第7話 超強力な助っ人登場
激しい雷雨の中、ずぶ濡れのティリスが光の剣を高々と振り上げ、護の前に立ちふさがっていた。
その目は涙を流しながらも、感情の灯を失い、まるで操られる傀儡のように淡々としている。
「やめろ――ティリスッ!!」
護が絶叫する。
「アリアの操りの糸を、振りほどけぇぇっ!!」
空が裂け、雷鳴が大地を揺るがす。
雨はなおも降りしきり、視界を濁らせる中――
ティリスの剣が、一直線に振り下ろされた。
「――っ!!」
護は目を閉じ、覚悟を決める。
……しかし。
「……え?」
目を開けると、光の剣は、護の顔のすぐ右側、数センチに突き刺さっていた。
「ちぇっ……一本切れちゃったみたい」
背後から、メル・マリアが唇を尖らせながら言った。
どうやら、ティリスが魂の底から抗い、自力で操り糸を一本断ち切ったらしい。
「でも大丈夫。縫合っと♪ 仕切り直しよ――」
そのときだった。
異空間が捻じれ、紫色の渦から一人の男が現れた。
「……誰だお前ッ!?」
咄嗟に警戒するアレスとマリア。
「名乗るほどのこともないが――」
雨を切る低く重い声が響く。
「我が名はレグナ=ヴァル=ノクト。このゲームの魔王である」
その名を聞いた瞬間、場の空気が凍りついた。
魔王レグナは手を一振りすると、ティリスに絡んでいた操り糸をすべて切り裂いた。
「なっ……!? やめなさいよぉおおお!!」
アリアが叫ぶが、レグナは振り返りもしない。
「護よ、よく聞け。勇者アレスは“運命の加護”により、我々の想像を超える力を得てしまった。今のお前たちでは勝ち目はない」
「……なんだって!?」
護は歯を食いしばる。
「だが、まだ希望はある」
魔王レグナは空間に再び渦を開いた。
「このゲートの先に“魔女の祠”がある。そこに棲む古代の魔女・マーリンに、さらなる進化の方法を教わるのだ」
「はあ? なんやお前、魔王のくせに水差しよって。魔王が自分の城から出たらルール違反やろが!」
アレスが笑いながら踏み出そうとしたが、魔王レグナが静かに告げる。
「ルールを壊しているのは貴様だろうが南城大我。“伝説のブレイブ・レガリア”の世界を、プレイヤーの我欲で踏み荒らす者よ」
アレスの顔が険しく歪んだ。
「さぁ行け、護。お前たち魔族こそが、この世界を修正し得る“最後の希望”だ」
護は仲間たちへと振り返った。
「……撤退だ。エイミー、コニちゃん、デフリー、ゲートへ急げ!」
ティリスも小さく頷き、護の背中を追う。
だがその瞬間、アレスが咆哮する。
「逃がすかぁああああッ!!」
一歩踏み出そうとするその前に
レグナが前に出た。
「貴様の相手は、我が務めよう」
雷鳴がとどろき、アレスとレグナの視線が激突する。
「行け、護よ! 希望の魔族の勇者たちよ!」
護たちは、開かれた魔法移転のゲートをくぐった。
さらなる進化、そして“勝利”の可能性を掴むために
第九章 完結




