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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第七章 レインボードラゴンとホブゴブリン

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第1話 人間は信用できない。だが、数値は裏切らない

【機構魔導都市《ネメシス=ギア》】

黒銀の塔に、警告灯が静かに灯る。

全自動記録機構《ギア=アーカイブ》が、緊急通知を告げていた。


「勇者アレス、光の神に仕えし至高の聖域、パンテオン神殿にて

神官34名、巫女12名、市民230名以上を殺害。避難民、推定3,000」


塔の中枢、玉座と演算装置が一体化した空間に、一人の男が静かに座していた。


クロウ・サカキバラ。

通称、魔導機甲将クロウ。


挿絵(By みてみん)


義眼のレンズがわずかに収束し、演算中の魔導陣が宙に浮かぶ。

鎧の継ぎ目から、熱を帯びたエーテルが低く脈動している。


「……また、“ノイズ”か」


彼の声は、冷えた金属のように響く。


「勇者という存在は、行動予測係数が常に不安定だ。情動、使命感、憎悪どれもが論理に優先する」


【誤差許容範囲:±4%】

しかし、アレスの破壊行動は【誤差23.9%】を記録していた。


クロウの義眼が、ひとつの結論を弾き出す。


「誤差が閾値を超えた。ならば、“ノイズ”として、消去する」


背後で音が鳴る。巨大な歯車が軋みながら回転し、空間に数十機の魔導砲塔エーテル・キャノンがホバリングしはじめる。


静かな怒りではない。

それは、“設計を乱された技術者”の憤り。

理想を侵された者の、冷たく静かな“殺意”だった。


■回想 榊原雅人さかきばらまさととしての過去


榊原雅人さかきばらまさとは、かつて“天才少年”と呼ばれていた。

中学までは成績もよく、無難に生きていた。だが、家庭では常に父の怒号と冷たい無関心が支配し、学校では「空気を読めない変人」と距離を置かれる存在だった。


彼が唯一心を許したのは、ディスプレイの向こう側。

無限の可能性を秘めたデジタルの世界だった。高校に進学する頃には、完全に部屋に閉じこもり、ネット対戦型のリアルタイム戦略ゲームにのめり込んでいた。


モニター3枚、高性能ゲーミングPC、自作の入力補助装置。

彼の部屋は、まるでコクピットのようだった。


「人は裏切る。だが、コードとロジックは絶対だ」


それが、彼の哲学になった。


雅人が選んだ戦場は、eスポーツで世界的に人気を博す対戦ゲーム

「Ωコンクエスト」。彼はそこで名を上げた。


Clockwork Reaper(機械仕掛けの死神)。

すべての手が“計算通り”に動く男。

画面の中で敵はただのデータ、味方もAIと変わらぬパラメータ。


「仲間が動かない? なら動かさせればいい」

彼は味方の意図すら先読みし、時に“心理誘導”まで行った。


勝率は驚異の92%。

わずか1年で世界ランキング5位に入り、日本代表に選出された。


世界大会決勝。相手はアメリカのNo.1チーム「Ragnarøk」。

この戦いに勝てば、彼は“世界最強”の称号を手にするはずだった。


だが、その瞬間にトラブルが起きた。


ネット回線の不具合。

AI補助で指示は飛ばせたが、レスポンスが微妙にズレる。

それでも、彼は冷静だった。想定内の誤差。

問題は、味方の感情だった。


仲間の一人が、AIの指示に逆らい、突撃した。


「お前の命令どおりやっても、誰も楽しくねぇんだよ!」


その瞬間、チームは崩壊し、戦況は逆転。

敗北。


その後、SNSは地獄と化した。


「空気読まない独裁者」

「人を駒としか思ってない」

「やっぱ引きこもりって信用できねぇ」


数年分の努力が、一晩で否定された。

チームもスポンサーも彼を切り捨てた。


雅人はすべてのアカウントを削除し、配信もSNSもやめた。

自室にこもり、食事はインスタント、昼夜逆転。

天井を見つめながら思う。


「何が悪かった? 俺は正しかった……はずだ」


世界に裏切られ、他者に見捨てられ、

自分の“完璧さ”が否定された。


そして彼はビルの屋上から飛び降り

人生をリセットする選択をした。


そのとき、画面に一つのことばが表示される。


【君の魂、異世界にて再起動しませんか?】

雅人は、迷わずクリックをした。

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