第1話 転生勇者 王を斬る
灼熱の光が消えると、そこは見知らぬ玉座の間だった。
赤絨毯の奥、黄金の王座にふんぞり返る男。左右に並ぶのは、厳つい将軍たちと冷酷な目をした大臣。
勇者アレスは、ダークエルフの強制、転移魔法により新たなる大陸・ローゼリア王国へと来ていた。
「おお……そなたが異界より転生されたという、“勇者アレス”であるか」
「なんや、王様か。で? 歓迎の品は? 金でもくれるんか?」
その不遜な態度に、周囲の空気が凍りつく。
「無礼者ッ!」
「王に向かってその口ぶり、何たる狼藉……!」
将軍が剣に手をかけた。
「落ち着け、カラム将軍」
王は静かに手を挙げると、真顔でアレスを見据えた。
「……我らは“勇者転生計画”により、未来を託せる者を求めていた。
だが、そなた……その言動、態度。あまりに粗暴、あまりに傲慢。
このような者に、我が王国の命運を委ねるわけにはいかぬ」
「なにしに俺を呼んだんや。使えんかったら処分ってか?おもろいやんけ」
「この者は勇者の器にあらず。計画は――失敗だ。
処分せよ。この場で“消去”する」
大臣が指を鳴らした瞬間、魔法陣がアレスの足元に浮かび上がる。
「ふっ……ほうか。消す気か。俺を?」
アレスの目が狂気に染まる。
「ちゃうで。消されるのはお前らの方や!!」
ドンッ!!
アレスが瞬時に魔法陣を踏み砕き、爆発的な速度で王座へ突っ込む!
「止めろッ!!この暴挙を――!」
「遅いわ!!」
ズシャァッ!!
王の首が宙を舞う。続けざまに、将軍が剣を振るうも――
「お前ら、RPGの雑魚と同じ動きやんけ!」
ギィン!
鋼鉄の剣が粉砕され、アレスの大剣が将軍の身体を真っ二つに裂く。
「ぐああああああ!!」
「や、やめろ!やめてくれぇ!!」
大臣が命乞いするも
「うるさいんじゃ、モブめが。黙って死ね!!」
バシュッ!
沈黙が玉座の間を支配する。血と硝煙の中、ただひとり、アレスだけが息をしていた。
「“あの時の俺”には……もう戻らん。
あのとき、あいつらに裏切られて何もかも終わった。
だからもう、誰にも期待せん。俺がこのゲームの世界を支配するんや!」
ギイィィ……
重厚な城の扉が開く。アレスはゆっくりと踏み出す。
その足取りは、まるで何かを切り開く覇者のように、誰にも止められない。
「魔王でも神でも王でも、誰であろうと関係ない。
ここは俺の世界。俺がルールや」
その背中を、恐怖に染まった兵士たちは誰ひとり追えなかった。
新たなる覇道、開幕。
血塗られた勇者の転生物語が始まる。