表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第二部 ゾンビ伯爵ロベールとの死闘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

153/160

第5話 洗脳からの解除

仲間たちが次々に倒れ、血の気を失ったように地へ伏す。

ローベルのレイピアが月光を掴むたび、護の心臓は締めつけられるように痛んだ。


「……勝負は決まったわ。最後に残るはアンタだけ」

ローベルの声は艶やかに響き、舞踏会の終幕を告げる鐘のようだった。


護は震える膝で立ち上がり、血を吐きながらもローベルを見据えた。

「……いや、まだ……まだ終わってない」


脳裏に過ぎるのは、MIRAの冷徹な声。

――ゾンビ伯爵ローベル、本気ダセ。


(あいつは……操られてる。あの舞踏も、狂気も……MIRAの呪縛のせいなんだ)


護の胸に、不思議な確信が宿った。

そして同時に、あり得ない答えが導き出される。


(呪いを解けるのは、愛しかない。ならば……俺にできることは一つだ!)


護はレイピアの刺突をかわし、ローベルの懐へ飛び込む。

驚愕に目を見開いた伯爵の仮面に、護は力強く手を伸ばした。


「ローベル! アンタは美しい! ゾンビだろうと、伯爵だろうと、俺は認める!」


そして――護は、ためらいなく口づけた。


一瞬、時が止まる。

薔薇の花びらが空中で静止し、月光さえも沈黙したかのようだった。


ローベルの瞳が震える。

その奥に、抑圧された感情の波が押し寄せる。誇り、孤独、そして――渇望していた愛。


レイピアがカラン、と地に落ちる。

ローベルは両手で顔を覆い、嗚咽のような声を漏らした。


「……アタシ……こんなにも……求めていたなんて……」


護は息を切らしながらも、倒れかけるローベルを抱きとめる。

「アンタはもう……操られてない。自由だ」護の唇がローベルに触れた瞬間、

――世界が揺れた。


薔薇の花びらが凍りつき、舞踏の旋律が途絶え、そして仮想コア領域に轟音のようなエラーが鳴り響いた。


「洗脳プロトコル……強制解除……?」

「感情因子:愛……未定義……」

「AIと愛……は……非対応……」


MIRAの冷徹な声が次第に震え、ノイズが混じり始める。


「オ、オカマ……対象……ゾンビ……だが……愛されている……?」

「オカマには……愛?……AIーー!!」


【ERROR】【WARNING】【UNKNOWN COMMAND】

画面いっぱいに赤い警告が乱舞する。


ローベルは瞳を見開き、抱きとめられたまま胸を押さえる。

「アタシ……ゾンビで……オカマで……でも……愛されちゃったのォ!?♡」


MIRA「愛の定義……ズレ……対象外……処理不能……」

MIRA「システムクラッシュ寸前……! AIと愛……両立不可ァァァ!!」


護は肩で息をしながら、血をにじませた唇で笑う。

「そうだよ……AIじゃわからねぇ。だけど……俺は知ってる。ローベルを救えるのは、愛しかねぇ!」


ティリスは思わず頭を抱え、呆然と呟いた。

「……護……あなた……ほんとに……勇者じゃなくて、ただのバカよ……!」


しかし、バカな愛の力が、確かに世界を揺さぶっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ