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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第十一章 孤高の転生剣士

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第2話 このゲームの世界で俺は剣豪?

転生者ユウト・ミカヅキとして、目覚めたのは森の中だった。


空は広く、雲はゆっくりと流れ、遠くで鳥の声が聞こえる。

だが、優斗だった頃の記憶がまだ身体に残っていて、彼はしばらく立ち上がれなかった。


(……俺、生きてる?)


息を吸うと、冷たい空気が胸に染みた。

空腹じゃない。寒くもない。どこも痛くない。


「……夢じゃない、のか」


ふと、自分の手を見る。小さな子供の手ではなかった。細身ながらも鍛えられた指。筋肉は無駄がなく、全身が鋭く整っている。


「これが……俺?」


彼は、優斗の記憶を持ったまま、32歳の大人として転生していた。

しかもこの身体は――とてつもなく、強い。


それを最初に実感したのは、森を歩いて数分後だった。


「グゥオオオッ!!」


茂みの向こうから、異形の魔物が現れた。狼よりも大きく、蛇のような尻尾に甲殻をまとっている。鋭い牙と赤く光る目。明らかに“現実では見たことのない存在”。


(これ、ゲームで見たやつじゃねえか……いや、現実だ。やるしかない)


魔物が突進してくる。反射的に、ユウトは腰に手を伸ばすと――そこには一本の黒い刀があった。


名前も知らないその剣は、彼の手に吸い付くように馴染んだ。


「来いよ……試してみるか、俺の“今”を」


魔物の爪が迫る、その一瞬。


ユウトの姿が、消えた。


「――《月閃》」

一歩。たったそれだけ。


ユウトの足が地面を踏んだ瞬間、空間が割れた。


刃が描いたのは、一条の月光の弧。

黒い稲妻のような残光が闇を裂き、目にも止まらぬ速度で魔物を通り過ぎる。


風が遅れて吹き抜けた時、魔物の身体に一本の斬線が走った。


“ザクリ”

音もなく、その巨体は崩れ落ちる。


次の瞬間には、ユウトは既に剣を納めていた。

ただ一歩。

ただ一閃。


しかしその一撃は、あらゆるものを終わらせる。


――「月は斬り、闇を裂く」

それが、黒月の剣士が放つ“月閃”。


「……うそだろ、俺、何やった?」


呆然とするユウト。しかし、身体は確かに動いていた。技の名も、自然と口から出た。まるで何年も鍛錬した剣士のように。


(なんだこの技術。いや、知ってる。これは“戦い方”だ)


脳が覚えている。筋肉が勝手に動く。

まるで生まれつき、剣だけを磨いて生きてきたように――


「この世界で、俺……剣豪になってる?」


ユウトは静かに剣を鞘に納めた。


かつて、あれほど渇望していた「力」。誰にも頼らず、生きていくための強さ。

それを今の自分は、確かに持っている。


(これならもう、誰にも殴られない。誰にも奪わせない)


木々の隙間から、月がのぞく。


それはまるで、孤独な剣士の運命を見下ろしているようだった。



◆黒刀の名前▼

朧月ろうげつ

「その刃は、満ちぬ月のように静かに、だが確実に命を刈り取る」


かつて、滅びた王国の影の騎士団が使っていた“呪われし刀”。持つ者の感情を吸い取り、冷たく研ぎ澄まされた殺意へと変えるとされる。鍛えられた金属ではなく、“星喰い隕鉄”と呼ばれる謎の隕石の欠片から作られており、通常の武具や魔力障壁を容易に斬り裂く。


◆ 外見的特徴▼

刀身は夜空のように漆黒で、光を反射しない。

刃文は細く銀色にきらめき、よく見ると“月の紋様”が浮かんで見える。

つばは三日月型で、柄には黒い布が巻かれ、血を吸うと色が淡く紫がかる。

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