第3話 進化後の訓練と再出発
俺たち魔物パーティーが新たな大地へと踏み入れた。
進化した俺たちは、見かけも少し変わった。オーク族のデフリーはプロの料理人でみたいだ。
■ 護【ホブゴブリン → ゴブリン隊長】
「俺が……隊長……? ふん、悪くないな」
かつてただの武闘派だった護は、進化と共に冷静な“頭”を得た。
今や彼の頭には、戦場を支配する術が宿る。
「罠設置、よし。突撃タイミング、今……包囲網展開っ!」
木の枝に引っかけたロープが敵兵を宙に吊り上げ、落とし穴が次々に開く。
かつての野生児が、まるで探検隊の隊長だ。
「ま、俺が司令塔ってわけやな」
なんかムカつく。
■ デフリー【オーク → オークソルジャー】
「飯つくるでェエエ!!」
進化した結果、なぜか筋肉だけじゃなく料理スキルもブーストしたコック・デフリー。
彼が炒める特製“スタミナ鉄鍋ホルモン”は、味も栄養も爆発級。
「こ、これは……一口食っただけで、体力がフル回復……!」
さらに“バフ効果”も乗るおまけ付き。
デフリーの料理で全軍の戦闘能力が1.5倍に跳ね上がる。
「やっぱ、戦はメシや! ワイのフライパンは最強やで!」
フライパンが怪しく光ってる。
■ エイミー【リザードマン → リザードシャーマン】
「ふふ、これが呪術の力……」
神秘のベールをまとったシャーマン・エイミーは、魔法陣を空中に描いて
仲間に回復魔法をかけたり、敵に呪いを刻みつけたりできるようになった。
「大丈夫、痛くないわ……悶えた終わったあとに死ぬだけよ♡」
その笑顔が一番怖い。
■ コニ【トロール → ボストロール】
「こーにちゃーーんッ!!!アタック!!(ドガァァァァァァン!!!)」
そう叫びながら突撃してくる影。
その名は、コニ。かつて地下アイドルだった彼女は、いまや破壊王である。
怒涛の突進は木々をなぎ倒し、岩を砕き、味方すら吹き飛ばす。
皮膚は硬化して石のようにゴツゴツと変質し、剣の一撃すら通じない。
「ウヒョーーーー!! あたし、みんなのためにがんばるッッ!!」
いや、その“がんばり”が脅威なんやけど。
護「コニ! 止まれ! ……コニ!? 聞いてるか!?」
デフリー「わー! 鍋ごと吹き飛ばされるーッ!」
エイミー「ちょっと! 呪いの詠唱台がッ……!」
暴走する元アイドル。人類の脅威と化したトロール娘。
もう誰にも止められない。
やがて、森の外れに人間の斥候が現れる。
「奴ら……“進化”しているぞ……!」
村を壊滅させられた人間たちは、進化した魔物たちを討つべく、
一つの魔物討伐隊を結成しつつあった。
その情報が、護の耳に届く。
「来るか……ならば迎え撃つだけだ。俺たちはもう、昔の“モブ”じゃねぇ」
護が振り返ると、破壊王コニがノリノリで鉄球をぶん回していた。
「人間達よ
……絶望せよ。我が名はボストロール コニちゃん」
進化した魔族らの反撃が、いま始まる。
夜の野営地で焚火の周りで眠る魔物の仲間達、俺は星空を見上げた。
「……この“ゲーム”……本当に俺が知ってるやつなんか?」
護の背中を、冷たい風がなでたような感覚が走った。
身体が、自然と震えていた。
怒りでも、寒さでもない。
これは、恐怖だ。
「……なんで……寒くもないのに……」
その呟きとともに、焚き火が静かにパチパチと鳴った。
世界が少しずつ狂い始めている。
そして予定よりも早く勇者は、この世界に出現した。
転生勇者アレス。この世界を狂わす最恐の勇者。
その名がもたらすものを、護はまだ知らなかった。




