第3話 魔王の招待
復活の村エルシア。
かつて、伝説の勇者アレスが魔王軍を退け、一度は平和をもたらしたとされる村。
だが現在は焼け落ちた町、滅んでいた。
黒煙と灰が舞うその跡地に、ホブゴブリンの護は仲間たちと立っていた。
「……ここは、エルシア 勇者アレスが救った町だったはず」
無残に崩れた町に村人たちの姿は、もはやない。
そこには、モンスターに襲われ、跡形もなく消された文明の骸があるだけだった。
「これは……?」
焼け落ちた町・エルシアの跡地に、黒い炎のような文様が刻まれた一枚の書状が、突如として空から降ってきた。ティリスがそれを拾い上げ、眉をひそめる。
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『護殿へ』
君たちは“進化”できる。
レンボードラゴンの肉を喰らえば、魂は再構築され、力は解放されるだろう。
来たれ、魔王の間へ。
魔王レグナ=ヴェルザークより
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「……魔王様からの招待状よ」
「えぇっ!? ま、まさか魔王って、あの……」
デフリーが声を上ずらせた。
「そう、魔王レグナ=ヴァル=ノクト。この世界の頂点に立つ存在よ」
「な、なんでそんなヤツが俺を招待するんだよ……」
護が眉をしかめると、ティリスは静かに口を開いた。
「実は……私、昔、一度だけ魔王様に会ったことがあるの」
その言葉に、空気が凍りついた。
「えっ……ティリスさんって、魔王と知り合いだったの!?」
エイミーが目を丸くする。
「すっごい……すごすぎる……」
コニーちゃんが尊敬のまなざしティリス見つめる。
デフリーも感心しきりで、「すげぇ……俺、初めて生で“伝説”に触れたわ……」と感嘆の声を上げる。
ティリスは照れくさそうに視線をそらしたが、やがて真剣な顔で言った。
「これは偶然じゃない。護、あなたを魔王様は見ている。この世界を変える存在として」
その瞬間、ティリスの杖が魔力で光り始めた。
「……この招待状は護宛て、未来への希望よ。さあ、行くわよ。覚悟はできてる?」
護は一瞬黙ったあと、頷いた。
「行くぜ。どうせこのままじゃ何も変わらねえ」
「トゥーラ・エルヴァ・ノクス…
星の彼方、道を開け…
我が意に応えよ――移転の門よ!」
その詠唱と共に、空間がきしむ。
裂けるように宙が割れ、渦巻く魔法陣が護の足元に浮かび上がった!
「魔王にちょっくら、逢ってくるぜ。」
ティリスの瞳が金色に輝き、叫ぶように呪文の名を放つ。
「《エクソダス・ゲイト》!!」
轟音と共に、護の体が光に包まれる。
地面が砕け、眩い閃光が全てを飲み込んだ。
護の絶叫が、空に吸い込まれるように消えていく。
彼の姿は、跡形もなく消えていた。