第7話 古代魔女マーリン登場と超進化のスープ
魔女のほこら、最深部。
デフリー渾身のアナコンダ料理大会のあと、俺たちはダンジョンの奥、苔むした巨石の扉の前に立っていた。
ギイィィィ……と、鈍い音を立てて扉が開いたその先。
そこにいたのは、一本の巨大な杖を手にした老婆だった。
全身を黒いマントで覆い、長い白髪が床まで伸びている。
その目は、どこかすべてを見透かすように、俺たちを静かに見据えていた。
「……来たわね、“魔族の勇者たち”。ようこそ、美魔女マーリンのほこらへ」
「あなたが……古代魔女、マーリン……?」
そう尋ねたのはエイミーだったが、次の瞬間、マーリンはにっこり笑ってこう言った。
「やあ、あたしは999歳。まだピチピチの小娘よ♪」
「うわあ……自分で言うタイプか……」
そして、彼女の視線がティリスに向けられたとき——
「……ふふ。懐かしいわね。そこのダークエルフ、あなた……若いころのあたしに、そっくり」
「えっ!?」
ティリスの目が点になる。
「……えぇぇぇ!? このおばあちゃんが!?」
思わず俺は声を出してしまった。
心の中では、妄想が渦巻いていた。
(昔は黒髪ロングで、すらりとした美少女……だったとか!? でも今は……)
目の前には、腰の曲がったシワッシワのばあさんが、にやりと笑っている。
「昔はさぞかし……その……こう……バストとか……」
「うふふ、Dよ」
「やめろぉおおお! 夢を壊すなああああ!」
「お前たち超進化のスープを作ってほしいんだろう」
そう言って、彼女は笑った。優雅で、どこか狂気をはらんだ笑みだった。
「ただし、具材は《超危険等級S》の魔物たちの臓腑、牙、そして“愛情”が必要だよ」
一同、絶句。
◆超進化スープ 具材リスト◆
①【追獄獣バルグルムの「執念の瞳」】
②【四脚鎧蟲スパルディオ虫の「硬殻神経核」】
③【喰雷鳥クルバクの「放電羽」】
④【紅眼熊ルガンの「逆鱗」】
⑤【地裂魔牛ゴルマーダの「震脚蹄」】
「さあ、君たち材料を集めてきたまえ。生還できた者から、まず味見だよ」
俺たちは超危険s級の魔物具材を集めることとなった。マジですか。
古代の魔女マーリンの住処を出た時、 ホブゴブリンの護は魔王の声が耳に聞こえた気がした。
「護……あとは、お前に託す。この世界を」
まさかねぇ、魔王だし、まさか勇者アレスにやられないよねぇ生き延びてるよねぇ。
しかし、勇者アレスによって魔王レグナ=ヴァル=ノクトは死んでいた。
『伝説のブレイブ・レガリア』という名のゲームの世界も、ひとつ、また確実に壊れていたことを護は、まだ知らない。