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第6話 新たなる旅立ち

勇者アレスが異大陸へと吹き飛ばされたその瞬間、戦場の空気は一変した。


静寂。


誰もが声を失い、ただ茫然と立ち尽くしていた。


「勇者がいなくなった……!」


仲間たちが戸惑う中、魔法使いリュミナは、淡々とローブを翻して言った。


「もう、契約は終了ね。私は、あの人に雇われていただけ。

 報酬分の働きは済ませたわ。じゃ、そういうことで」


「え……!? 戦わないの……?」


誰かが呼び止める間もなく、彼女はあっさりと背を向け、戦場から姿を消した。

その足取りには、迷いも情も一切なかった。


彼女にとって、戦いとは“仕事”に過ぎなかったのだ。


一方、魔物たちのパーティーには達成感など微塵もなかった。

確かに、勇者は消えた。しかし、それは勝利ではない。

ティリスの魔法で一時的に退けただけ。


真正面から戦っていたら、全滅していたのは自分たちのほうだった。


「くそっ……なんでだよ……!」

護が悔しげに拳を地に叩きつけた。


「うわぁぁぁん……!」

敵討ちのために張り切っていたエミリーコニちゃんは、声を上げて泣きじゃくる。

その涙は悔しさと情けなさの入り混じったものだった。


「泣くな、コニ……」

デブリーがそっと抱きしめる。けれどその手は、悔しさに震えていた。


「……大丈夫。あなたたちは、よく戦ったわ」


ダークエルフのティリスが、一人ひとりの目を見て言った。

その瞳は優しさと、どこか切なさを湛えていた。


「でも、これで終わりにするつもりはないんでしょ?」


沈黙。だが、ゆっくりと誰かがうなずいた。


「……あぁ。俺たちは、まだ終わっちゃいけないんだ」

護が立ち上がり、拳を握りしめる。


「俺たちは、もっと強くならなきゃいけない。

 もう一度、勇者と戦うために。今度こそ、本当に勝つために!」


洞窟を出ると焚き火の炎が、夜風に揺れる。

その火に照らされて、全員の表情が引き締まっていく。


「どうやら、俺たちは、まだ、“力”が足りないらしいな」

誰かが言い、仲間たちは力強くうなずいた。


「だったら決まりだろ」

護は天を見上げて、声を張る。


「俺たちは“進化”する!

 そのために……魔王に会いに行く!」


「えっ、魔王に……!?」


「そうだ。あの方なら、俺たちに何かを与えてくれるかもしれない。

 危険かもしれない。でも、もう迷ってる暇なんてない」


ティリスが微笑む。


「……面白くなってきたわね。私も、行くわ」


こうして、魔族パーティーは新たな決意と共に、未知なる旅路へと踏み出す。


行き先は、魔王のもと

試練と絶望の先に、“進化”の可能性が待つ地へ。


これは、敗北から始まる再起の物語。

今、魔物たちの“第二章”が幕を開けたのだった!



第四章 完結


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