第5話 エルフの悩みと取引
「うわっ!? 引っかかったぁ!!」
突如、地面が抜け、護たちは巨大な蔦の網に絡めとられた。
「罠……ですか!? ぐっ、なんてしっかりした繊維……」
冷静なエイミーも眉をひそめる。
「コニちゃん……動かないで! 網ちぎれそう……!」
「うごきたい……けどがまんするぅ……」
やがて森の奥から、褐色の肌に金髪、紅い瞳のエルフたちが姿を現した。
その中心にいた女戦士が、鋭く叫ぶ。
「魔物たち、動かないで! ここは神聖な森よ!」
「……我々は敵意はない。どうか話を聞いてくれ」
護は冷静に答えた。標準語で、はっきりと。
その言葉に、エルフの女戦士ティリスが目を細める。
「……珍しいわね、話の通じる魔物なんて」
神殿のような巨木の内部。
護たちは拘束されたまま、エルフ族の長老フィナリスの前に立たされていた。
「信じがたいことですが……確かに、あなた方は理性を持っているようですね」
「理由があるのなら、聞かせてほしい。なぜ、森を訪れたのです?」
護が答えようとしたとき、ティリスが代わりに口を開いた。
「……長老、実は報告があります。南の“聖なる泉”に人間の傭兵団が侵入しています。
どうやら聖水の源を採掘し、売りさばこうとしている様子です」
一同がざわめく。
「戦えぬ我々が彼らに立ち向かえば、多くの犠牲が出るでしょう」
長老は護たちを見つめた。
「あなた方が、力を貸してくれるのなら。その行動、無意味ではないと思いたい」
護はすぐに頷く。
「分かりました。私たちが、そいつらを止めましょう」
エイミーがそっと聞く。
「信用……してくれると思います?」
護は静かに微笑んだ。
「信じられるかじゃない。信じさせるしかないんだよ、俺たちが」
コニちゃんは網を引きちぎりながら笑顔を見せた。
「じゃあ~! お手伝いがんばるーっ!」
デフリーもコック帽を正し、フライパンを握る。
「泉守るには、まず飯やな。力つけて、出発しよか」
護たちの魔物たちのパーティーは、静かに出撃の準備を始めた。




