第6話 濡れた人形と操り人形
豪雨が大地を叩きつける。
ぬかるんだ地面の中、血と泥が混じり、豪雨で視界すら曇る中
護と勇者アレスの激突が始まっていた。
剣と剣が交錯する音すら、雷鳴にかき消される。
その中、ティリスは遠くから見守っていた。
だが、その目は怯え、何かに引き裂かれるように揺れている。
「……護……負けないで……」
アレスは狂気の笑みを浮かべながら、楽しんでいた。
「なんや……もっとやれる思うたのに……これが運命の対決?笑かすなよ……」
護は必死に耐える。防御を重ね、スキを狙おうとするが、アレスの動きに一切の隙がない。
「ぬるいんや……その覚悟、ぬるすぎるわぁ!!」
一撃、二撃と重い剣撃
そして腹へと重い蹴りが突き刺さる。
護は泥へと顔を突っ込み、動けない。
その様子を見ていた人形姫の少女 メル・マリアが、ティリスの横に突如して現れた。
「……ねぇ、あの護ってダークエルフの“思い人”なんでしょう?」
彼女の指先から操り糸が伸び、ティリスへと絡もうとする。
「何を……やめて!!」
ティリスは抗う。だが、その糸は彼女の意識にゆっくりと浸透していく。
「笑わない子ね、あなた。壊れてないから笑えないのよ。心が壊れれば、笑えるの……」
アレスは愉快そうにメルマリアの言葉を受け止める。
「ははっ、せやな! ほな……レアキャラちゃん、護にとどめ刺してみぃや?」
光の剣が、ティリスの前に差し出される。
ティリスの手が、小刻みに震える。
護が必死に声を上げる。
「やめろ……ティリス……お前は、そんなこと……!」
彼女の目から、ぽたりと涙がこぼれる。
「……護……私は……私は……」
震える足取りで、一歩ずつ、彼女は近づいてくる。
その表情に苦悩が滲む。
そして、その背後コニちゃんとエイミーが必死に人形たちと戦いながら、ティリスに叫ぶ。
「ティリス、目を覚まして!」
「あんたはそんな子じゃないでしょ!!」
次の瞬間
パチン。
糸が一本、音を立てて切れる。
ティリスの心に、何かが走る。
ダークエルフ ティリスが操り人形となり護、豪雨の中、護の前に立ちつくした。
光の剣を高々と振り上げる。
「やめろーティリス !アリアの操りの糸を振りほどけ!」
豪雨の中
雷鳴が轟く
護が必死に叫び声をあげるなかティリスの光の剣を護にめがけ振り下ろした。




