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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第十章 魔女の祠と古代魔女

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第1話 真実の告白

ゲリラ豪雨が止んだ。空が青さをとり戻す。


魔王の移転ゲートが光の粒となって空に溶けていくのを、二人の男が見つめていた。


一人は、血で染まった光の剣を握る狂気の勇者アレス。

もう一人は、漆黒の鎧を外套をまとう、魔王レグナ=ヴァル=ノクト。


「……移転魔法は、完全に途切れた。しばらくは戻ってこれん」


「魔王がこの世界に直々に現れるとはなあ。予想外やで」


南城大我(なんじょうたいが)こと勇者アレス。貴様を止めるために、我は命を賭してここに来た」

「だが、その前に話さねばならぬ。この“世界”の始まりと、すべての運命を操る“唯一神”の正体を」


アレスが眉をひそめる。


「はぁ? 神の話か? 興味あるやんけ。面白くなってきたわ」


すると魔王は、静かに語りはじめた。


■回想:創造神セフィロス=コードの正体

かつて、現実世界に一人の男がいた。名を今田敏夫いまだ としお35歳。。


長年ゲーム開発会社ミラージュコードに勤め、業界でも屈指の技術と設計力を誇るディレクターだった。


だがその表情には、喜びも誇りもなかった。


「……また、“勇者が魔王を倒す”だけの、テンプレシナリオか」


深夜1時を過ぎた会議室で、プロデューサー陣が笑いながら語る。


「今田さん、あんたのシナリオは暗すぎるんだよ。ユーザーが求めてるのは“成功の物語”なんだよ、成功!」


「バッドエンド? バグ展開? そりゃマニアは喜ぶかもしれんけど、一般層には売れねぇの」


「勇者が、救い、魔王を倒し、世界に平和を、それが正義。それが正解だよ、な?」


そのたびに、今田は無言で資料を抱え、会議室を出た。


彼はかつて、人生をゲームに救われた人間だった。


いじめ、家庭崩壊、孤独な少年期。

だが、その中で出会った一つのRPGが、彼に“冒険”を教えた。


誰にも相手にされなかった彼を、パーティは仲間として迎えてくれた。


「ゲームは、現実を超えるんじゃなかったのか……?」


しかし、成長した彼が業界に入る頃には、現実の“マーケティング”と“データドリブン”がすべてを支配していた。


魂も、夢も、売上に勝てなかった。


彼は、ただ言われたとおりに「勇者が魔王を倒す物語」を書き続けた。


そして完成したのが、このゲーム――

『伝説のブレイブ・レガリア』。


売れた。驚異的に。


初週ミリオン、世界配信、続編まで決まった。


しかし今田の目に、あの時の少年のような“希望”はなかった。


「これは、偽物の栄光だ……ユーザーも、キャラクターたちも、選択肢すら持てない。こんなものは、神のふりをした独裁だ」


彼は、自分の設計したシステムに“最後のバグ”を仕込んだ。

絶望の末、今田は己の肉体を捨て、魂をプログラムと一体化させた。

彼は《神》となった。


挿絵(By みてみん)


その名を想像神セフィロス=コード。

世界を内側から支配する、唯一無二のゲーム神。コードで創造されし意識体。


そして彼は、バグとして“6人の転生者をこの世界に送り込んだ。


■なぜ「6人」なのか?

セフィロスは、人間の持つ「未練」にこそ、“物語”の真実が宿ると信じていた。


選ばれた6人は、いずれも「死にたくなかった」「やり直したかった」「自分を肯定されたかった」

そんな強烈な願いを胸に、命を落とした者たちだった。


・ブラック企業で過労死した男

・いじめられっ子の中学生

・世間から追放され自殺したEスポーツ選手

・人間関係悩みで社会から追放された元官僚

・病気で孤独に死んだ少女

・父親に虐待された小学生


魔王レグナは言った。


「貴様の相手、護もまたこの世界に“バグ”として送り込まれた者。

貴様が栄光の“勇者”として創られたのに対し、護は“世界に抗う者”として生まれた」


アレスの目がギラリと輝く。


「ほぉ……つまり、俺は神の作ったおもちゃかいな。ええやんけ、上等やんけ……」


「俺がこの“神の世界”をぶっ壊したら、バグになるんやな?……面白いやんけぇ!」


雷鳴が轟く。一度は晴れたがゲリラ豪雨が再び地を打ち、地面が震える。

勇者アレスは、狂ったように笑い出す。


「この世界の運命? 神の計画?

知らん! 俺が全員ぶっ殺して、俺が主人公や!!」


魔王レグナは剣を構えた。


「ならば……我が命をもって、最初の戦いを始めよう。神に抗う第一歩をな……!」


そして勇者アレス vs 魔王レグナ=ヴァル=ノクト


運命を狂わせる戦いが、今始まった。


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