第3話 絶望の力
七色の光が檻のようにうねり、仲間たちを閉じ込めていく。
それはただのエネルギーではなかった。
光は心を照らし、魂の奥に潜むものを暴き出す。
「や、やめろ……そんなはずじゃ……!」
コニちゃんが膝を抱え込んだ。
彼の目の前には――自分が人間の肉をむさぼる幻影。
護との約束を破り、獣のように咆哮する“もう一人の自分”が、笑いながら迫ってくる。
「……っ!」
エイミーの瞳には、巨大な昆虫の群れが映っていた。
幼いころ、自分の巣を滅ぼした毒虫。
彼女のトラウマが形を取り、鋭い脚で何度も肉体を貫く。
「私……私が……!」
ティリスは崩れ落ちそうになる。
幻影の中で、彼女は仲間を裏切り、森の掟に従い護を射抜いていた。
冷たい弓矢が何度も繰り返され、その罪悪感に胸を裂かれる。
デフリーはすでに血を吐きながら、フライパンで幻影の火炎を受け止めていた。
「ハハッ……料理係が火に焼かれるとか……洒落にならんわ……!」
強がりの声が、逆に絶望を強調していた。
七色の光は、ただの属性攻撃ではない。
光は「真実」を暴き、闇は「恐怖」を具現化する。
炎は後悔を焼き、氷は未来を凍らせ、雷は心臓を打ち抜く。
それは魂そのものを削り取る監獄だった。
このままでは、誰一人残らない。
護は唇を噛み切り、剣を握る手に力を込めた。
「俺たちを運営の玩具にして……シナリオ通りに消されてたまるかよ!」
叫びと共に、護は檻を構成する七色の光に向かって剣を振り下ろした。
ガギィィィィィンッ!!
眩い火花が散る。
本来ならば、下級モンスターの剣など通じるはずがない。
だが――
「……ん?」
レインボードラゴンの瞳が、一瞬揺らいだ。
その巨体に、機械的なノイズが走る。
『エラー検出……想定外の干渉……』
空間にひび割れのような歪みが走った。
ほんの小さな欠片。
だが、確かに“システムの外”をかすめた証拠。
護は剣を構え直す。
息は荒く、膝は震えていた。
それでも――
「……見つけたぜ。俺たちの生き残るルートをな」
七色の絶望の中で、護の瞳だけが揺らがずに光っていた。




