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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第十章 魔女の祠と古代魔女

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第3話 王子と姫の破壊劇(ロマンス・オブ・ブラッド)

嵐はまだ止まない。


雷鳴が魔島ネパーランドの空を裂き、黒き稲妻が海原に走る。


地の底から吹き上がる魔力の渦中で、魔王レグナ=ヴァル=ノクトは、沈みゆく勇者アレスに最後の魔力を叩き込もうとしていた。


「ここで終われ、南城大我……」


漆黒の魔力が腕に収束してゆく。


そのときだった。


「……やめてよ、魔王さん」


少女の囁くような声が降る。花のような、しかし狂気をはらんだ囁き。


「私の“王子様”を……壊さないでぇええええええええ!!!」


刹那、


魔王の周囲を無数の影が取り囲んだ。


人形兵団。


白磁の肌に割れた笑顔、

ガタガタと軋みながら、メル・アリアが創り出した“人間そっくりの人形”たちが、牙をむいて魔王に突撃してきた。


「姫のために戦うのが、騎士でしょおおおおおおお!!!」


一体、また一体と自らの身体を爆薬を抱えて爆ぜさせ、爆炎を魔王に浴びせかける。


――ドオオオオン!!!


爆音と閃光の中、魔王レグナが咆哮した。


「甘いわァアアアアア!!!」


魔王の魔力障壁が展開され、ほとんどの人形は爆発する前に霧散させられた。


しかし、その混沌の中に――一体、だけ。


混じっていた。


「……ッ!?」


それは、燃えたマント、剥き出しの剣。血にまみれ、黒煙を纏う者。


勇者アレス。


人形に紛れ、爆炎に身を隠し、己の体温さえ殺していた。


「もろたでェ!!」

勇者アレスが魔王の胸を狙って剣を脇に構えて突き進む。


だが魔王レグナの反応は一瞬早かった。


「貴様ごときに……!」


右腕を振りかざす、その刹那――


ピタリ、と。


「……なに?」


その腕に細い、しかし異様に“強い”緑色の魔糸が絡みついていた。


「これは……メル・アリアの――!?」


振り払おうとするが遅い。


「いけっ、アレス様ああああああああ!!!」


メル・アリアが狂気と愛に満ちた声で叫ぶ。


勇者の剣が閃き、魔王の身体へと突き立つ――


「グアァァァァアア……!」


魔王の悲鳴と共に、血が夜空に散った。


だが、同時に、魔王の闇魔力が最後の自動防衛として暴走する。


その場にいたアレスもまた、吹き飛ばされた。


二人は、闇の波動に巻き込まれ、同時に地へと倒れ込む。


……沈黙。風だけが唸る。


長い、長い数秒の後――


ギシィ……と剣を支えに、一人の男が、地に這いながら立ち上がる。


「……ったく……この程度のボスで……」


血まみれの口元に、笑みを浮かべながら――


「なんで……最後まで俺が主役ってこと、忘れんねん……」


勇者アレスが、勝ち名乗りを上げる。


「勝者は……この俺様や。

このゲームの勝者は……俺のもんやああああああ!!!」


空に向かって、勝ち誇る咆哮が轟いた。


その笑顔は、美しく、残酷で神をも裏切る、

《人類最悪の勇者》の、それであった。

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