第3話 本気のゾンビ
自動制御の運営AI【MIRA】。
その仮想コア領域で、青白い光が不規則に明滅していた。
「システム外イベント生成……確認」
「NPC権限超過……確認」
「ログインアクティビティ上昇率:過去最大」
「異常レベル:MAX」
冷たい声が、仮想空間に木霊する。
――結論。
「ゾンビ伯爵ローベル……本気ダセ」
次の瞬間、舞踏会のようにスリラーを踊っていたゾンビの群れが、ぴたりと動きを止める。
そして、ガクガクッとぎこちない動作で退き、中央の道を開けた。
そこに現れたのは――
フリルとマントをまとい、派手に薔薇をくわえた伯爵。
ゾンビ伯爵、ローベル。
「……フフフ……なるほど、これが運営の“本気ダセ”命令、というわけか」
彼は薔薇をぽいっと捨てると、唐突にビシッとポーズを決めた。
肩をすくめ、両手を広げ、胸を反らす。
「ゾンビでもね! 気高く! 美しく! そして本気ィィィッ!!」
ドォォォォン――!
彼の背後に、あり得ないエフェクトが炸裂する。
稲妻、炎、さらには謎のカラフルな紙吹雪。
護は思わず絶叫した。
「いや、演出派手すぎだろ!? AIの“本気”ってこういうことなの!?」
ティリスは冷や汗を流しながら剣を構える。
「護……笑ってる場合じゃない。あれ、本当に……強い」
エイミーは震える声で言った。
「う、うそ……ダンスの時よりオーラが濃い……!」
ゾンビ伯爵ローベルは、ゆっくりとステップを踏み出した。
今度は踊りではない。
本物の殺意をまとった、一歩。
「踊りは終わりだ……これより先は――本気のゾンビ・バトル・ロワイヤルッ!!」
護は拳を握り、息を呑んだ。
「……来やがったな。俺たちも、本気を出すしかねぇ!」
魔王軍屈指の実力派、ゾンビ伯爵ロベールルが襲いかかる。護たちは生き残ることができるだろうか。




