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第1話 「蜂のモンスターはエビの味」

「進化したければ、レインボードラゴンの肉を食え」


魔王の言葉が今も耳にこびりついている。


俺の名前はまもる。人間だった頃の記憶を持ったまま、今はホブゴブリンとしてこの異世界に転生している。仲間はいるが、どこか不安は消えない。

魔王の進化できる話を受け、俺たちは“進化”の鍵を握るというレインボードラゴンを探す旅を始めていた。


「レインボードラゴンって、どんな味するんやろなぁ」

隣で能天気に笑うのは、オーク族の獣人のデフリー。

相変わらず緊張感がない。俺は言いかけて、言葉を飲み込む。


食べられるのは俺たちかもしれないのに。


そのときだった。


「ブウウウウウン……」


空気が震える。

耳の奥をえぐるような重低音。視線を上げた俺の目に、黒い雲のような巨大な蜂の群れが映った。


「キ、キラービーだ!!」

誰かが叫んだ瞬間、上空から金属音のような羽音が降り注ぐ。


「ひゃああああああ!! 蜂キラーイイイッ!!」

妖精族のコニちゃんがパニックを起こし、泣き叫びながら走り回る。

「だ、だめぇぇぇぇッ、やだやだやだぁぁぁ!」

恐怖で、泣きじゃくっていた。


「コニ、こっち来て。落ち着いて」

ダークエルフのティリスがすぐに駆け寄り、彼女を抱きとめる。

鋭い目で空を睨むその表情に、魔術師としての覚悟がにじむ。


「グ、グワアア……」

巨体のボストロールのコニーが、ティリスの後ろにしゃがみ込み、耳を塞ぐ。

見た目に反して、虫が大の苦手らしい。巨人が怯える姿に、空気が余計に重くなる。


そんな中、一人だけ異様なテンションの者がいた。


「アッハ☆ ちょうどいい準備運動ねぇ!」

リザードマンの魔法戦士、エイミー。

鱗に光を反射させながら跳躍し、両手を広げて叫ぶ。


「来なさい……! 


「水天の祝福を受けし我が水の精霊よ、清き流れとなりて万象を貫かん。現れよ、

《アクアジャベリン!》」


空中で腕を回し、水を凝縮させた槍が瞬時に十本、そして二十本――。

彼女の周囲から光のように放たれた水の矢が、襲い来る蜂の群れを貫く!


ズドン! ズドン! ギィィィィ!!

鋼のような甲殻を持つ蜂のキラービーが悲鳴を上げながら墜落していく。

だが、数が多い。まだ何十、何百と残っている。


「くそ、まだ来るか……!」

俺は腰の剣を抜き、前へ出た。

ホブゴブリンの腕力が、意識せずとも全身にみなぎる。


「斬り込むぞ――!」


一体のキラービーが突進してくる。毒針を突き出して、一直線に俺の胸を狙って――


ガキィン!

ギリギリで剣を振り上げ、斬撃と突撃がぶつかる。衝撃で腕が痺れた。


「こいつ……っ、体当たりだけで殺しに来てる……!」


隣ではティリスが呪文を詠唱する。


「影よ、腐蝕の淵より這い出でて、

《シャドウ・グレアム》!!影よ、敵を縛れ!」


暗黒の鎖が地面から生え、蜂の羽を絡め取る。動きが鈍ったところに、エイミーが再度アクアジャベリンでトドメを刺した。


ようやく、蜂の群れが沈黙した。


仲間たちは荒く息を吐き、傷を確かめる。


すると、さっきまで敵だった蜂の死骸を前に、エイミーがにっこり笑った。


「ねぇ、護。これ、素揚げにするとエビの味になるのよ♡」


「……え?」


気づけばエイミーはいつのまにか鍋と油を取り出し、キラービーの甲殻を剥いて揚げ始めていた。


「いや、ちょっと待て。見た目がグロテスクすぎる虫料理である。」


サクッ。

ひとつつまみ上げたエイミーが食べる。笑顔で、うなずく。


「やっぱり、エビ味♪」


……まじかよ。

俺は恐る恐る一口、揚げたキラービーをかじってみた。


――う、うまい……!


香ばしさの中に、プリっとした身。確かに、エビの風味がする。


「……カッパエビ船、食べたいなぁ……」

俺は呟いた。異世界に来てまで、スナック菓子が恋しくなるとは。


「なんか神殿が見えてきたよ。」


前方に大きな何本もの柱で支えられているパンテオン神殿が見えてきた。


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