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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
スピンオフ小説 『3周目 ホブゴブリンの俺、勇者が来ない?!このゲーム完全に過疎ってる。俺のクソ運営を改革だ。』

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第3話 ホブゴブリンの護、次の新しいイベントを開催

肉の煙が上がり、笑い声が響いたあの「森の肉フェス」から数日。

護は丸太の上に腰掛け、空を仰ぎながら一息ついた。


「……よし、滑り出しは上々だな」


復帰ユーザーがわずかだが戻ってきている。

肉フェスイベントは“護の世界改革”の第一歩に過ぎない。


だが、この調子では足りない。プレイヤー層は広い。肉だけじゃ来ない層もいる。


「次は……“癒し”と“収集欲”だな。素材収集型のイベントと……自然体験コンテンツか」


護の脳内で、いくつかのキーワードが弾ける。

そして頭に浮かんだのは、ある一人の仲間だった。


挿絵(By みてみん)


「エミリー。ちょっといいか?」


「……呼んだ?」


木陰から姿を現したのは、リザードマンの少女・エミリー。

腰に巻かれた革紐から、小さな網と虫かごが覗く。

彼女は相変わらずの無口だが、護にはちゃんと心を開いている。


護が近づくと、エミリーはぺたりと葉の裏に舌を伸ばし、舌を丸めて、ぺろり。


「……見つけた」


「相変わらず器用だな。その舌」


彼女の舌には、つややかな緑色の芋虫が絡まっていた。うれしそうに、くるんと丸めて口の中へ放り込む。


「……美味しい。朝露の香りがする」


護はその様子を見て、思わず微笑んだ。


「……可愛いな」


「え?」


「いや、なんでもない。エミリー、お前と一緒にやりたいイベントがある。“魚釣り”と“素潜りで大物の魚ゲット”だ」


エミリーの瞳がきらりと光る。


「水辺……いい。虫も、魚も、たくさん……」


「だろ? お前の出番だ」



護とエミリーは、かつて海辺エリアの外れに存在していた“サンゴの浜辺”に向かう。

潮騒の音、カモメの声。

使われていないマップの再起動は護の手にかかれば朝飯前だった。


「イベント名は《海の幸! 素潜りフィッシング大作戦》」


・魚を釣って調理すると、回復アイテムに!

・素潜りでレア魚を捕まえると、装備の強化素材になる!

・運が良ければ「人魚のウロコ」や「深海の真珠」が当たる!


さらにエミリーをイベントナビゲーターNPCとして配置し、専用ボイスも用意。


「ようこそ、サンゴの浜辺へ……虫は少ないけど、魚がいっぱい。……うれしい」


その語尾に少しだけ照れが混じるのが、実にエミリーらしかった。



イベント初日。

木製の釣り竿が用意され、波打ち際にはユーザーがポツポツとログイン。


「……えっ、ホブゴブリンと釣り? しかもリザードマンの美少女付き?」

「このイベント、癒されるんだけど……」

「芋虫ぺろりかわいい。推しキャラ確定」


護は後ろから様子を見守っていた。


「よし、客層が広がってきたな。食欲の次は、癒しと収集欲……ふふ、我ながら順調だ」


そこにエミリーが近づいてくる。


「護。……新しい虫、見つけた」


「まさか海の中で?」


「うん。ヒトデの下に、青いヨコエビ。長い舌でつかまえた……見せる?」


護は苦笑しながら手を出す。


「……ああ。見せてくれ。せっかくだし、“虫図鑑機能”でも追加してやるか」


護の改革は、確かに世界を少しずつ変え始めていた。

殺し合いだけが価値じゃない。

食べて、釣って、遊んで、癒される、NPCたちが提供する“生きた体験型の世界”。


だが、その空の向こうでは自動制御の運営AI【MIRA】が不穏な計算を始めていた。


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