第6話 転生勇者に私刑判決
パンテオン神殿神の像が見下ろす“法の間”。
転生者イザベル=クロフォードの前に立つのは、かつて栄光を担っていたはずの男、勇者アレス。
その目に、もはや正義の光はない。ただ暴力と殺意だけが燃えていた。
「勇者アレス。ローゼリア王とその側近、大臣、大将軍を殺害したことを認めますか?」
イザベルの静かな問いに、アレスは口元を歪めて笑う。
「おう、やったったわ。アイツら、俺を失敗とかいいおって。気に入らんかっただけや。文句あるやつ全員殺したる。それがワイの流儀や」
ざわめく法廷。だが、イザベルは怯まない。
「……そして、あなたはエルシアの村を見捨て、百余名の命を奪いましたね?」
「見捨てた?違うな。ワイは助けんかっただけや。救っても、どうせすぐ死ぬモブの雑魚どもやろ。
そんなやつらのために、なんでワイが命かけなアカンねん。アホちゃうか」
静寂。
その言葉に、神官たちは目を見開き、魔法陣が浮かび上がる。
イザベルは毅然と告げた。
「……これ以上は聞く必要もありません。あなたは転生者の名を汚し、法を踏みにじりました。
勇者アレス、あなたを私刑に処します」
「はぁ?」
アレスの顔から笑みが消えた。
「私刑?ワイを誰やと思てんねん。救世主?ちゃうわ、俺が神や!
法や正義が何や!くだらん幻想で人間を縛りつけとるだけやないか!」
ドンッ!
アレスの魔力が爆発するように解き放たれ、床が割れ、神官の数名が吹き飛んだ。
「お前ら全員、皆殺しにしたるわああああああああああッ!!」
神殿が震え、天井がきしむ。
アレスの両手に黒い雷光がまとわりつく。
「ワイに逆らう者は全員、地獄行きや!!」
イザベルは即座に詠唱を開始する。
「《聖印解放・第五法典──神罰の光、我に宿れ……》」
だが——その瞬間だった。
「遅いんじゃ、ボケェ!」
シュッ——
アレスが瞬間移動の魔法を発動し、イザベルの目の前に現れる。
黒い剣を一閃、イザベルの喉を
スパッ!
血しぶき
薄紅の霧が舞う。詠唱が止まり、イザベルが崩れ落ちる。
「神に許しを請うことも、助けてもらうこともできへんな……」
アレスはイザベルの血で濡れた剣をゆっくりと持ち上げた。
「お前はここでゲームオーバーや。お終いや!」
アレスの笑い声が神殿中に響く中、法による正義は崩壊した。




