第5話 新たな冒険者たち
ゴブリン軍隊の武装は、あまりに貧弱だった。
武器は、森の枝を削って作った木の槍、木の剣、木の棍棒。
防具に至っては、木の皮を綴じただけの盾に、葉や蔓を編んだ鎧と兜。
まるで子どものおままごとに見える装備で、本当に戦えるのか不安になるレベルだ。
「これで……本当に、勇者と戦うのか?」
ホブゴブリンとなった俺、元・人間の菊池 護は、改めて現実を直視していた。
ダンジョンは整備され、部隊も育ち始めた。だが武器と防具が貧弱すぎる。
鉄がない。火も炉も鍛冶師もいない。
このままでは、いくら訓練しても木製装備のまま突撃させることになる。
そんな戦、勝てるわけがない。
「どうにかして、ちゃんとした装備を……」
人間社会には、鍛冶師もいれば武器商人もいる。
だが、魔族と人間は敵同士。今さら取引など、望むべくもない。
行き詰まる俺に、ある日、思わぬ情報が舞い込んだ。
「エルフ族……?」
オークの族長・ドルゴが、そう口にした。
「うむ。海を越えた、さらに奥に住むエルフ族……人間と魔族の混血だ。
中立的な立場をとっており、人間とも魔族とも関係を持っておる」
リザードマンの族長・サルアがうなずく。
「エルフ族、金属も魔法も使える。交流できれば、可能性はある」
トロールの族長・モグも言った。
「エルフ、かしこい。おれ、よくわからん。でも、あいつら、つよいし、つくれる」
その情報に、俺はすぐさま決断した。
「よし、エルフ族に会いに行く」
話を聞くだけじゃない。交渉し、できることなら取引の道を開く。
そのためには、信頼できる仲間が必要だ。俺は各族から精鋭を選び、新たなパーティーを結成した。
■ パーティーメンバー紹介
◆ オーク族代表:デブリー (オス)
丸々と太った体格に似合わず、聖職者の素質を持つオーク。
回復魔法と、食料管理に定評あり。怒らせると棍棒が飛ぶ。
「オークだって繊細なんだよ、護。料理には心が要るんだよ、心が!」
◆ リザードマン族代表:エイミー (メス)
水魔法を得意とする戦術士。冷静沈着で、状況分析に優れる。
やや皮肉屋だが信頼は厚い。
「あなたが指揮官? ……まあ、見た目はアレだけど、期待してるわよ。元・人間さん」
◆ トロール族代表:コニちゃん (中間?)
巨体に可愛らしい口調というギャップの持ち主。
火魔法を高出力で扱える爆撃要員。
よく物を燃やしすぎて周囲に怒られる。
「コニ、がんばるーっ! いっぱいボンボンするーっ!」
「混合魔族による、新しいパーティーか……」
かつてRPGゲームで“最初のダンジョンのボス”として即倒される運命だった俺が、
今は魔族の選抜メンバーを率いて、世界中にいる魔族たちと交渉に乗り出すことになった。
これは、新たな冒険の始まり。
勇者が来るその日までに、俺たちはどこまで強くなれるか。
希望を握りしめ、俺たちは、森を越えたその先への新しい未来へと歩き出した。