りを纏う爆裂トロール。
・肌は紅蓮、髪は火のように燃えたぎる。
・斧を投げると爆発する。本人も爆発寸前。
→スキル《爆炎相撲:地獄開き》…一撃必殺の投げ技+爆破
→スキル《火脈咆哮》…敵全体スタン+火属性弱体化
全員が進化の衝撃から目を開けたとき、
マーリンは満足げに壺の蓋を閉じていた。
「これで、君たちにも“可能性”が生まれたよ」
「……可能性?」
「未来だよ。世界を変える力、そして……伝説の魔物へと」
マーリンはそう言って、背を向ける。
「次に会うときは“敵”かもねぇ。ふふ、長生きするもんだわ」
「ちょ、魔女!?どういう意味!?」
だが、彼女はもう背を向け、煙の中に消えていった。
魔女ほこらを出ると、
そこには闇ギルド《ドレッドバインド》の仲介人・ギルが立っていた。
黒いフードを深くかぶり、痩せたその男は、
一同を見渡して、こう言った。
「どうやら……準備が整ったようですね。勇者アレスの転生者達が、あなた方をホブゴブリンの洞窟で待っています」
一同、空気が変わったのを感じた。
ゴブリンロードとなった、護はギルをじっと見つめていた。