表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第九章 狂気のサイコパス人形少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/160

第1話 暗躍する情報屋と崩れた世界

その黒き巨塔は、もう存在していなかった。


かつて“魔導国家ネメシス=ギア”の象徴であり、千層を超える知識と魔術の殿堂だった

《ネメシスタワー》。


その巨塔はいま、黒煙を吐きながら瓦礫と変わり果て、世界にぽっかりと穴を開けていた。


「……まさか、本当にこんなになるとはな」

ゴブリン騎士のまもるは、崩れた塔の残骸に手を触れ、静かに呟いた。


魔導残渣が辺り一帯に漂い、空気は魔素で飽和している。

このままでは魔界と人間界との境界すら歪みかねない。そう思わせるほどの崩壊だった。


「世界が……裂けかけてる」

リザードセイジ・エミリーが、かすかに眉をひそめながら言う。


「……なんや、腹の底がずっと熱いわ。これが“滅びの気配”ってやつなんか?」

オークパラディン・デフリーは、槍を杖代わりについて立ちすくんだ。


「塔が…泣いとるように見える…」

フレイムトロールのコニちゃんが、瓦礫を見つめながら小さく呟いた。


そのときだった。


「……いやあ、立派に燃えたねぇ。地獄の焚き火かと思ったよ、まったく」


声がした。低く、粘りつくような、喉の奥で笑う声。


瓦礫の影から現れたのは、すすけたフードを目深にかぶった男。

片目は白く濁り、もう片方には獣のような鋭さを宿している。


「初めまして。ホブゴブリンの護さん……で、よろしかったですかね」


男は薄く笑い、頭を軽く下げる。


「俺の名はギル。《ドレッドバインド》って闇ギルドの仲介人です。魔王さんから、あなたの話は聞いてましてね。ええ」


護は眉をひそめる。「魔王が……? 何を話した」


「“人間と魔族の狭間を歩く者”だとか、“勇者と相対する資格を持つやつ”だとか。面白い称号がいくつもね。あの魔王様、意外と人を見る目がある」


ギルはくつくつと笑いながら懐から紙片を取り出す。

それは、血文字のような魔法印が走る封緘紙だった。


「今日は、お土産付きですよ。情報の内容は……」


彼は一度、残骸と化した《ネメシスタワー》を見上げた。


「“クロウ・サカキバラ”と、“イザベル=クロフォード”……ふたりの転生者を、勇者アレスが手にかけました」


空気が止まった。


「……おい、今なんつった?」

デフリーが拳を握る音が聞こえる。


「繰り返しましょうか?」

ギルは平然としたまま言った。


「勇者アレスが転生者たちを“処理”したんですよ。そして今、彼は次なる転生者メル・アリアという名の魔導少女のもとへ向かいました」


「アリア……ネバーアイランドの」

エミリーの声が震えた。冷静な彼女にしては珍しい。


「そう。あの島です。噂じゃ、そこに住む者は全員、操られているとか。生きたまま人形にされているとか。まあ、どこまで本当かは……あなたたちの目で確かめてください」


ギルが口を閉ざしたとき、風が焼けた塔の骨を吹き抜けた。

護は、灰の中から崩れかけの階段を踏みしめながら、ギルに言った。


「……あんたの話、信用してやる。だから言っとく。勇者アレスがどこまで狂ったのか……俺が確かめる」


ギルは片目を細めて笑った。


「……良い旅を、“魔族”さん。あの島には、綺麗な花が咲いてますよ。毒花ですけどねぇ」


そう言い残し、仲介人は瓦礫の向こうに姿を消した。


護は静かに仲間を見回し、言った。


「行こう。《ネバーアイランド》へ。今度こそ、“狂った勇者”を止めるために」


メル・アリアが支配する狂気の島ネバーアイランド

地獄の入り口は、すでに開いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ