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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第三部 改造レインボードラゴンとの死闘

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第2話 邂逅 ― 絶望の虹

風が鳴いていた。


山を登るたびに空はどす黒く染まり、やがて赤、紫、緑、青と――異常な色彩が雲に滲む。


「……ここが、奴の巣……か」


ホブゴブリンの俺――護は、地面に刻まれた巨大な足跡に手をかざした。

土に沈むほど深い。しかも温かい。

ついさっきまで、ここにいたということだ。


「は、はは……おかしいな……なんで俺、フライパン持ってんやろ……戦う気あったよな、俺……?」

口元を引きつらせながら呟くデフリー。

仲間内の料理担当でありながら、妙に前衛を志す変わり者だが――この場ではただの震える人間にしか見えなかった。


その隣で、氷のように冷たい声が割り込む。


「気を抜いたら殺されるわよ」


リザードマンの魔術師エイミー。

彼女の指先には既に《アクアジャベリン》の蒼光が宿り、殺意と防衛本能の狭間で揺れていた。


森を抜け、岩肌が神殿のように屹立する山頂へと至った瞬間――


天が、裂けた。


「グゥゥゥゥォオオオオオオアアアアァァァァァアアア!!!!!」


大気が振動し、大地が震えた。

七色の霧が吹き飛ばされ、眼前に広がる視界を覆うのは――


それだった。


虹色の鱗を纏い、山脈すら小枝のように見下ろす巨体。

翼を広げれば空は虹で染まり、その瞳は神をも裁く冷徹さで輝いていた。


《レインボードラゴン》。


挿絵(By みてみん)


神話に語られし竜。

その存在は、魔力そのものの凝縮であり、空間を歪める“生きた自然災害”だった。


「なんて大きさ……!」


「いや、大きいだけやない……。魔力が濃すぎて……生きた化石みたいや……」


言葉にするまでもない。

俺たちの野生は即座に答えを出していた。


勝てない。


刹那、地面に七色の光が奔り、山頂全体を覆い尽くした。

逃げようとした瞬間、虹色の柱が落ち、俺たちを囲む。


七色の檻。


視界の全てが彩に封じられ、退路は完全に絶たれた。

竜の瞳が、冷徹に俺たちを見下ろす。そこに宿るのは――ただの獣の本能ではない。


冷たい、命令。

人智を超えた《神の意思》だった。


俺は喉を詰まらせながらも、仲間に告げた。


「……これは、ただのボス戦やない……」


その言葉に仲間たちは誰も反論しなかった。

目指すは《彩光の霊峰》。

だが俺たちは、すでに絶望の虹に囚われていた。

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