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第4話 魔王城・黒炎の玉座の間

闇が息づくような広間。

その中心に、高く積まれた漆黒の玉座がある。炎のように揺らめく黒の焔が、赤黒く空間を染めていた。


ホブゴブリンのまもるは、緊張の面持ちでその空間を進んでいた。

足音がやけに大きく響く。背後には誰もいない。今回は仲間たちもいない。護、ひとりだけの謁見だ。


その玉座に座していたのは、この世界の闇の王。

魔王レグナ=ヴァル=ノクト


漆黒の鎧に包まれた巨躯が、ぐるりと首を動かして護を見下ろす。

だがその眼差しは、冷たくも、どこか深い哀しみを湛えていた。


「来たか、護殿、否、“転生の力に最も近い異端の魂”よ」


「……俺を、知っているのか?」


「当然だ。君の名はこのゲーム世界の記録に刻まれている。君は元・人間……だが今は、魔族の一員として新たな進化の門をくぐろうとしている。だからこそ、君にしか話せぬことがある」


魔王の声は静かだった。だが、その内容は――世界の根幹を覆すものだった。


「この世界は……神々に弄ばれている」


「……は?」


「“転生者”という名の存在。異世界から召喚された、六つの魂。彼らはすべて、神の指先によって選ばれ、この世界に落とされた。遊戯としてな」


魔王の背後に、巨大な魔導結晶が浮かび上がる。そこには、5人の転生者の姿が映し出されていた。


「一人目。

その美貌の裏に冷徹な心を隠す女。

異界より来た官僚、“イザベル・クロフォード”。

王国と神殿を掌握し、自らを『法の神』と名乗る。情けも涙も、彼女にはない」


鏡の中のイザベルは、銀髪を揺らしながら無表情に膝を折る民を見下ろしていた。


「二人目。

機械と論理の男、“クロウ・サカキバラ”。

全身を機械仕掛けの鎧で包み、“機構魔導都市”を築き上げた。

彼は人間も魔族もデータでしか見ていない。すべては効率と実験の材料だ」


彼の周囲には巨大な歯車と魔導砲がうごめいていた。


「三人目。

天使のような微笑みを浮かべる少女、“メル・アリア”。

その正体は、狂気の魔導士。

笑いながら毒をばら撒き、死と絶望を花のように咲かせる存在だ」


少女は花畑で踊っていた。だが、咲いているのは毒の花。

地面には死体が転がっていた。


「四人目。

孤高の剣士、“ユウト・ミカヅキ”。

剣の力だけを信じ、いかなる陣営にも属さず、ただ強者との死闘を求めて彷徨っている。

出会えば――君たちも、例外ではない」


その瞳は虚無。だが、背中から滲む殺気は、戦場そのものだった。


魔王は最後に、5人目の名を口にした。


「五人目。

予定よりも早く転生し、最も深くこの世界を壊し始めた存在

“勇者アレス”、本名・南城 大我。

彼は今、この世界を“自分のゲーム”と認識している。

その結果、国は滅び、民は死に、秩序は崩壊した」


「....そして最後にもう一人、六人目がいる。

本名・菊池 護。

人間の姿を捨て、魔族ホブゴブリンとしてこの世界に立っている。


君だけが、このゲームの世界の“神のシステム”に抗おうとしている者だ。

君は、私と共に勇者を討つ使命を持った、唯一の仲間だ」


護は、唇を噛んだ。

エルシアが、アレスのせいで滅びた事実を思い出す。


「ふざけんなよ……!」


その小さな叫びに、魔王は静かに頷いた。


「君は唯一、神の手に抗える存在だ。

なぜなら君は、“この世界の人間の住人として選ばれなかった存在”。

つまり、“異物”であり、“鍵”なのだ」


「だが手はある。

北の果てに棲む神獣、レインボードラゴン。その肉には、魂を進化させる力がある。

喰らえば、今のままの存在を超越できるだろう」


「肉を喰らうって……それって、ただのパワーアップじゃ済まないよな。」


魔王は重々しく頷いた。


「そうだ。“進化”には代償が伴う。

己の形を保てるか、それとも“怪物”になるか……

それでもこの世界を正す覚悟があるなら、食らえ」


護は静かに前を見た。


「ほかに手がないなら、やるしかないな。」


魔王の手のひらに、改めて五つの名前が浮かび上がる。


イザベル・クロフォード

クロウ・サカキバラ

メル・アリア

ユウト・ミカヅキ

勇者アレス(南城 大我)


「……だが、彼らが味方になるか、敵になるか。それは、君たちの歩む道次第だ」


黒炎が激しく揺れる。

護の瞳に、再び炎が映る。


君は選ばれたのではない抗う者として、選び取る者になれ。


魔王は言った。


「進め。決断せよ。この世界を“遊戯”のままにするか、それとも“秩序“取り戻すか」


魔王は自らの力で俺を滅びた町エルシアに戻してくれた。


「転生者たちは俺たちに魔族に協力してくれるか? それとも……敵として立ちはだかるのか――」


物語は再び動き出す。

次なる舞台は、北の果ての大地に天空を翔ける神話の竜、レインボードラゴンの棲まう神の山へと


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